巻子本 秋萩帖 (7寸8分2厘×27尺9寸4分)     戻る 『秋萩帖』巻子本 一覧へ 

   所在不明歌集(題名のない歌集) (両面加工)昭和初期の模写本

万葉集・寛平御時后宮歌合・古今和歌集・後撰和歌集・古今六帖などから撰出したと思われる鈔本の一巻である。巻頭の第一紙に秋歌2首、第二紙以後に冬歌28首、その後雑歌18首の計48首が納められており、末尾六葉には王羲之の尺牘11通分も臨写されている。この巻子本は元存在していた『淮南子』の巻子本の裏に『いちじろく今日ともあるかな・・・』以下を臨写した私用の秘蔵本である。(最初の一葉は当時の臨写前の原本か?)その内の第八紙〜第十三紙掲載

拡大図
                            
なんどねず
   第八紙 秋萩帖(秋萩歌巻)  
     中色グレー色(納戸鼠)
古筆臨書 巻子本『秋萩帖』 第八紙 (次へ)  
縦 23.7cm × 横 43.0cm
拡大図
秋萩帖(秋萩歌巻)

伝小野道風筆

推定
藤原行成筆

万葉仮名

 第八紙 秋萩帖


掘りて置きし池は鏡に凍れども、木陰だに見えず年ぞ経にける                          不知読人 

保理轉於幾之移気波駕々見耳許保禮東毛、許閑気堂爾見要春東之所部仁計留

なみだがわみな       
涙河身投ぐばかりの淵はあれど、氷とけねば影も宿らず
                           寛平御時皇宮歌合

難見堂閑者美奈久波可利能不地者安禮登、許保理東気□波我計裳也登羅春


               
振り敷けばまさに我が身と比へつべく、思へば雪の空に散りつつ

不利之気者萬散爾和閑見東所部都部久、於母部者遊幾能所羅爾知利川々

                   
あわゆき
夜を寒み朝戸(を開けて我が見れば、庭白妙に沫雪ぞ降る


餘遠散牟見安散東(遠安気天和可美禮波、爾者之呂當弊爾安和由幾所不留)

                                      ページトップ アイコン




歌の読みと
万葉仮名
です。



□は脱字と思われる部分です。





( )内は第九紙に跨ります。
拡大図

    
第九紙 秋萩帖(秋萩歌巻)           利休鼠色淡色(りきゅうねずいろたんしょく) 
古筆臨書 巻子本『秋萩帖』 第九紙 (次へ)

縦 23.7cm × 横 43.4cm

拡大図 秋萩帖

伝小野道風筆

推定
藤原行成筆

万葉仮名

 第九紙 秋萩帖

                     あわゆき
(夜を寒み朝戸)を開けて我が見れば、庭白妙に沫雪ぞ降る
 

(餘遠散牟見安散東)遠安気天和可美禮波、爾者之呂當弊爾安和由幾所不留

みよしの       
御吉野の山の白雪踏み分けて、入りにし人の訪れもせぬ                        寛平御時皇宮歌合 忠岑
                       × 

見餘之能々也末能之良由幾布見和気轉、以里利爾之飛東能於登川禮毛勢奴

                   か  が 
白雪の八重降り敷ける帰る山、返る返るも老にけるかな                          寛平御時皇宮歌合 棟梁


之羅遊幾能也部不利之計留閑部流也萬、可部流我部流毛於意耳気留閑難


     
か                     
光待つ枝に懸かれる雪をこそ、冬の花とはいふ(べかりけれ)                      寛平御時皇宮歌合

悲閑利末川要堂耳閑々禮留由幾遠己所、不遊能者難東波意布(部我利気禮)


                                   ページトップ アイコン
( )内は第八紙から跨ります。





歌の読みと
万葉仮名
です。

×印は余字です。




( )内は第十紙に跨ります。
                  拡大図   
      第十紙 秋萩帖(秋萩歌巻)               素色(しろいろ)古筆臨書 巻子本『秋萩帖』 第十紙 (次へ)

                              縦 23.7cm × 横 43.5cm

伝小野道風筆

推定
藤原行成筆

万葉仮名
 第十紙 秋萩帖  

      か                     
(光待つ枝に懸かれる雪をこそ、冬の花とはいふ)べかりけれ                      寛平御時皇宮歌合

(悲閑利末川要堂耳閑々禮留由幾遠己所、不遊能者難東波意布)部我利気禮


    みずこお                   
流れ行く水氷りぬる冬さへや、なほ浮草の跡はとどめぬ                         寛平御時皇宮歌合

奈閑禮由久美都己保理奴留布遊散部也、難保宇幾久左能安東波登々面奴

              
わたつみ  くれなゐふか
もみじ葉の流れて止まる海神は、紅深く波ぞ立つらむ                                不知読人

毛美地者能難閑禮轉登末留和當川美波、久禮奈為不可久難美所當都羅牟

             
こと                 
然りとてそむかれなくに事しあれば、まづ嘆かるるあな憂世の中                      古今和歌集 雑下 篁

志可理東轉處無可禮那久耳許登新安禮者末都難気留々安難雲乃那閑

               
雲晴れて水に(月影うつら○む、見まく堀江は濁りせなくに)                            不知読人

久毛者禮天美都耳都(幾閑気雲都羅□牟、見末久保理要者爾許理勢難久耳)

                                             ページトップ アイコン
( )内は第九紙から跨ります。



歌の読みと
万葉仮名
です。


○印
は不明部分です。


□は脱字と思われる部分です。




( )内は第十一紙に跨ります。
                   拡大図   
      第十一紙 秋萩帖(秋萩歌巻)               香色(こういろ)古筆臨書 巻子本『秋萩帖』 第十一紙 (次へ)
 
                              縦 23.7cm × 横 43.2cm

伝小野道風筆

推定
藤原行成筆

万葉仮名
  第十一紙 秋萩帖  

                 
(雲晴れて水に)月影うつら○む、見まく堀江は濁りせなくに                            不知読人

(久毛者禮天美都耳都)幾閑気雲都羅□牟、見末久保理要者爾許理勢難久耳

いく よ                  あ ま     かるも      *1
幾代しもあらじ我が身をなぞは斯く、海人の苅藻に思ひ乱るる                       古今和歌集 雑  不知読人

意久餘之母安羅新和可美遠難所波閑久、阿末乃我留母耳於母悲美當流々

       ねた             なげき              
まて○はむこと○妬さに○のぶれば、憂くもすずろに歎しつるか                                不知読人
                                             *2

末天□者無許登□年當散耳□能布禮波、有久母春々呂耳難気幾志都流閑


       
      あら      
我が宿を秋の藪とし荒せれば、乱れても鳴く虫の声かな                                    不知読人

王閑也登遠安幾能也布東新阿羅勢禮者、美當禮天裳那久無新乃己恵閑奈



                                                ページトップ アイコン
( )内は第十紙から跨ります。




歌の読みと
万葉仮名
です。



○印
は不明部分です。


□は脱字と思われる部分です。





                   拡大図   
      第十二紙 秋萩帖(秋萩歌巻)               古代茶色(こだいちゃいろ)古筆臨書 巻子本『秋萩帖』 第十二紙 (次へ)

                              縦 23.7cm × 横 43.0cm

伝小野道風筆

推定
藤原行成筆

万葉仮名
   第十二紙 秋萩帖  

              か    か
いとはたも散りぬる花○色変ふる、露は置かじと思ひしものを                                 不知読人

意登波當毛地理奴留者奈□以呂可布留、都遊派於可之登於母悲之毛能遠

          ほととぎす  こ   ま  
御吉野の山辺に住めば時鳥、木の間立ち潜き鳴かぬ日は無し                              不知読人

餘之乃々也末弊爾数面者保登度幾数、許乃末當地久幾難閑奴非者那之


             
わか           あか
夢の影のかひ留めて別るとも、恋しからむ○飽かず見つれば                                 不知読人

遊面能可気乃可悲度々女天和我留東毛、故悲之閑羅牟□安可春見川禮波

               

花の色の見る目飽くまで経ましかば、うくさらましな(匂ひながらも)                               不知読人
                                                       

難能意呂乃美留面安久末轉弊末新可波、雲久散羅末之難(爾保非奈可良毛)

                                                ページトップ アイコン
 

歌の読みと
万葉仮名
です。


○印
は不明部分です。


□は脱字と思われる部分です。




( )内は第十三紙に跨ります。
                    拡大図   
      第十三紙 秋萩帖(秋萩歌巻)               中緑色(なかみどりいろ)古筆臨書 巻子本『秋萩帖』 第十三紙 (次へ)

                              縦 23.7cm × 横 43.0cm

伝小野道風筆

推定
藤原行成筆

万葉仮名
    第十三紙 秋萩帖  

               
(花の色の見る目飽くまで経ましかば、うくさらましな)匂ひながらも                                不知読人
                                                       

難能意呂乃美留面安久末轉弊末新可波、雲久散羅末之難)爾保非奈可良毛

                         しも
飽かずして別るる涙滝に添う、水まさるとや下は見るらむ                       古今和歌集 離別 兼藝法師

安閑数之天和閑留々那美當々幾□所不、見都末散留東也志母者美留羅牟

             こ            
匂ふかと見れば移ろふ花ぞ此は、月にも見むな飽かず暮れなば                             不知読人

爾保不可登美禮者有川呂布者難所許波、川幾耳毛美無難安加春久禮奈者


              
しのぶぐさ       
あらたまの年やつみけむ忍草、宿には早く生ひにしものを                                    不知読人

安羅堂末能東新也川美気無之能不久散、也登耳者々也久於比爾志母乃遠


鶯にたのみは早く移してき、(宿のさびしく荒れし時より)                                     不知読人

                                          x x
雲久悲春耳堂能美波々也久有都之天幾、(夜徒乃散非新悲之久阿禮志東幾餘里)

この料紙原本はこの一葉のみ縦の寸法が僅かに大きくなっており(縦8寸1分5厘)、第二紙以降の十九葉とは異なっている。(但し、本模写本は第一紙も第二紙以降と同じ縦の寸法にしてあり。)

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 ( )内は第十二紙から跨ります。


歌の読みと
万葉仮名
です。



○印
は不明部分です。


□は脱字と思われる部分です。



×印は余字です。

( )内は第十四紙に跨ります。

勝手に解説

*1 
 幾代しもあらじ我が身をなぞは斯く、海人の苅藻に思ひ乱るる

海人の苅藻;枕詞 乱るるに掛かる。海人の苅る藻の様に右に左にゆらゆらと心の揺れる様子。

いつの時代もありはしない、私なんぞは尚更である。この揺れる思いをどうしたら良いものか。

(これを果たして恋心と読むのか、秘かに願う覇権争いと読むのか。宮家に在りながら順序の下位の物なら後者に思い歌を詠んでも不思議ではあるまい。これは小生の下衆な憶測であり読み流して頂きたい。宮家に伝えられているという事は、この人物も皇位継承権の有ったお人であることも否めないではないか。勿論全くの想像である。)


*2
     の ねた              なげき
 まて○はむこと○妬さに○のぶれば、憂くもすずろに歎しつるか

○に字を当てはめて勝手に解釈してみる。脱字は果たして意図的か。詠者は如何なる人物か。

解釈1
私には待つ事の出来なくて型に嵌めようとする政への嫉妬や恨みを我慢すれば、思い惑わないでそうすべきでは無いのに嘆き悲しんでしまえようか。

解釈2
待ちきれなくて恋に深入りさせられる事への妬みに対し秘かに思い慕うか、悲しみに心を痛める暇もなく歎き散らしてしまおうか。

*3


                                 
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