大字朗詠集切(大字和漢朗詠集切)和漢朗詠集 巻上 鹿  戻る 大字朗詠集切 一覧へ 
    本鳥の子紙(薄茶色)5寸4分5厘×7寸2分5厘
字粒が他の和漢朗詠集の物よりも大きく書かれており、字間・行間も大らかである。表面は高野切同様の加工で染の雲母振りだが、振ってある量はかなり多い。
料紙は雲母振りの染紙。


薄茶色

『大字朗詠集切』 大字和漢朗詠集 断簡 鹿-漢詩部分
19.6cmx25.7cm
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。





   鹿
334
 蒼苔路滑僧帰寺、紅葉聲乾

 鹿在
 温庭筠

335
 暗遣苹茸色變、更随

 草徳風來 
白鹿
           紀








   鹿

 蒼苔路滑らかにして僧寺に帰る。
                 
うんていかん
 紅葉声乾いて鹿林に在り。温庭筠


 暗に苹を食って茸の色をして変ぜしむ。
              
したが
 更に草に加うる徳風に随うて来る。

                 
白鹿
                       紀長谷雄



とくふう
徳風;論語。「君子之徳、風也。小人之徳、草也。
        草上之風必偃」
徳が人を感化する様を、草が風に靡き伏せる様に例えていう語。仁徳の感化。道徳の教化。

そうたい
蒼苔;くすんだ青色や血の気のない青色をした苔
    苔色はくすんだ萌葱色

鹿;神の使いとされ、神社に飼われることもある。秋、女鹿を呼ぶ牡鹿の声は詩歌にも多く読まれる。

声乾いて;よく晴れ渡った秋の林の情景。


北村美術館蔵
おんていいん
温庭筠;唐終期の詩人。山西祁の出身で、字は飛卿
812~872年頃。詩はやや退廃的であるが、浮世離れした清らかな趣を持つ。著書(温飛卿詩集)

きのはせお
紀長谷雄;平安前期の学者であり官人。正三位権中納言。菅原道真に学び文章博士。道真と共に遣唐使に任ぜられたが、渡航せず。

藤原時平・三善清行らとともに12巻の延喜格を撰進する。

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