針切 重之の子の僧の集2             戻る 針切 一覧へ 
    生成り楮紙(素色)
こちらの色は、ぼかしの様にも見えますが元々は未晒しの繊維の色で、長年の変化により褪色、或は褐色化した物と思われます。素色(しろいろ)とは、漂白していない元の繊維の色でやや黄味の砥の粉色~薄香色の様な色。本来染めていない為、素の色のことを素色(しろいろ)といいます。。写真は薄目の薄香色でかなり褪色しているように見えます。

素色(しろいろ)

『針切』 重之の子の僧の集2 (素色)15.6cmx22.4cm
実際は極淡い薄茶色です。
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。



             かな                                使用時母へ


   
ぐきのあともいまはつつましくなむ

    春たつひある所のおほせごとにて

 うわごほり とくるなるべし 山かはの、いは

 まくぐみづ おとまさるなり

   よしの山にゆきのうえにかすみたな

   びくをみはべりて

 たにふかみ ゆきしきえねば よしの山、はるの

 いろとは かすみをぞみる

      むめの花おそしといふ心を



   
茎のあともいまは慎ましくなむ

    春たつ日ある所の仰せ言にて

 上氷 解くるなるべし 山川の、岩

 間潜水 音まさるなり

   吉野山に雪のうえに霞たな

   びくを見はべりて

 谷深み 雪し消えねば よしの山、春の

 色とは 霞をぞ見る

      梅の花おそしといふ心を

 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
一行は一行に、繰返しは仮名で表記
前項~の残り半葉分
 読みやすい様に所々に漢字、読点を入れております。
                       解説

   
久支乃安止毛以万波都々万之久奈武  

    春多徒悲安流所乃於保世己止仁天

 宇者己本利 止久流奈留部之 山可波乃、以者 

 万久々美徒 於止万佐留奈利

   與之乃山爾由支乃宇部仁可春美乃多那

   悲久遠美波部利天

 多耳不可美 由支之幾衣禰波 與之乃山、者流乃

 以呂止八 可春美乎曾美流

           武女乃花於曾之止以不心遠



「乀」;3文字の繰り返し、「ヽ」;2文字の繰り返し、「々」;1文字の繰り返し
 

無造作に書綴る筆の跡(走り書きする詠歌)も今は気が引けて…。(きっと気が引けてしまうのでしょうね、そんな気がしますよ)

   立春の日のある所での仰せの言葉に

 上氷解くるなるべし山川の、岩間潜水音まさるなり
表面に薄く張った氷が解けてしまうはずですよ、山間を流れる川の岩の隙間を潜る水の音も強く(勢い良く)なっておりますから。


   吉野山の雪の上に霞がたなびくのをご覧になりまして

 谷深み雪し消えねばよしの山、春の色とは霞をぞ見る
谷が深いので雪でさえまだ消えていない吉野山で、(見る事の出来る)春の色と云えば断然霞ですよ。

見る;自分の目で実際に確かめる。転じて自分の判断で処理する意。


   梅の花(咲くのが)遅しと云う心を(もって歌を詠む)



このページの