針切 相模集9                 戻る 針切 一覧へ 
    生成り楮紙(素色)
こちらの色は、ぼかしの様にも見えますが元々は未晒しの繊維の色で、長年の変化により褪色、或は褐色化した物と思われます。素色(しろいろ)とは、漂白していない元の繊維の色でやや黄味の砥の粉色~薄香色の様な色。本来染めていない為、素の色のことを素色(しろいろ)といいます。。写真は薄目の薄香色でかなり褪色しているように見えます。
高い所より書出して歌のみを書写、書き下ろしてゆくに従い行がやや右に流れる特徴が有り、詞書は有りません。


素色(しろいろ)

『針切』 相模集9 (素色)  『針切』 相模集9 (素色)  『針切』 相模集9 (素色) 
 約7.3cmx21.3cm    
  写真の状態があまりよくありませんが
ご了承ください。



             かな                                使用時母へ



 ものをのみ おもひいり火の 山のはに、かかる

 うきみと などてなりけむ


 おもひつつ いはぬ心の うちをこそ、つれなき

 ひとに みすべかりけれ







 ものをのみ 思ひ入り火の 山の端に、斯かる

 憂き身と などてなりけむ


 思ひつつ 云はぬ心の 内をこそ、つれなき

 人に 見すべかりけれ






 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
一行は一行に、繰返しは仮名で表記

 読みやすい様に所々に漢字、読点を入れております。解説


 毛乃乎乃美 於毛悲以利火乃 山乃波爾、可々留

 宇支美止 奈止天那利希無


 於毛悲川々 以盤奴心乃 宇良爾己所、川礼奈支

 悲止爾 美春部可利希禮



「乀」;3文字の繰り返し、「ヽ」;2文字の繰り返し、「々」;1文字の繰り返し □部分は不明文字。
「爾」は「尓」とすることも
「禮」は「礼」とすることも
「弖」は「天」とすることも
「與」は「与」とすることも
  
 解説

 ものをのみ思ひ入り火の山の端に、斯かる憂き身などてなりけむ
深く物思いにふけっていると夕日が山の端に沈んで往くのが見えて、どうして私はこのような辛い身の上となってしまったのでしょうか。
(落日は表舞台から消える、これから暗くなる、沈んでゆく等ふさいだ心に追い打ちをかける意味合いを連想させる。)

などて;副詞「など」に接続助詞「て」が付いて疑問の意を表す。どうして、なぜ。


 思ひつつ云はぬ心の内をこそ、つれなき人に見すべかりけれ
(あの人の事を)思いながらも決して口には出さない心の内をこそ、素知らぬ顔でいる人に見せるべきではありませんよ。(恋心を決して悟られてはいけませんよ)。





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