針切 相模集11                 戻る 針切 一覧へ 
    生成り楮紙(素色)
こちらの色は、ぼかしの様にも見えますが元々は未晒しの繊維の色で、長年の変化により褪色、或は褐色化した物と思われます。素色(しろいろ)とは、漂白していない元の繊維の色でやや黄味の砥の粉色~薄香色の様な色。本来染めていない為、素の色のことを素色(しろいろ)といいます。。写真は薄目の薄香色でかなり褪色しているように見えます。
高い所より書出して歌のみを書写、書き下ろしてゆくに従い行がやや右に流れる特徴が有り、詞書は有りません。


素色(しろいろ)

『針切』 相模集11 (素色) 約4.6cmx22.3cm







『針切』 相模集11 (素色)下側部分
『針切』 相模集11 (素色)上側部分




 
 写真の状態があまりよくありませんが
ご了承ください。
   
     



             かな                                使用時母へ



 ひまなくぞ なにはのことも なげかるる、こや

 つのくにの あしのやへぶき










 暇なくぞ 何はの事も 嘆かるる、こや

 つの国の 葦の屋(八)重葺き


 暇なくぞ 難波の事も 嘆かるる、昆陽

 津国の 葦の八重吹き


 


 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
一行は一行に、繰返しは仮名で表記

 読みやすい様に所々に漢字、読点を入れております。解説


 悲万奈久所 那爾盤乃己止毛 奈希可留々、己也

 徒乃久爾乃 安之乃也部婦支





「乀」;3文字の繰り返し、「ヽ」;2文字の繰り返し、「々」;1文字の繰り返し □部分は不明文字。
「爾」は「尓」とすることも
「禮」は「礼」とすることも
「弖」は「天」とすることも
「與」は「与」とすることも
  
 解説

 暇なくぞ何はの事も嘆かるる、こやつの国の葦の屋(八)重葺き
ひっきりなしに事が起こって何事も満たされない思いにため息をつかされる、おまけに此奴の国では(終の住処は)葦で屋根を葺いた粗末な小屋ときたもんだ。
(我が境遇を嘆いた歌ともとれる。)

何はの事も;何事も。又は、難波のことも;歌枕である難波のこと。

 暇なくぞ難波の事も嘆かるる、昆陽津国の葦の八重吹き
暇がなければ行ってみたい難波でさへも(どうせ行けっこないと)溜息をつかされる、昆陽か或は摂津の国(の難波)で見られるという幾重にも重なって揺れる蘆の風に吹かれる様を。(でもやはり、死ぬ前に一度は訪ねてみたいものですねえ)


 こ や

昆陽;昔の児屋郷の地で、今の兵庫県伊丹市内にある。行基が開祖した昆陽寺及び築造したと伝えられる灌漑用溜池の昆陽池があり、美しい風景と相まって歌枕にも使われる。

難波;歌枕。難波の浦は蘆の名所で、特に若葉の頃の新緑の美しさが有名。


津國;摂津の国。大阪府北部と兵庫県東部にわたる地域の古称。




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