本阿弥切・断簡(古今和歌集巻第十八 雑歌下)拡大3           戻る 本阿弥切 一覧へ

                                    写真をクリックすると拡大画面になります 昭和初期模本
薄茶・花襷具引剥奪唐紙料紙半葉分

                                                                 

本阿弥切 断簡 具引剥奪唐紙 薄茶 『花襷』 古今和歌集巻十八 雑歌下 花襷(はなだすき)  本阿弥切断簡
 (古今和歌集巻第十八 雑歌下)



解説及び
使用字母



清書用 臨書用紙 本阿弥切 薄茶 『花襷』
清書用 薄茶

 
歌番号は元永本古今和歌集での通し番号(歌の一部が異なっている場合も同じ番号で記載)          
( )内の歌番号は小松茂美氏監修「本阿弥切古今集」(二玄社発行)の通し番号(類推含む)    解釈(現代語訳)へ
               951
               
よのなかに いつ

951                    (943)
 ら我みの ありてなし、あはれとやいはむ あ
             
952       (944)
 なうとやいはむ    山ざとは もののわび
952
 しき こともあれ、よのうきよりは すみよ

 かりけり       これたかのみこ

953                         (945)
 しらくもの たえずたなびく みねにたに、す

 めばすみぬる よにこそありけれ

      ふるのいまみち

954                     (946)
 しりにけん ききてもいとへ よのなかは、なみ

 のさはぎに かぜぞしくめる



               951
               
與乃奈可爾 以川

951
良我三乃 安利天奈之、安八礼止也伊者無 安

奈宇止也以者武     山左止波 毛乃々和日
952
之幾 己止毛安禮、與乃宇支與利者 寸美與

可利个利        己禮多可乃美己

953
之良久毛乃 多恵春多那悲久 美年爾太爾、寸

免者寸美奴留 與爾己曾安利个禮

       不留乃以万美知

954
之利爾个无 支々天毛以止部 與乃奈可波,奈美

乃左者支仁 可世曾之久女留


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 「爾」は「尓」とすることも。     渋黄茶文字は前項に在るべき文字
 「个」は「介」とすることも。

951
 よのなか いづらわが身 ありてなし、あはれとやいはむ あなうとやいはむ

元永古今和歌集・                                      詠人しらず
 よのなか いづら我身 有てなし、憐とや云む あなうとや云む

公任本古今集(943)                                     
 世中に いづら我身 ありてなし、あはれとやいはむ あなうとや云む


952
 山さとは もののわびしき こともあれ、よのうきよりは すみよかりけり

元永古今和歌集・                                      詠人しらず
 山里は 物のわびしき 時こそあれ、よのうきよりは 住よかりけり

公任本古今集(944)

 山里は ものさびしかる ことこそあれ、よのうきよりは すみよかりけ


953
 しらくもの たえずたなびく みねにたに、すめばすみぬる よにこそありけれ

元永古今和歌集                                 
惟喬親王
 しらくもの たえずたなびく 岑に谷、すめばすみぬる よにこそありけれ

公任本古今集(945)
 しら雲の たえずたなびく みねにたに、すめばすめばすまものにざりける

954
 しりにけん ききてもいとへ よのなかは、なみのさはぎに かぜぞしくめる

元永古今和歌集・                                       布留今道
 しりにけむ ききてもいとへ よのなかは、なみのさはぎに かぜぞふくめる

公任本古今集(946)
 しりにけむ ききてもいとへ 世中は、なみのさはぎに かぜぞめる



                                                                   戻る 本阿弥切 一覧へ
一行目は第六紙

 解説右側は

  使用字母

左側のひらがな中漢字の意味の通じるものは漢字で表記


行の途中から次の歌が始まる





























公任本古今集;
伝藤原公任筆古今和歌集


水色文字は他本との異なる箇所













水色文字「すめば」は見消ち









          現代語訳                                      解釈      解説及び使用字母へ 
 
                            詠み人不明

951
「世の中に何ら我が身の有りて無し、憐とや云むあなうとや云む」
世の中の何処に私自身の居場所が有るのか無いのか、不憫だと云うのかああ辛いと云うべきなのか。



                            詠み人不明

952
「山里は物の侘しきことも有れ、世の憂きよりは住み良かりけれ」
山里はうら寂しいことも有るけれど、世の中の辛い事よりは住み易いことだったのだなあ。



                            惟喬親王

953
「白雲の絶えず棚引く峰にたに、住めば済みぬる世にこそ有りけれ」
白雲が絶えず棚引いている峰や谷であるが、住めば住むことの出来る世の中でこそ有ったということである。


                            布留今道
954
「知りにけん聞きてもいとへ世の中は、波の騒ぎに風ぞしくめる」
知っていただろうが聞いただけでも疎ましく思う、世の中では波の騒ぎは風に依ってこそ頻繁に繰り返されるもののようだよ。



951

世の中の一体何処に私自身が無事で暮らせる場所が有るのだろうかそれとも無いのだろうか、そういう自分を気の毒だと思うべきなのだろうか、それともああ辛いと思うべきなのだろうか)との意を詠んだ歌。
いづ
何ら;どのあたり。どこ。どちら。場所・方向についての不特定の指示代名詞。「ら」は場所や方向を示す接尾語。
   

あな憂;ああ辛い。ああ嫌だ。感動詞「あな」に形容詞「憂し」の語幹。

952
(山里は何となく物悲しいことも有るけれど、都の辛いことの多い暮らしに比べれば住み易い所であったのだなあ。)との意で詠んだ歌。

物の侘しき;うら寂しい。何となく侘しい。「物侘し」の連体形。「の」は語調を整える為。


953
白い雲が何時でも湧きあがったり消えたり山に架かったり流れたりしている峰や谷でさへも、住んでいれば靄も晴れて住んで納得のいく世界で有ったという事ですよ。)との意を詠んだ歌。

たに;「谷」と「だに」との掛詞。

すみ;「住み」と「済み」との掛詞。

954
(知っていた事ではあるようなのだが敢えて聞くと嫌だと思ってしまいますよ、世の中では揉め事は風向き=形勢の変化によってこそ繰返し引き起こされるものの様ですよ。)との意。

けん;「けむ」の音便。過去に有ったであろうと推量して云う。

 

これたかのみこ  もんとくてんのう             きのなとち
惟喬親王;文徳天皇の第一皇子で、母は紀名虎の娘静子。大宰帥、常陸守、上野太守を歴任。同じく第四皇子である惟仁親王(後の清和天皇)の外戚藤原良房の力が強すぎて、出自の低さを問われ第一皇子でありながら皇位継承はならなかった。剃髪して山城の國愛宕郡にある小野の里に隠棲して小野宮と云われた。木地師の間では伝承によりその祖とされている。生年844年〜没年897年


ふるのいまみち
布留今道;平安初期の貴人・歌人で、詳細は不詳。奈良県天理市布留にある元官幣大社である石上神宮の代々の神主であった布留氏の系統との説もある。元慶6年(882)従五位下、晩年の寛平10年(998)次官の三河介として地方の赴任となる。生没年不明。

いと
厭う;嫌だと思う。疎ましく思う。嫌う。又「世を厭う」の形で出家する。仏門に入る。
さは
騒ぎ;慌ただしく落ち着かない事。異変。
 し
頻く;動作がしばしば繰り返される。事態が重なって起こる。

める;…と見える。…のようです。…らしい。「めり」の連体形「める」。原義は「見あり」で、後に推量の用法が加わったもの。



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本阿弥切 断簡 具引剥奪唐紙 薄茶 『花襷』 古今和歌集巻十八 雑歌下