賀歌五首巻子本（打雲万葉-3）

賀歌五首（蓬莱切）巻子本（９寸１分×４尺９寸5分）　　　　
　伝藤原行成筆　染紙　天地打雲ぼかし　雲母振　（分割前の模本）
蓬莱切として分割される前の巻子本（五首一紙）の模本。天地に打雲を施し、雲母を散した装飾料紙が使われ、見返しには金銀大小切箔ﾉｹﾞ砂子が鏤めてある。
料紙は本鳥の子、天に一重、地に二重の打雲が施されている。万葉仮名二首。

巻子本

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天には二重打雲の、地には一重打雲を連山風に､打雲をしてある｡写真では分かり難いが、実際の見え具合はもう少し良く見えており、雲母のきらめきもある。
左側の茶色の紙面全体に雲母が散してあるが､光の影響で殆ど見えてない。

　　　　　　　　　　　　　　　万葉仮名　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　使用字母

よろづ世にかはらぬ花の色なればいづれの秋かきみがみざらむ	與露都餘　耳　閑波良奴者奈乃以呂難禮盤移川麗濃安幾我起身駕微差羅無
おほはらやをしほの山の小松原はやこたかがれちよの影みむ	於本波羅　也　　越志寶乃耶末濃故満川者羅半也許當閑々麗地與乃賀遣微武

解説

歌；萬代に変わらぬ色の花なれば、何れの秋か君が見ざらむ。

何時までも続く世の中に変わることのない花の色であるならば、何れの秋にか貴方様が見ないことがあろうか（いや見るに違いない）。

ざらむ；…ないだろう。打消しの助動詞「ず」の未然形「ざら」に推量の助動詞「む」の付いたもの。

歌；大原野小塩の山の小松原、早小鷹狩れ千代の影見む。

大原野の小塩山の小高い丘にある多くの小松の生えている野原にて、早く小鷹狩りをやっておくれ、物は試しと永遠の影（兆候）をみてみたいものだよ。

大原野；京都市西京区大原野町付近。この付近の丘陵一帯は西山とも呼ばれていて、狩猟を行ったり桜の名所としても有名で、藤原氏の氏神である大原野神社や歌枕としての小塩山がある。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　これたか
大原；歌枕。京都市左京区大原町付近。八瀬の北方の山間の地域で、三千院・寂光院などがあり近くには惟喬親王（紋徳天皇の第一皇子でありながら藤原氏の影響力が強く皇位に就けなかった為、剃髪後比叡山麓の小野に隠居して小野の宮と称される。）の墓地もある。古くは「おはら」と云い「小原」とも書いていたが人々が多く訪れるようになるにつれて大原と呼ばれるようになったといわれる。

こたかが
小鷹狩り；ハヤブサなどの小型の鷹を使って行う秋の鷹狩り。ウズラや雀などを捕まえさせる。

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清書用臨書用紙打雲ぼかし（9寸2分×1尺2寸）

	半懐紙上部分の拡大天：二重打雲ぼかし　　　　　　明るいｸﾞﾚｰ色光っているのは雲母です
	光っているのは雲母です地：一重打雲ぼかし　　　明るいｸﾞﾚｰ色半懐紙下部分の拡大