伊勢集(石山切) 具引唐紙『変り小菊唐草』 (清書用臨書用紙)   戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第十二紙料紙、具引唐紙『変り小菊唐草』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ柄をご用意ください。

伊勢集 具引唐紙 『変り小菊唐草』(たんぽぽ唐草)  伊勢集 具引唐紙 『変り小菊唐草』 書拡大へ
具引唐紙料紙の書手本
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                たんぽぽからくさ
具引唐紙・『変り小菊唐草(蒲公英唐草)』花鳥折枝金銀袷型打(半懐紙)
小菊唐草の花の部分が、野菊から蒲公英に代わったものです。
  伊勢集 書




 伊勢集 具引唐紙 『変り小菊唐草』(たんぽぽ唐草) 部分拡大 中央部分

光を当てた状態での見え方

 中央部分 光を当てた状態での見え方 
具引唐紙の唐草柄は『変り小菊』同じ様な柄で『小菊』の柄とは花の形が異なるので
こう呼ばれております。蒲公英唐草とも呼ばれております。
花鳥折枝金銀袷型打(千鳥・柳・紅葉・蓼・松枝等)
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 具引唐紙 『変り小菊唐草』(たんぽぽ唐草) 部分拡大
 具引唐紙
変り小菊部分
(蒲公英唐草)
花鳥折枝金銀袷型打

 左上側部分 陰での見え方 

花鳥折枝金銀袷型打(松枝・紅葉・千鳥等)。

 


伊勢集 具引唐紙 『変り小菊唐草』(たんぽぽ唐草) 書手本  解説及び使用字母
 伊勢集 具引唐紙・『変り小菊唐草(蒲公英唐草)』書手本 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第十二紙
 両面加工の料紙を使用して綴じた帖です(見開き)。縹色地に黄雲母柄


歌番号は伊勢集での通し番号                            青色文字は使用字母            解釈(現代語訳)
79
 (をみなへし みるに心は なぐさまで、いとど)
 むかしの 秋ぞこひしき


   かりする人ゐなかいへのたなと
   あるまぢかくよりきたれば
80
 かりにくと いふにこころの みえぬれば、わが
 たもとには よせじとぞおもふ

81
 としごとに 神をぞいのる さかきばの
 いろもかはらで をらむとおもへば



   后宮五十賀御屏風内裏し給し

82
 みそぎつつ おもふことをぞ いのりつる
 やをよろづよの 神のまにまに


   七月七日たらゐにみづいれて影
   みるところ
83
 めづらしく あふたなばたは よそ人も
 影みまほしき 物にざりける


   まつのすゑにつるたてり
84
 あらはなる かたにしもすむ あしたづは
 ちよみむことの 心なるべし

   これもおなし宮の御賀大きおとどの
   (まつりたまふすみのえの松みる所)


79
 (遠美奈部之 美類爾心者 那久左末天、以止々)*1
 武可之能 秋所己比之幾

    可利春類人為奈可以部能堂那登
    安類万遅可久與利支多禮波

80
 可利爾久止 以不爾己々呂能 美衣奴禮者、和可
 太毛止仁者 與世之止楚於毛婦

81
 止之己止仁 神乎楚以乃類 左可支者能
 以呂毛可八良天 遠良无止於毛部者


    后宮五十賀御屏風内裏志給志

82
 美所支川々 於毛婦己止遠楚 以乃利川類
 也乎夜路徒與乃 神能万爾々々


    七月七日太良為爾美徒以禮天影
    美類止己呂

83
 女川良之倶 安不堂那者太者 與楚人毛
 影美末保之支 物爾左利計留


    末川能春恵爾川類多天利
84
 安良者那類 可堂爾之毛春武 安之太川者
 千與美武己止能 心奈留部之

    己禮毛於奈之宮乃御賀大支於止々能
    (末川利太末婦春美乃衣能松美留所)


「禮」は「」とすることも。           ( )*1は前項、( )次項にあり
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。

   
          現代語訳                       解釈        解説及び使用字母

79
「女郎花見るに心は慰さまで、いとど昔の秋ぞ恋しき」
女郎花を見ているのに心は慰められないので、随分と昔の秋が懐かしく感じられることよ。


   狩りする人が田舎家である貸家から
   ごく普通に直ぐ近くより来れば、

80
「狩に来と云ふに心の見えぬれば、我が袂には寄せじとぞ思ふ」
狩にやって来ると云うけれども本心が見えなかったので、私の身近には寄せない様にしようと思っておりますよ。

81
「年毎に神をぞ祈る榊ばの、色も変わらで折らむと思へば」
毎年のことで神に祈りを捧げる榊の葉を、色も変わらないので折ってみようと思へばの事ですよ。


   
きさいのみやいそぢのが おほんびょうぶ
   后宮五十賀の御屏風を皇居にお造りなされて

82
「禊つつ思ふ事をぞ祈りつる、八百万代の神のまにまに」
心身を清めながら願い事を祈っておりました、何時までも続く時代の神様の思し召しのままに。


   七月七日、たらいに水を入れて(月の)影を
   見る処

83
「珍しく逢ふ七夕は他所人も、影みまほしき物にざりける」
珍しく見る事が出来る七夕は他所の人も、その姿に会いたいと思うものであったのだなあ。


   松の梢(枝先)に鶴が立っている
84
「顕なる方にしも住む葦田鶴は、千代見むことの心なるべし」
よりによって良く見える方に住んでいる鶴は、千年も見ていられる事の意味(証)であるに違いない。


   これも同じ宮のお祝いの賀に太政大臣の
   (お差し上げなさった住江の松を見る所)


79
(女郎花(=愛しい女性)を眺めているにも拘らず心が安まらないので、若い頃の秋が懐かしく思い出されますよ。)との意を詠んだ歌。



80
(本当に狩なのか、狩は仮で私の所へ来るのが目的なのかが疑わしかったので、家には入らせない様にと思っておりますよ。)との意を詠んだ歌。


   
狩りに来と;狩りに来るというが。慕う心が意中の人に向けられる様子を表している。
たもと たもと
袂;手元の意。

81
(毎年の事なので神事に使う榊葉を折り取っておこうと考えただけのことですよ。他意は在りませんよ。)と返した歌。


82
(皇后、五十の賀の祝に長寿を祝って歌った歌)

まにま
随に;事の成り行きに任せる様。

七夕に空を見上げてばかりだと首が痛いのでたらいに水を張って天の川の様子を写し込んだもの(水鏡)。

83
(曇りで見えないことも多い七夕ではあるが、今宵は良く見える。たらいに他所の人の影が見えたのか、或は遠くにもたらいが見えたのか。皆同じなのだなあ!)とハッと気づいて詠んだ歌。


84
(あのように目につく様に姿を現している鶴は、千年もの長きに渡って目にする事への証であるのだろう。)との意を詠んだ歌。

しも;よりによって。…に限って。特にその事項を取り立てて示す意を表す。強意の副助詞「し」に係助詞「も」の付いた語。

なるべし;…であるに違いない。断定の助動詞「なり」の連体形「なる」に推量の助動詞「べし」の付いた形。

おおきおとど
太政大臣;律令制での太政官の最高位にある官職。




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   伊勢集 具引唐紙 『変り小菊唐草』(たんぽぽ唐草) 書手本