伊勢集(石山切) 黄茶 具引唐紙『丸獅子唐草』(清書用臨書用紙)     戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第十七紙料紙、具引唐紙『丸獅子唐草』の部分の清書用臨書用紙になります。丸獅子唐草は獅子唐草の蔓草の繋丸紋が二重丸線になったものです。獅子とはライオンの事で、古来日本では猪や鹿などの食用獣をシシと呼んできたので区別の為、唐獅子とも呼んでいました。獅子は王や仏の間では守護動物として崇められ、日本に伝えられた獅子の図案は栄華・繁栄の象徴として、平安の世では大いに珍重され料紙の図柄として多く残されております。
伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には白具引紙(花鳥折枝)をご用意ください。

伊勢集 具引唐紙 『丸獅子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 拡大 伊勢集 具引唐紙 『丸獅子唐草』 書拡大へ
白具引唐紙の書手本
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  伊勢集
 第十七紙書
 具引黄茶 『丸獅子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 (半懐紙)
  伊勢集 書



伊勢集 具引唐紙 『丸獅子唐草』 左上部分拡大  左上側部分 
『丸獅子唐草』
花鳥折枝金銀袷型打
 左上側部分 『丸獅子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打  
具引唐紙に金銀花鳥折枝を施したものです。
紅葉、松枝、庭藤、芝桜、千鳥、蝶々。
 伊勢集臨書用紙

伊勢集 具引唐紙 『丸獅子唐草』 中央左部分拡大
判り辛いですが、金銀で一つの柄になっております。金泥は通常の濃さではなく銀で増量されたものです。  
 左下側部分 具引極薄黄茶 『丸獅子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打
具引唐紙に金銀花鳥折枝を施したものです。
柳、紅葉、松葉、萩、千鳥、蝶々。
 


伊勢集 具引唐紙 『丸獅子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 拡大 解説及び使用字母 
 伊勢集 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘  第十七紙     
 両面加工の料紙を使用して綴じた帖です(見開き)。

歌番号は伊勢集での通し番号                            青色文字は使用字母            解釈(現代語訳)
133
 草まくら たびゆくみちの やまべにも
 しらくもならぬ みちやとりけり

   ふしみにて
134
 なにたちて ふしみのさとと いふことは
 もみぢをとこに しけばなりけり

    
て い じ い ん おほんまえ
   亭子院の御前にて花おもしろく
   露おきたる、めしてみせさせたまふ
   とて
135
 白露の かはるもなにか をしからむ
 ありてののちも よはうき物を

   御かへし
136
 うゑたてて 君がしめゆふ 花なれば
 玉とみえてや 露もおくらん

   しをに
137
 うけたむる そでをしぼりて つらぬかば
 なみだのたまも かずはみてまし

138
 つゆだにも おくともみえぬ あきはぎは

(ふけしをにしに 月のなるらん)


133
 草末久良 太比由久美知能 也末部二毛
 志良久毛奈良奴 美知也止利希利

    不之美爾天
134
 奈爾太知天 不之三能左止々 以布己止波
 毛美遅乎止己仁 志計者奈利計里

    亭子院能御前二天花於毛之路久
    露於支多類女之天美世佐世太万不
    止天
135
 白露能 可者流毛那爾可 遠之可良武
 安利天能々知毛 與者宇支物乎

    御可部之
136
 宇恵堂天々 君可之免由不 花奈禮者
 玉止美衣天也 露毛於久良无

    志遠仁
137
 宇希太武類 所天越之保利天 川良奴可八
 奈三太能堂万毛 可春八三天末之

138
 川由堂仁毛 於具止无美衣奴 安喜者支八

 (不希志乎爾之二 月能奈留良无)


「禮」は「礼」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
( )は次項にあり


           現代語訳                     解釈         解説及び使用字母

133
「草枕旅行く道の山辺にも、白雲ならぬ路宿りけり」
旅へ出かけて行く道の山辺にも、白雲ではないがその様な路が映っていたそうですよ。


   伏見にて

134
「名に立ちて伏見の里という事は、紅葉を何処に敷けばなりけり」
有名になって伏見の里に居るという事は、紅葉をどこに敷けば良かったのだろうかなあ。
或は
浮名の噂が立って伏見の里に居る事は紅葉を床として敷いて寝ていたからなのだろうかなあ。


   亭子院の御前にて花が風流に咲いていて
   玉のような露が降りていたのを、お取り寄せになって御覧に入れよう
   としまして

135
「白露の変わるも何か惜しからむ、有りての後も世は憂きものを」
白露の変化してしまうのも何だか惜しいようであるよ、栄えていた後でもこの世の中は辛いものであるからなあ。


   御返しの歌

136
「植えたてて君がしめ結ふ花なれば、玉と見えてや露も置くらん」
植え替えて貴方様が色艶や香りを供えられた花であるからこそ、玉のように見えて露も降りているのでありましょうか。
或は
「植え立てて君が締め結ふ花なれば、玉と見えてや露も置くらん」
植え替えて(庭一面に)生させて上皇様が結び束ねる花であれば、白珠に見えるような露も降り来ることでしょう。


   紫苑(という題で)

137
「受け留むる袖を絞りて貫かば、涙の珠も数は見てまし」
涙を受け溜めておいた袖を絞って貫いたならば、涙の珠も数は見て取れるでしょう。


138
「露だにも置くとも見えぬ秋萩は、更けし峰西に月の成るらむ」
露でさへも置くようにも見えない秋萩であるのに、すっかり夜が更けてしまった尾根の西には月が見えているのでしょうか。



133
(旅へ出かけて行く時の道すがらで遠くに見える初めて見る山辺にも、まるで白雲がたなびいているように見える道筋が映って見えたそうですよ。)とあそこを通って行くのかとの意。
「道の」の「道」は「未知」との掛詞。


くさまくら

草枕;枕詞、「旅」「結ぶ」「結ふ」「露」「仮」などにかかる。元の意は草を結んで枕として野宿したことに依る。旅の仮寝。


134
(噂になってしまって貴族の別荘地である伏見に居るの為、顔が一面紅潮してしまったので顔ではなくて何処に紅葉を散らせばよかったのでしょうかねえ!)との意。

紅葉を散らす;若い女性が恥ずかしさのあまりにまるで紅葉の葉を散らすかのようにパッと顔を赤らめる事の形容。


135
(隠居後は悠々自適にと思っていたが、天子として栄えていた頃の後でも世の中は辛いものなので、今が風流であれば変化させてしまうよりもそのまま眺めていたいものだよ。露の命は短いので)との意。


136
(植え替えて庭一面に際立たせて亭子院殿が咲かせた花であるなら、玉と見られる様な白露もきっと降り来ることでしょう。心配なさらずとも)との意を返した歌。

染結ふ;色や香りを染込ませて花を咲かせる。=色付いて咲く。
標め結ふ;自分の領地(花畑)として標して縄などで結ぶ。
締め結ふ;紐などで縛って結ぶ。=花束の様に結ぶ


 しをに 
紫苑;シオン。薄紫色の美しい花をつけるキク科の多年草。小菊唐草の画材の一つ。


137
もし涙を受け溜めておいた袖を絞って滴り落ちる涙の粒を玉として貫いたならば、涙の珠も数は足りていることでしょうね。)との意。

「見て」は「充て」との掛詞。

138
(露でさへも降りているようにも思われない秋萩の様子なのに、どうして夜が更けてしまった山尾根の西側には月が見えているのでしょうねえ。)月が出ていれば露が降りて来るはずなのにね、との意。
        
を にし
しをに;「更けし峰西に」の中に「しをに」を詠いこんである。(物名歌)


ていじいん             かんぴょう
亭子院;宇多法皇の院号。寛平法皇とも云う。又その離宮。落飾して坊主になり仏門に入った上皇を太上法皇(法皇)と呼んだ。



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     解説及び使用字母