伊勢集(石山切) 具引唐紙『芥子唐草紋』(清書用臨書用紙)     戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第三十一紙料紙、具引唐紙『芥子唐草紋(大華紋)』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ柄、若しくは白具引(花鳥折枝)をご用意ください。

伊勢集 具引唐紙 紫 『芥子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 拡大  伊勢集 具引唐紙 紫 『芥子唐草』 書拡大へ
白具引唐紙の書手本
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 具引極薄紫 『芥子唐草紋(大華紋)』 花鳥折枝金銀袷型打 (半懐紙)   伊勢集 書



伊勢集 具引唐紙 紫 『芥子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 中央やや下部分拡大 『芥子唐草紋』
(大華紋)
 
 右上側部分 『芥子唐草紋(大華紋)』 花鳥折枝金銀袷型打  
薄紫具引唐紙に金銀花鳥折枝を施したものです。
紅葉、松枝、庭藤、芝桜、千鳥、蝶々。
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 具引唐紙 紫 『芥子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 左上部分拡大
左下側部分
『芥子唐草紋』

花鳥折枝金銀
袷型打
 
 左下側部分  『芥子唐草紋』 花鳥折枝金銀袷型打
薄紫具引唐紙に金銀花鳥折枝を施したものです。
柳、紅葉、松葉、萩、千鳥、蝶々。
 


伊勢集 具引唐紙 紫 『芥子唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 左上部分拡大 
判り辛いですが、金銀で一つの柄になっております。金泥は通常の濃さではなく銀で増量されたものです。  
 左上側部分  『芥子唐草紋』 花鳥折枝金銀袷型打
薄紫具引唐紙に金銀花鳥折枝を施したものです。
柳、紅葉、松葉、萩、千鳥、蝶々。
 


伊勢集 具引唐紙 紫 『芥子唐草紋』 花鳥折枝金銀袷型打 拡大 解説及び使用字母 
 
 伊勢集 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第三十一紙  『芥子唐草紋(大華紋)』
 両面加工の料紙を使用して綴じた帖です(見開き)。

歌番号は伊勢集での通し番号                             青色文字は
使用字母          解釈(現代語訳)

278
 (ころをへて あひみぬときは しらたまの)
 なみだもはるの いろかはりけり

   かへし

279
 人こふる なみだははるぞ ぬるみける
 たえぬおもひの わかすなるべし

   こくはを

280
 くれなゐの なみだしごくは みどりいろの
 そでもみちても みえまし物を

281
 くれなゐに なみだうつると ききしをば
 なといつわりと われおもひけむ

   人のちゐさきこをこれむこにせよと
   ておこせたるに


282

 かたときの 人をみしまに よるものは
 ただかたおもひに なるぞかなしき

   たなばたのゑに

283
 ありとだに かたみにみえぬ ものならば
 わするるほども あらまし物を



278

 己呂乎遍天 安比美奴止支波 之良堂末乃
 奈三太毛者類乃以呂可者利希里

    可部之

279
 人己婦類 奈美太者々流所 奴留三希流
 堂衣奴於毛比乃 和可春那留部之

    己久者乎

280
 久禮奈為能 奈三多之己久者 美止利以呂乃
 楚天毛美遅天毛 美盈末之物乎

281
 久禮奈井爾 那三太宇川類止 支々之遠波
 奈止以川和利止 和禮於毛比希武

    人能知為左支己越己禮武己爾世與止
    天於己世堂類爾

282
 可太止支能 人遠三之末爾 與類毛乃波
 堂々加太於毛比爾 那留所可奈之支

    堂那者太乃恵爾

283
 安利止太爾 可堂美爾美衣奴 毛能奈良波
 和春類々保止毛 安良末之物乎


( )は前項にあり。
「禮」は「礼」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。

         現代語訳                      解釈          解説及び使用字母

278

「頃を経て相見ぬ時は白珠の、涙も春の色変はりけり」
暫くの時間が経ってお互いに逢わないでいた時には、白珠の様な涙も春めいた様子に変って見えたなあ。


   返し
279
「人恋ふる涙は春ぞ温みける、絶えぬ思ひの沸かすなりけり」
あの人のことを懐かしく思う涙は春にこそ少し生暖かくなりましたよ、絶えることの無い思いが沸かすからなのでしょうね。


   こくわを
280
「紅の涙至極は緑色の、袖も満ちても見えまし物を」
非常に嘆き悲しんで流す涙が最後に辿り着くところは、緑の袖も紅く染まって見えたらよかったのになあ。

281
「紅に涙映ると聞きしをば、など偽りと我思ひけむ」
紅色に涙が移り変わると聞いていたのを、どうして事実ではないなどと私は思っていたのだろう。


   人が小さな子をこれを婿にせよと
   言ってこちらへよこすので、

282
「片時の人を見し間によるものは、徒片思ひに成るぞ悲しき」
ちょっとの間だけ人の世話をしていたことによるものは、単に空しく片思いになってしまう事こそ悲しいものですよ。


   七夕の絵に

283
「有りとだに互に見えぬ物ならば、忘るる程もあらまし物を」
せめて無事でいるとだけでも、お互いに見る事が出来ないものなので、忘れることの出来る程度の物であったらよかったのに。



278
(随分と長い時間が経ってお互いに逢わないでいた時には、白珠の様な涙も春めいた様子に映って見えた様に感じましたよ。)との意。



279

(あの人を恋い慕うて流す涙は春にこそ微温みますね。というのも思い続けてきた熱い思いが涙を沸かすからなのでしょうね。)との意。


280
(血の涙を流すほど悲しい出来事がもたらすものは、緑の袖の御方も願いが叶ったとしても長くは続かない様にその袖も紅く染まって見える事であれば良かったのに)との意。
くれないのなみだ
紅の涙;血の涙。非常に嘆き悲しんで流す涙。また女性の流す涙とも。
みどりいろのそで                               うえのきぬ
緑色の袖;緑の袖、緑の衣に同じ。六位の物が着用した衣、緑の袍。又、六位の異称。

こくは;こくわ=サルナシの古名。キウイを極小にしたような緑色の果肉。
木鍬;全体を木で作った鍬。

281
(血の涙の嘆きに対して、そんな事あるはずがないと思っていたのをそのような事も在ったのだ)と返して詠んだ歌

282
(ちょっとの間だけ人の世話をしていたと云うだけの間柄なので、その様な期間だけでの恋心などあやふやなもので、単に空しく片思いに終わってしまう事の方が悲しいものですよ。)との意。


283
(せめて無事でいるとだけでも通知が有れば、お互いに見る事が出来ない間柄なので、忘れることの出来る程度の恋心であったらよかったのに。)と忘れることの出来ない苦悩を詠んだ歌。

かたみ
互に;お互いに


 





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