金沢本万葉集 (7寸1分5厘×8寸9分5厘)       戻る 金沢本万葉集 一覧へ 
 万葉集・巻四 具引唐紙 極薄茶色『大波紋』第三十四紙(清書用極薄茶色)

極薄茶色(ごくうすちゃいろ) 大波紋  

古筆臨書 粘葉本金沢万葉集 料紙 具引唐紙 『大波紋』









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唐紙の柄は

大波紋(渦の波)









21.6cmx27.1cm 
良く見ないと判らないぐらい柄がはっきりしておりません。実際の見え具合は中央上側の薄くグレーに見えている程度と為ります。 水色文字は使用字母


606
 吾毛念 人毛莫忘 多奈和丹 浦吹風之 止時無有

 われもおもふ ひともわするな おほなわに

 うらふくかぜの やむときなくあり


607
 皆人乎 寝与殿金者 打礼杼 君乎念者 寝不勝鴨

 みなひとを ねよとのかねは うつなれと

 きみをしおもへば いねがてにかも


608

 不相念 人乎思者 大寺之 餓鬼之後尓 額衝如

 あひおもはね ひとをおもふは おほてらの

 がきのしりべに ぬかづくがごと

609
 後情毛 我者不念寸 又更 吾故郷尓 物還来者

 こころにも われはおもはぞ またさらに


 わがふるさとに かへりこむとは

610
 近有者 抜不見在乎 弥遠 君之伊麻者 有不勝而


 ちかくあれば みねともあるを いやとはに

 きみいましなば ありてもかつじ


 右二首相別後更送賜


606  おも
 吾も念ふ人もな忘れおほなわに、浦吹く風の止む時なかれ

 和礼毛於毛不 比止毛和寸留奈 於本那和耳、

 宇良不久可世乃 也武止支奈久安利


607
        かね                
 皆人を寝よとの鐘は打つなれど、君を念へば寝ねがてぬかも

 
美那比止遠 禰与止乃宇禰波 宇徒奈礼登、

 幾見遠之於毛部波 以禰可天爾可毛

608                  が き  しりへ ぬか
 相念はね人を思ふは大寺の、餓鬼の後に額づく如

 安比於毛者禰 比止遠於毛不波 於保天良能、

 可幾能之利部爾 奴可川久可己止


609こころ                    かえ
 情ゆも我は念はずまた更に、吾故郷に還り来むとは


 己々呂耳毛 和礼波於毛者所 末多佐良爾、

 和可不留左止爾 可部利己武止波

610                  とは
 近く有れば 見ねどもあるを いや遠に、
    
いま
 君が坐せば ありかつましじ

 
知可久安礼波 美禰止无安留遠 以也止波耳

 幾見以末之奈波 安利天毛可川之

                 
また お く
  右の二首は、相別れて後更送賜れり

 い  
寝ね勝てに;寝られずに。寝ることができないで。「に」は否定の「ず」の連用形

 ぬかず
額衝く;額を地につけて拝礼する。丁寧にお辞儀をする。


いや
弥;いやが上に。いよいよ、ますます。

いま
坐す;在る、居る、の尊敬語

ましじ;推量の「まし」に否定推量の「じ」を添えたもの。・・・のはずもなかろうに。

 


               
拡大図 大波紋(極薄茶色)  
古筆臨書 粘葉本金沢万葉集 料紙 具引唐紙 『大波紋』