香紙切  (巻第十 雑 断簡)           戻る 香紙切 へ 
    丁子染紙(香色)
こちらの色は、ぼかしの様にも見えますが元々は単色の香染で、長年の変化により褪色、或は脱色した物と思われます。香色とは、丁子の煮汁で薄く染めた色でほんのりと赤味の出たような色。ほんのりと丁子の香りのするような色のこと。写真は殆ど薄香色のようになっています。

香色
(こういろ)
香紙切 麗花集 巻第十 雑 (香色) 解説へ12cmx21cm
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。

          かな
         使用時母         現代語訳へ


 麗花集巻第十   雑

     をののみやのおほまうちぎみの

     いへの屏風に、しらかはのせきこ

     えたるところ

           かねもり

 たよりあらば いかで宮こに つげやらん、けふ


  






 麗花集巻第十   雑

       遠乃々見也能於保万宇知支見能

       以部能屏風爾、志良可者乃世支己

       衣多留止己露

              可禰毛利


 多與利阿良八 移可弖宮己爾 川計也良无、个婦


 


 
           現代語訳
           解説             使用字母へ


  麗花集巻第十   雑

      小野宮の大公卿の家の屏風に、
      白河の関越えたる所
                 兼盛

小野宮大臣のお屋敷の屏風絵にある白河の関を越える所を見て詠んだ歌、
                 平兼盛


 『便りあらばいかで都に告げやらん、今日… 』

便りがあったとしたなら、どの様に都までお伝えしたら良いだろうか、今日…。





おほまうちぎみ
    おおまちぎみ
大公卿;約して大臣(太政大臣及び左・右大臣、内大臣)

おののみや    これたかのみこ
小野宮;もと惟喬親王の邸宅で、後に太政大臣藤原実頼が住んで小野宮大臣と呼ばれていた。実資・公任らを輩出した有職故実の名家。


しらかわのせき

白河関;福島県白河市旗宿付近。奥羽三関の一つ。
この関を詠った歌に中古三十六歌仙の一人、能因の
「都をば霞と共に立ちしかど、秋風ぞ吹く白河の関」がある。

春に都を立ったのだが、白河関を越える頃には
秋風が吹いていたというもの


やらん;…であろうか。断定の助動詞「なり」の連用形「に」に疑問の係助詞「や」更にラ変動詞「あり」の未然形「あら」に推量の助動詞「む」の連体形「む」の付いた「にやああらむ」の転で、疑いの意を抱いた推量を表す。

さて今日以降の下の句は如何に読んでいたのであろうか


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たいらのかねもり
平兼盛;平安時代中期の歌人で、三十六歌仙の一人。従五位上駿河守。歌集に「兼盛集」(西本願寺本110首、歌仙本及び類従本209首)がある。(生年?〜990年没)


 

徳川美術館蔵