香紙切 (巻第一 春上 断簡)         戻る 香紙切 へ   
    丁子染紙(丁子色)
こちらの色は、ぼかしの様にも見えますが元々は単色の香染で、長年の変化により褪色、或は脱色した物と思われます。丁子茶色とは、丁子の煮汁で濃く染めた色でやや黄茶味の強く出たような色。ほんのりと丁子の香りのするような色のこと。

丁子色
(ちょうじいろ)

香紙切 麗花集 巻第一 春上 (丁字色) 解説へ
12.3cmx20.6cm



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          かな
         使用時母            現代語訳へ




      大とねりのすくね

             むねをか

 かすみたつ かすがのさとの むめの花、山お

 ろしふく ちりやしぬらん


      まへなるやなぎに、うぐひす

      のなくをききて

          みちつなの御はは


  





        大止禰利乃寸久年

                 武禰遠可

 加春身堂川 可寸可乃左止乃 武免乃花、山於

 路之布久 知利也之奴羅无


        万部奈流也奈支仁、宇久比春

        乃奈久遠支々天
                

              見知□
1乃御八□2


□は不明文字
黄字は推定字母    
 □1;奈  □2;々
 
            現代語訳
           解説           使用字母へ


       大舎人の宿禰

              宗岳

 『霞立つ春日の里の梅の花、山颪吹く散りやしぬらん』

春日の里の梅の花よ、山から吹き下ろす風に散って終いやしないだろうか。


       前なる柳に鶯の鳴くを聞きて

            道綱の御母
にわさき
庭前にある柳で鶯が鳴いているのを聞いて、
                   
ふじわらのみちつなのははぎみ
                   藤原道綱母君


おおとねり            ぐ ぶ 
大舎人;宮中で宿直及び供奉などに従事する職域。

 すくね
宿禰;有力な朝廷豪族に与えられた姓。或は古代の重臣に対する敬称。


(春霞が立ったようにも見える春日の里の梅の花よ、吹き下ろしてくる山嵐で散って終う事になるのだろうか。)との意。

霞立つ;枕詞。「春日」に掛る。
やまおろし
山颪;山から吹き下ろす激しい風。山嵐。

し;為る。その事項が起るのが感ぜられる意を表す。

ぬらん;完了の助動詞「ぬ」に推量の助動詞「らむ」の
付いたもの。…となっているだろう。


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むねおか

宗岳;詳細不明。源宗岳のことか。


ふじわらのみちつなのはは
                            いせのかみ      ふじわらのともやす
藤原道綱母;平安中期の歌人で、中古三十六歌仙の一人。伊勢守であった藤原倫寧の娘で、後に摂政関白となる藤原兼家の室となり、右大将道綱を生む。著書に我が身の儚さを21年間の生活の記録として描いた「蜻蛉日記」がある。また拾遺和歌集以下の勅撰集に36首入集。「更級日記」の著者、菅原孝標女は姪に当たる。(936年頃〜995年頃)


 

個人蔵