寸松庵(寸松庵色紙・古今和歌集抄本) 巻二・春下     戻る 寸松庵色紙 一覧へ
 具引唐紙『花襷紋』(蜜柑茶色)「花の散る」 田中親美氏作模写本

こちらの寸松庵色紙は明治末期の初版複製本では間に合わず、大正初期に増版されたもの。
詠者名の「の」が抜けているが、書出しを低くしたために一行に書ききれないことに気付き途中で「の」をわざと抜く作戦に出たものか。




                かな                                水色文字は使用時母

寸松庵色紙 春下 『花のちる』 (蜜柑茶色) 拡大
12.5cmx12.6cm

    ふぢはらのちかげ

  花のちる ことやかな

  し き は る が す み、

   たつたの山の うぐ

    ひ す の こ ゑ


      
使用時母
         

     不知者良乃千可个

  花乃知留 己止也可那

  之 支 者 留 可 春 見、

   堂川多乃山乃 宇久

     比 春 乃 己 恵 

                          ふぢはらののちかげ
                           藤原後蔭
108
 花の散ることや悲しき春霞、竜田の山の鶯の声。

(今まで美しく咲いていた梅の)花の散ってしまうことは寂しく物悲しいものです、春霞が立ち朧げな竜田山の辺りからは鶯の鳴く(泣く)声も聞こえれ来ますね。

たつたやま
竜田山;奈良県の北西部生駒郡の竜田川の西側にある一帯の山。

はるがすみ
春霞;枕詞。「立つ」「ゐる」「おぼ」などにかかる。



蜜柑茶色具引唐紙・白雲母『亀甲紋』(全面)

 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
 一行は一行に、繰返しは仮名で表記
「个」は「介」とすることも。


1行目、詠者名は「の」の書き忘れか。


左端に薄っすらと糊付痕の様なものが見て取れるので
この断簡は右項に当る部分。左項の歌109と元一紙。



写真では確認し辛いが、亀甲紋が施されている。

蜜柑茶色;赤、黄丹とすることも。
 右の写真はこの箇所に該当する清書用臨書用紙(左が上製)
(普通清書用では同色同柄の物を利用してください、右側)
     上製       普通清書用
 寸松庵色紙 具剥奪唐紙(蜜柑茶色) 清書用 臨書用紙(上製) 拡大へ  寸松庵色紙 具剥奪唐紙(蜜柑茶色) 清書用 臨書用紙 拡大へ
清書用 蜜柑茶色具引唐紙・白雲母『亀甲紋』


当初の粘葉本として書かれていた状態


寸松庵色紙 春下 『こづたへば』 (蜜柑茶色) 拡大へ寸松庵色紙 春下 『花のちる』 (蜜柑茶色) 拡大へ
 当初の粘葉本として書かれていた状態

古今和歌集としての歌の続きから
元は一枚の料紙としてこの状態に
なっていたと思われる。


同様に他の左右一紙と思われる部分
       歌109                 歌108
   
  (藤田美術館蔵)            田中親美氏模本
  唐紙は共に蜜柑茶色で「亀甲紋」
色の違いは保存状態による経年変化の差
と思われる。

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