装飾料紙　『源氏物語絵巻』詞書　『東屋』詞書一

装飾料紙　源氏物語　絵巻詞書　半懐紙（８寸2分5厘×1尺２寸)　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　あづまや　ことばがき
　雁皮製　中色染ぼかし　金銀切箔ノゲ砂子振　『東屋』詞書一　
この料紙は源氏物語のような料紙に書きたいという書家の声を聞き、廉価で保存性もある料紙を制作することとした物です。
源氏物語絵巻54帖の中より代表的且つ代用可能な個所１０項を選び、比較的見る機会の多い木版本復刻版よりもやや明るめの色で仕上ておりますので、源氏物語の臨書のみならず､独自の作品の清書にも利用していただけるものと思います。

源氏物語絵巻の部分抜粋になります。　

写真をクリックすると部分拡大が御覧に為れます。東屋・詞書一　　　


左上側部分	右上側部分

左下側部分	右下側部分

この部分の料紙

かな
使用字母へ

中色染の燻銀色飛雲ぼかしと隈ぼかしを施した装飾料紙です。更に金銀大小切箔砂子ノゲを散らし、金銀のちぎり箔風に金銀泥摺りを施した料紙になります。全体には淡色での後染ですが、淡色の隈染ぼかしとなっております。ほぼ全面に金銀の砂子切箔を施し、大小の切箔等を振り分けております。手作りになりますので雲の形や位置及び金銀箔は一枚一枚異なります。同じものは出来ませんのでご了承ください。実際の見え具合は手に取ると艶も感じられて雲ももう少しハッキリ見えるように為ります。
源氏物語絵巻用料紙として作成されたものですが、一般の金銀彩装飾料紙としてもご利用頂けます。

源氏物語絵巻
東屋・詞書一

半懐紙
写真をクリックすると部分拡大が御覧に為れます。東屋・詞書一　右上側部分

	東屋・詞書一　右上側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　右上側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　右下側部分	東屋・詞書一　右下側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　右下側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　左上側部分	東屋・詞書一　左上側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　左上側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　左下側部分	東屋・詞書一　左下側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　左下側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　　臨書用紙	東屋・詞書一臨書用料紙この部分の料紙詳細（新作版）へ
東屋・詞書一　　この部分の臨書用料紙　写真左側がやや暗くなってしまい見え辛いですが、ご勘弁下さい。	東屋全・詞書一

源氏物語風料紙としての使用の他に、通常の料紙としてもご利用になれます。
資料館にて、雁皮製1冊25850円(税込)、1枚2970円(税込)でお譲り致しております。本年の追加作成になりますが数に限りがございますので、お越しの際にはお問合せ下さいます様お願い致します。尚、本鳥の子製は1冊37400円(税込)となります。

。
東屋・詞書二　　　　　　かな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　使用字母　　　　　　　　現代語訳へ

いとおほかるおほむくしなれば、とみにも　ほしやりたまはねば、おきゐたまへるも、いと　くるし。しろきおほむぞ、ひとかさねばかり　にておはするほかげ、はなやかにてをかし　げなり。このきみはひとのおもふらんことも、はづか　しけれど、いとやはらかにて、おほどきすぎた　まへるきみにて、おしいでられてゐたまへり。ひ　たゐがみなどの、いたうぬれたるを、もてかくして、　ひのかたにそむきて、ゐたまへるさま、うへをた　ぐゐなくみたてまつるに、けやおとるともみえず、　あてにをかし。これにおぼしうつりなば、さまあし　げなることもありなんかし、いとかからぬひとを　だに、めづらしき人、をかしがりたまふ御心をと、ふ　たりばかりぞ、えはぢあへたまはざりける。ものが　たり、いとなつかしうしたまひて、れいならぬと　ころなど、なおもひなしたまひそ。女ひめぎみの　おはせずなりにしのち、わすらるるよなきに、いと　よく、おもひよそへらるるおほむさまをみれば、いと　あはれに、なぐさむ心も、いとあはれになん。おもふ　人はさらになきみに、むかしのおほむこころざし　なきやうにおぼさば、いとうれしくなんなど、か　たらひたまへば、いとものつつみして、またひなびた　る心のいらへ、きこゆべきこともなくて、としごろ、	以止於保可留於本武久之奈礼盤、止美爾毛　保之也利太末波禰盤、於支為太末部留毛、以止　久留之。々呂幾於保武曾、比止可佐禰盤可利　耳天於盤寸留保可希、八奈也可爾天遠可之　希奈利己乃幾美八比止乃於无不良无己止毛波川可　之計礼止、以止也者良可爾天、於保止幾寸支太　末部留幾美爾弖、於之以天良礼弖為太末部利。比　太為可美奈止乃以多宇奴連多留遠、毛天可久之天　比乃可堂爾曾武幾天、為太末部留左末、宇衣遠太　久為奈久美多天末川留爾、計也於止留止毛美衣須　安天爾遠可之。己礼爾於本之宇徒利奈者左末安之　希那留己止毛安利奈无可之、以止可々良奴比止遠　多爾女川良之幾人、遠可之可利太末不御心遠止不　太利者可利曾衣者知安部多末波左利利个留毛乃可　堂利、以止那川可之宇之太末比天、禮以奈良奴止　己呂那止、奈於无比奈之太末比曾。女比女幾美能　於者世須奈利爾志乃知、和春良留々與奈幾爾以止　與久於毛比與曾部良留々於保武左末遠美連波以止　安者禮爾奈久左武心毛、以止安者連爾奈无於无不　人者佐良爾奈幾美爾、武可之乃於保武己々呂左之　奈幾也宇爾於本左波、以止宇礼之久奈无奈止、加　太良比多末部波,以止毛乃川々美之天末太比奈比多　留心乃以良部,幾己由部幾己止毛那久天、止之己呂
。東屋・詞書二　　　　　　　　　　　現代語訳	「弖」は「天」とすることも　　　　　　　茶字は次項に在り「爾」は「尓」とすることも　　　　　　　「礼」は「禮」とすることも　　　　　　　「个」は「介」とすることも　　　　　　　「與」は「与」とすることも　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　使用字母へ
みぐし　随分と立派な量の御髪ですので、すぐには　　　　　　　　　　かな　すっかり乾かす事も叶いませんので、　起きて居るのですが、本当に辛そうなのですよ。　　　　　　　　ひとかさね　白い御召し物を一重ほど羽織っていらっしゃるお姿が、　灯火に照らされて、華やかで趣深いご様子であります。　この姫様は、人様の思いましても気後れ致しますが、　たいそう穏やかなご気性で、　おっとりし過ぎていらっしゃる姫君で御座いますので、　(そこへ)押し出される様にして座っておいでになられた。　ひたひがみ　額髪などが、随分と濡れているのをそっと隠して、　火の方に背中を向けて座っていらっしゃるお姿は、　この上、並ぶ者が無い程に拝見いたしまするに、　際立っているご様子は、決して　劣っているとも思われなく上品で風情があられる。「この様にお思い描かれたとしたなら、お行儀悪い様子に　映ることもきっとお有りになるのでしょうけどね。」「本当にこれ程ではない方ですらも、愛らしい人と、　興味深がり御心を（お寄せなさる）」と、二人して　ご遠慮致そうとしましたが、　そうする事がお出来に成らなかった。　せけんばなし　世間話を、大変懐かしそうにおやりになられて、「普段と様子が違う所など（もおありになりますし)、　（大君様と）勘違い為さりなさるなよ。　若い姫君が(この世に)いらっしゃらなくなられた後、　忘れられる生涯でも無いのに、全く自然に　程よく思い合われている御様子を見れば、　しみじみと心動かされて、安らかにと望む心も　随分と気の毒そうに思われる。　愛しい人は更に亡なられたことで、　昔の御志も無くなった御様子に、　お思いになられたとしてならば、　本当に嬉しう御座います。」　などと語り合いになられるので、何となく　大いに気兼ねして、再び田舎じみたお気持ちなど、　(恋心を) 　御申し上げるべき言葉も無くて、ここ数年来	おほんくし御髪；髪の毛。頭髪。文節によっては頭や首の意にもなる。髪の毛の敬語で「みぐし」とも言う。　ほ　や乾し遣る；乾かしてしまう。おほんぞ御衣；御召し物。衣服の敬称。　ほかげ火影；燈火の光。灯火で見える物の形や姿。おほどき；心が広く、ゆったりとしてこせこせしない。のんびりしている。おっとりしている。四段活用型動詞「おほどく」の連用形。かし；…ね。…よ。文末に付いて強く念を押す意を表す終助詞。もて隠し；そっと隠す。隠す。四段活用動詞「もて隠す」の連用形。「もて」は正にその動作を行ったとの点での強意の意の接頭語。そむ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　せ（そ）む　　　　　　おもむ背く；後ろ向きになる。背中を向ける。原義は「背向く」の意で「面向く」の対比語。たぐひな類無く；最も優れている。並ぶものが無い。比較にならない。ク活用型形容詞「類無し（比無し）」の連用形。けや；際立って他と異なっている様。あて貴に；上品で。優雅で。「身分が高い。高貴である。」などの意の形容動詞ナリ活用の連用形。　あ在りなん；きっとあるだろう。有るに違いない。ラ変動詞「有り」の連用形に確述完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」、更に推量の助動詞「む」の音便「ん」で、推量・予測の意を表す。　か斯からぬ；こうではない。こんなではない。これ程でない。副詞「斯く」にラ変動詞「有り」の付いた「斯くあり」の約「斯かり」の未然形「斯から」に打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」　はぢ　あ　　たまえ恥敢へ給はざりける；ご遠慮なさろうとして、そうすることがお出来にならなかった。ダ行上二段動詞「恥づ」の連用形「恥ぢ」に補助動詞「敢ふ」の未然形「敢へ」、更に尊敬の補助動詞「給ふ」の未然形「給は」、そして打消しの助動詞「ず」の連用形「ざり」、加えて過去の助動詞「けり」の係助詞「ぞ」を受けての連体形「ける」、「え…ず（ざり）」で不可能の意を表す。れひ　　　　　いつ例ならぬ；何時もと違っている。普段と様子が異なった。名詞「例」に断定の意の助動詞「なり」の未然形「なら」更に打消しの意の助動詞「ず」の連体形「ぬ」。おも　　な思ひ為し；思い込みなどで、それと決めてしまうこと。又は本人の心構え、或いは他人の受け止め方。思ひ寄そへ；考えあわせて関係づける。相通ずる処があるものと見なす。「思ひ寄そふ」の未然形。おほんこころざし（おこころざし）御志；心をお寄せする気持ち。恋心。　　　まさなん；正しくそれであると強調する意を表す。強意の係助詞「なむ」の音便で、後に述語「思す」・「侍り」などの連体形「思す」・「侍る」が省略されて、余情を込めた柔らかな物言いになる。ひな鄙びたる；。田舎風になっている。田舎めく。動詞「鄙ぶ」の連用形「鄙び」に、結果の存続の助動詞「たり」の連体形「たる」が付いて、その状態であること、又はその性状を供えている意を表す。

あづまや　　　　ひな　　　　　　　　　のき　　　　　　　　　　よせむね　　　いりもやづくり
東屋；東国風の鄙びた家の意。四方へ軒を葺き下ろした家屋。寄棟或いは入母屋造。また、四方の柱だけで壁が無く、屋根を四方葺き下ろしにした小屋。庭園などの休憩所とし、「亭(ちん)」とも呼ぶ。

とうごく　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　とおとうみ　おうみ
東国；都のあった近畿地方から見て東方の国々。古くは遠江(遠つ淡海の意、現在の静岡県西部浜名湖近辺)や信濃(長野県全域)から東側の広くを指すが、後には足柄関(神奈川県南西部で現在の足柄市付近)以東の東北地方までを指した。

ひたゐがみ
額髪；額の上の髪。前髪で二つに分けて左右の頬の辺りに垂らし、肩の辺りで切り揃えたもの。左右に分けなければ額を覆って終う髪型。額の上で前髪部分だけを短く切り、横や後ろを襟組辺りで切り揃えたのが、おかっぱ髪で主に少女の時分だけ。分けられた髪の毛を左右それぞれに編んで下げられたのがお下げ髪。

にほふのみや
匂宮；源氏物語中の登場人物。今上天皇の第三皇子で光源氏の孫にあたり、薫と共に宇治十帖の主人公。妻である中の君は薫の正妻である大君の妹となる。後に中の君に預けられることとなった異父姉妹の美しい浮舟に心を奪われることとなる。
この頃、同様に薫もまた、お亡くなりになられた大君に瓜二つの浮舟に心惹かれる事となる。

おほいぎみ
大君；平安時代に用いられ、貴人の娘の内、長女に対する敬称。二女を「中の君」、三女を「三の君」と呼び、以下「四の君」「五の君」…と続く。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ページ

あづまや　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
東屋；源氏物語の巻名。宇治十帖の六番目。

物語では、薫が浮舟を見染める場面。浮舟は八の宮の娘ではあるが母親の身分が低く連れ子であったが為に、常陸介の養女として扱われ不当な振舞いの末、中の君の親でもある母の頼みで二条院(匂宮の邸宅)の西の対の一角に質素な住居(東屋=皇族の屋敷としてはの意)を設けられてそこでひっそりと暮らす事に成り、そこで薫と出会う。

	東屋・詞書一　右上側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　右上側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　右下側部分	東屋・詞書一　右下側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　右下側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　左上側部分	東屋・詞書一　左上側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　左上側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　左下側部分	東屋・詞書一　左下側部分かな使用字母へ
東屋・詞書一　左下側部分銀ボカシを飛雲のように施して金銀大小切箔砂子が全体に鏤められております。飛雲を見易く写すために光を弱くしていますので金銀が渋く色を失ったように映っております。ご心配なく、手にして頂ければちゃんと輝いて見えます。	東屋全・詞書一
東屋・詞書一　　臨書用紙	東屋・詞書一臨書用料紙この部分の料紙詳細（新作版）へ
東屋・詞書一　　この部分の臨書用料紙　写真左側がやや暗くなってしまい見え辛いですが、ご勘弁下さい。	東屋全・詞書一

いとおほかるおほむくしなれば、とみにも　ほしやりたまはねば、おきゐたまへるも、いと　くるし。しろきおほむぞ、ひとかさねばかり　にておはするほかげ、はなやかにてをかし　げなり。このきみはひとのおもふらんことも、はづか　しけれど、いとやはらかにて、おほどきすぎた　まへるきみにて、おしいでられてゐたまへり。ひ　たゐがみなどの、いたうぬれたるを、もてかくして、　ひのかたにそむきて、ゐたまへるさま、うへをた　ぐゐなくみたてまつるに、けやおとるともみえず、　あてにをかし。これにおぼしうつりなば、さまあし　げなることもありなんかし、いとかからぬひとを　だに、めづらしき人、をかしがりたまふ御心をと、ふ　たりばかりぞ、えはぢあへたまはざりける。ものが　たり、いとなつかしうしたまひて、れいならぬと　ころなど、なおもひなしたまひそ。女ひめぎみの　おはせずなりにしのち、わすらるるよなきに、いと　よく、おもひよそへらるるおほむさまをみれば、いと　あはれに、なぐさむ心も、いとあはれになん。おもふ　人はさらになきみに、むかしのおほむこころざし　なきやうにおぼさば、いとうれしくなんなど、か　たらひたまへば、いとものつつみして、またひなびた　る心のいらへ、きこゆべきこともなくて、としごろ、	以止於保可留於本武久之奈礼盤、止美爾毛　保之也利太末波禰盤、於支為太末部留毛、以止　久留之。々呂幾於保武曾、比止可佐禰盤可利　耳天於盤寸留保可希、八奈也可爾天遠可之　希奈利己乃幾美八比止乃於无不良无己止毛波川可　之計礼止、以止也者良可爾天、於保止幾寸支太　末部留幾美爾弖、於之以天良礼弖為太末部利。比　太為可美奈止乃以多宇奴連多留遠、毛天可久之天　比乃可堂爾曾武幾天、為太末部留左末、宇衣遠太　久為奈久美多天末川留爾、計也於止留止毛美衣須　安天爾遠可之。己礼爾於本之宇徒利奈者左末安之　希那留己止毛安利奈无可之、以止可々良奴比止遠　多爾女川良之幾人、遠可之可利太末不御心遠止不　太利者可利曾衣者知安部多末波左利利个留毛乃可　堂利、以止那川可之宇之太末比天、禮以奈良奴止　己呂那止、奈於无比奈之太末比曾。女比女幾美能　於者世須奈利爾志乃知、和春良留々與奈幾爾以止　與久於毛比與曾部良留々於保武左末遠美連波以止　安者禮爾奈久左武心毛、以止安者連爾奈无於无不　人者佐良爾奈幾美爾、武可之乃於保武己々呂左之　奈幾也宇爾於本左波、以止宇礼之久奈无奈止、加　太良比多末部波,以止毛乃川々美之天末太比奈比多　留心乃以良部,幾己由部幾己止毛那久天、止之己呂
。東屋・詞書二　　　　　　　　　　　現代語訳	「弖」は「天」とすることも　　　　　　　茶字は次項に在り「爾」は「尓」とすることも　　　　　　　「礼」は「禮」とすることも　　　　　　　「个」は「介」とすることも　　　　　　　「與」は「与」とすることも　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　使用字母へ
みぐし　随分と立派な量の御髪ですので、すぐには　　　　　　　　　　かな　すっかり乾かす事も叶いませんので、　起きて居るのですが、本当に辛そうなのですよ。　　　　　　　　ひとかさね　白い御召し物を一重ほど羽織っていらっしゃるお姿が、　灯火に照らされて、華やかで趣深いご様子であります。　この姫様は、人様の思いましても気後れ致しますが、　たいそう穏やかなご気性で、　おっとりし過ぎていらっしゃる姫君で御座いますので、　(そこへ)押し出される様にして座っておいでになられた。　ひたひがみ　額髪などが、随分と濡れているのをそっと隠して、　火の方に背中を向けて座っていらっしゃるお姿は、　この上、並ぶ者が無い程に拝見いたしまするに、　際立っているご様子は、決して　劣っているとも思われなく上品で風情があられる。「この様にお思い描かれたとしたなら、お行儀悪い様子に　映ることもきっとお有りになるのでしょうけどね。」「本当にこれ程ではない方ですらも、愛らしい人と、　興味深がり御心を（お寄せなさる）」と、二人して　ご遠慮致そうとしましたが、　そうする事がお出来に成らなかった。　せけんばなし　世間話を、大変懐かしそうにおやりになられて、「普段と様子が違う所など（もおありになりますし)、　（大君様と）勘違い為さりなさるなよ。　若い姫君が(この世に)いらっしゃらなくなられた後、　忘れられる生涯でも無いのに、全く自然に　程よく思い合われている御様子を見れば、　しみじみと心動かされて、安らかにと望む心も　随分と気の毒そうに思われる。　愛しい人は更に亡なられたことで、　昔の御志も無くなった御様子に、　お思いになられたとしてならば、　本当に嬉しう御座います。」　などと語り合いになられるので、何となく　大いに気兼ねして、再び田舎じみたお気持ちなど、　(恋心を) 　御申し上げるべき言葉も無くて、ここ数年来	おほんくし御髪；髪の毛。頭髪。文節によっては頭や首の意にもなる。髪の毛の敬語で「みぐし」とも言う。　ほ　や乾し遣る；乾かしてしまう。おほんぞ御衣；御召し物。衣服の敬称。　ほかげ火影；燈火の光。灯火で見える物の形や姿。おほどき；心が広く、ゆったりとしてこせこせしない。のんびりしている。おっとりしている。四段活用型動詞「おほどく」の連用形。かし；…ね。…よ。文末に付いて強く念を押す意を表す終助詞。もて隠し；そっと隠す。隠す。四段活用動詞「もて隠す」の連用形。「もて」は正にその動作を行ったとの点での強意の意の接頭語。そむ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　せ（そ）む　　　　　　おもむ背く；後ろ向きになる。背中を向ける。原義は「背向く」の意で「面向く」の対比語。たぐひな類無く；最も優れている。並ぶものが無い。比較にならない。ク活用型形容詞「類無し（比無し）」の連用形。けや；際立って他と異なっている様。あて貴に；上品で。優雅で。「身分が高い。高貴である。」などの意の形容動詞ナリ活用の連用形。　あ在りなん；きっとあるだろう。有るに違いない。ラ変動詞「有り」の連用形に確述完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」、更に推量の助動詞「む」の音便「ん」で、推量・予測の意を表す。　か斯からぬ；こうではない。こんなではない。これ程でない。副詞「斯く」にラ変動詞「有り」の付いた「斯くあり」の約「斯かり」の未然形「斯から」に打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」　はぢ　あ　　たまえ恥敢へ給はざりける；ご遠慮なさろうとして、そうすることがお出来にならなかった。ダ行上二段動詞「恥づ」の連用形「恥ぢ」に補助動詞「敢ふ」の未然形「敢へ」、更に尊敬の補助動詞「給ふ」の未然形「給は」、そして打消しの助動詞「ず」の連用形「ざり」、加えて過去の助動詞「けり」の係助詞「ぞ」を受けての連体形「ける」、「え…ず（ざり）」で不可能の意を表す。れひ　　　　　いつ例ならぬ；何時もと違っている。普段と様子が異なった。名詞「例」に断定の意の助動詞「なり」の未然形「なら」更に打消しの意の助動詞「ず」の連体形「ぬ」。おも　　な思ひ為し；思い込みなどで、それと決めてしまうこと。又は本人の心構え、或いは他人の受け止め方。思ひ寄そへ；考えあわせて関係づける。相通ずる処があるものと見なす。「思ひ寄そふ」の未然形。おほんこころざし（おこころざし）御志；心をお寄せする気持ち。恋心。　　　まさなん；正しくそれであると強調する意を表す。強意の係助詞「なむ」の音便で、後に述語「思す」・「侍り」などの連体形「思す」・「侍る」が省略されて、余情を込めた柔らかな物言いになる。ひな鄙びたる；。田舎風になっている。田舎めく。動詞「鄙ぶ」の連用形「鄙び」に、結果の存続の助動詞「たり」の連体形「たる」が付いて、その状態であること、又はその性状を供えている意を表す。