倭漢朗詠 (6寸6分×8寸1分)
倭漢朗詠集巻下 佛寺(仏事) 具引唐紙15(清書用44枚目)
極薄焦茶色(ごくうすこげちゃいろ) 一重唐草
本文解説へ 唐紙の柄は 一重唐草(重ね唐草(二重)の一重タイプ) 20.0cmx24.5cm |
|
光を当てて唐紙を強調しております。実際の見え具合は周りの薄くグレーに見えている程度と為ります。 極淡い色ですので、白色に近い見え方になる為、解説書によっては白色としてある物も御座います。 |
水色文字は使用字母、( )は詠者 |
輪之縁一。白 589 百千萬劫菩提種、八十三年功徳林。白 590 十方佛土之中、以二西方一為レ望。九品蓮臺 之間、雖二下品一應レ足。保胤 591 雖二十悪一兮猶引攝、甚三於疾風披二雲霧一。 雖二一念一兮感應、喩三之巨海納二涓露一。後中書王 592 昔忉利天之安居九十日、刻二赤栴檀一而 模二尊容一。今抜堤河之滅度二千年、瑩二紫 磨金一而禮二両足一。匡衡 593 浪洗欲レ消、鞭二竹馬一而不レ顧。雨打易レ破、闘二 衆レ沙爲二佛塔一 芥維一而長忘。保胤 594 念二極楽之尊一一夜、山月正圓。先二勾曲之曾一 (三朝、洞花欲レ落。勧学会斉名) |
因転法輪の縁とせむ。(白楽天) 589 百千萬劫の菩提の種、八十三年の功徳の林。 (白楽天) 590 十方佛土の中には、西方を以って望と為す。 くほんれんだい げほん いふと た 九品蓮台の間には、下品と雖も足んぬべし。 (慶滋保胤) 591 ひら 十悪と雖も猶引摂す、疾風の雲霧を披くよりも甚し。 一念と雖も感必ず応す、 これ けんろ い たと 之巨海の涓露を納るるに喩う。 (後中書王) 592 とうりてん あんご しゃくせんだん 昔忉利天の安居九十日、赤栴檀を刻んで 尊容を模す。今抜堤河の滅度より二千年、 紫磨金を瑩いて両足を禮してたてまつる。(大江匡衡) 593 浪洗いて消えなんとす、竹馬に鞭うちて顧みず。 あくたけい たたか 雨打ちて破れ易し、芥鶏を闘わしめて長く忘れぬ。 しゃ あつ つく 沙を衆めて佛の塔を爲る (慶滋保胤) 594 極楽の尊を念じたてまつること一夜、 まど こうきょく 山月正に圓かなり。勾曲の会に先だてること (三朝、洞花落なむとす。勧学会(紀斉名)) |
589 百千萬劫の菩提の種、八十三年の功徳の林。(白楽天) 無限大の数の菩薩の種(拠り所)、八十三年の積み重ねでできた功徳の林 590 十方佛土の中には、西方を以って望と為す。九品蓮台の間には、下品と雖も足んぬべし。(慶滋保胤) 十方に無量無辺に存在する諸仏の浄土の中に有っては西方浄土を以って最高の願いと為す。極楽浄土の九階級の蓮台の間に於いては下品の位と云っても不足有ろうはずはない。 591 十悪と雖も猶引摂す、疾風の雲霧を披くよりも甚し。一念と雖も感必ず応す、之巨海の涓露を納るるに喩う。(後中書王) 十悪と雖も尚、呼び入れて対面する、激しく吹く風の中、雲霧を開くよりも甚だしい(大騒ぎのさ中に物事のはっきりさせる事よりも非常識だ)。一念と雖も物事に触れて心を動かす感情は必ず在り得る、これは大海に少しばかりの水を注ぎ入れるのに喩えられる。 592 昔忉利天の安居九十日、赤栴檀を刻んで尊容を模す。今抜堤河の滅度より二千年、紫磨金を瑩いて両足を禮してたてまつる。(大江匡衡) 昔忉利天の修行の夏籠すること九十日、赤白檀を刻んで(帝釈天の)尊容を模作する。今開く堤河からの悟りを得て生死の苦を超越すること二千年、紫磨金を磨いて両足をそろえて献上して差し上げる。 593 浪洗いて消えなんとす、竹馬に鞭うちて顧みず。雨打ちて破れ易し、芥鶏を闘わしめて長く忘れぬ。 沙を衆めて佛の塔を爲る(慶滋保胤) 波が(昔のことを)洗い流し消してしまおうとしている、幼少時の思いに(自身を)戒め励ますことも顧みないでいる。雨に打たれ続けると破れ易いものである、くず鶏を戦わせる事で今後ずっと忘れない様にしよう。(良い物と悪いものを集めて仏の塔を創る。) 594 極楽の尊を念じたてまつること一夜、山月正に圓かなり。勾曲の会に先だてること三朝、洞花落なむとす。勧学会(紀斉名) 極楽の至尊を念じてお願い申し上げる事一晩、山上に出た月まさに満月である。勾曲の会の行われること三日前、中身のない花が今まさに落ちようとしている。(実を結ぶことの無いものが、今また朽ちて落ち果てようとしていることよ。) |
ひゃくせんまんこう 百千萬劫;百千萬は数の甚だ多い様、劫は宇宙の生成などに引用される程の極めて長い時間の単位。 ぼだいさった 菩薩;菩提薩埵の略。仏様に次ぐ位の者、悟りを求めて修行し、大慈悲の情を持って衆生を救う人。元々は釈迦が悟りを開くまでの前生を指したが、大乗仏教の隆興後はその教えを広める人の通称となる。 くほんれんだい うてな 九品蓮台;極楽浄土に在ると云われている蓮の葉の台。往生したものが座せる。生前の功徳により九等級の差別が有る。 十悪;身・口・意の三業によって作る十種類の罪悪。 とうりてん しゅみせん 忉利天;六欲天の第二、須弥山の頂上にある。中央に帝釈天の止住する大城を置き、中腹に四天王が住む。その四方の峰に各八天があり、併せて三十三天となる。 せんだん たきもの 栴檀;白檀の異称。香料植物として栽培もする。薫物としたり、仏像、器具などをつくる。 めつど 滅度;煩悩を断じて絶対的な静寂に達した状態。悟りをえて生死の苦しみを超越すること。 みがき ひ の し 瑩;装束の綾地に糊をしみこませて張らせ火熨斗をかけ、或は貝で擦って光沢を出したもの。平安時代に流行した。 くわんがく 勧学;学問を奨励する事。また特に浄土宗、真宗の本願寺派・興正寺派における最高の学階。 くわんがくえ 勧学会;平安時代に行われていた3月と9月の15日に催された行事で、天台宗の僧侶と勧学院の学生が相会して狂言綺語の罪を滅ぼすために法華経を講じ、その中より一句を題として詩歌を作った行事。964年~1122年まで。 このページの |