針切 重之の子の僧の集14             戻る 針切 一覧へ 
    生成り楮紙(素色)
こちらの色は、ぼかしの様にも見えますが元々は未晒しの繊維の色で、長年の変化により褪色、或は褐色化した物と思われます。素色(しろいろ)とは、漂白していない元の繊維の色でやや黄味の砥の粉色~薄香色の様な色。本来染めていない為、素の色のことを素色(しろいろ)といいます。。写真は薄目の薄香色でかなり褪色しているように見えます。
高い所より書出してあるのが歌、一段低い所より書出してあるのが詞書です。


素色(しろいろ)

『針切』 重之の子の僧の集14 (素色)12.6cmx21.9cm
実際は極淡い薄茶色です。
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。


             かな                                使用時母へ



 あられふる 宮まがくれの あさごほり、とくるほど

 こそ ひさしかりけれ


   月のひかりさむしといふだいをえはべりて

 冬のよの こほりとみゆる つきのいろは、みにしみて

 こそ さはりたりけれ









 霰降る 宮間隠れの 朝氷、解くる程

 こそ 久しかりけれ


   月の光寒しと云う題を得侍りて

 冬の夜の 氷と見ゆる 月の色は、身に染みて

 こそ 触りたりけれ







 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
一行は一行に、繰返しは仮名で表記
次項~残り半葉分の内の詞書の一部
 読みやすい様に所々に漢字、読点を入れております。
                       解説


 安良礼不留 宮末可久礼乃 安佐己本利、止久留本止

 己所 悲左之可利希禮  


     月乃悲可利左武之止以不多以乎衣波部利天

 冬乃與乃 己本利止美由留 川支乃以呂波、美仁之美天

 己曾 左盈利多利希禮









「乀」;3文字の繰り返し、「ヽ」;2文字の繰り返し、「々」;1文字の繰り返し
「爾」は「尓」とすることも
「个」は「介」とすることも
「禮」は「礼」とすることも
「弖」は「天」とすることも
「與」は「与」とすることも

解説

 
霰降る宮間隠れの朝氷、解くる程こそ久しかりけれ
霰の降り敷く朝では寺の仏堂の間の日陰に在る氷は、溶けてしまうまでの間はきっと時間のかかる事なのでしょうね!。(我が身の不遇に重ね合わせての歌)




    月の光寒しという題を、頂いて

 冬の夜の氷と見ゆる月の色は、身に染みてこそ触りたりけれ
まるで冬の夜空に浮かぶ氷の様に見て取れる月の色は、(その冷たさが)身に染みてこそ(手に)触れている感触が味わえるというものですよ。

月の光寒し;太陽の光(陽)は手に受けると暖かく感じるが、月の光は手に受けても暖かくは感じない。実際に月の光を受けてもその時の気温よりも冷たく成るわけではないのだが、相対的に太陽の光が温かいためそれに比べて冷たく感じられる。いわゆる体感の違いによる錯覚なのであるが、気持ちがそうさせてしまう。色から受ける感受性もそれらを助長させる。心の置き様で異なる感受性の豊かさを表現させようとしたもの。







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