本阿弥切 巻子本(古今和歌集巻第十 物名歌)第二紙拡大  戻る 本阿弥切 一覧へ

                                    写真をクリックすると拡大画面になります 昭和初期模本
青グレー・雲鶴文具引剥奪唐紙料紙一葉分

 本阿弥切 巻子本 部分 具引唐紙 青グレー 『雲鶴』 古今和歌集巻第十(物名歌)
雲鶴(うんかく)
清書用 臨書用紙 青グレー 『雲鶴』 へ
清書用 青灰

巻子本
本阿弥切 第二紙

(古今和歌集巻第十 物名歌)

解説及び
使用字母


 
 具剥奪唐紙『雲鶴紋(雲鶴)』(元は具引唐紙が経年使用により部分剥落したもので、具引剥奪唐紙ともいう。)

歌番号は元永本古今和歌集での通し番号(歌の一部が異なっている場合も同じ番号で記載)
( )内の歌番号は小松茂美氏監修「本阿弥切古今集」(二玄社発行)の通し番号(類推)
              かな                        使用字母          解釈(現代語訳)
うめ           よみびとしらず
429                     (426)
 あなうめに つねなるべくも みえぬかな
 こひしかるべき かはにほひつつ

かにはざくら       きのつらゆき
430                     (427)
 かづけども なみのなかには さぐられで
 風ふくごとに うきしづむたま

すもものはな
431                     (428)
 いまいくか はるもなければ うぐひす
 も、ものはながめて おもふべらなり

   

からもの花      きよはらのふかやぶ
432                     (429)
 あふからも ものはなほこそ かなしけれ
 わかれむことを かねておもへば

たち花
433                     (430)
 あしひきの 山たちはなれ ゆくくも
 の、やどりさだめぬ よにこそありけれ

をがたまのき      きのとものり
434                     (431)
 みよしのの よしののたきに うかびいづる
             

   あわをかたまの きわとみつらむ



宇免            與美比止之良寸
429
 安那宇免爾 川年奈留部久毛 美衣奴可奈
 己日之可流遍支 可者爾本日川々

加爾者佐久良        幾乃川良遊支
430
 可川个止无 奈美乃那可爾者 左久良礼天
 風不久己止爾 宇幾之川武多万

寸毛々乃花
431
 意末以久可 者留毛奈个礼盤 宇久日寸
 毛、々乃者奈可免天 於毛不部良奈利

    

可良毛乃花      支與者良乃不可也不
432
 安不可良毛 々乃者奈本己曾 可奈之希連
 和可礼无己止越 可年天於毛部盤

多知花
433
 安之悲支乃 山多遅者那連 由久々毛
 乃、也止利佐多女奴 與爾己曾安利个礼

遠可多末乃支       支乃止毛乃利
434
 美與之乃々 與之乃々多支爾 宇可悲以川留
               

   安和遠可多末乃 支和止美川良无



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431
 いまいくか 春なければ 鶯も、物はながめて 思ふべらなり

元永古今和歌集・公任本古今集
 いまいくか 春なければ 鶯も、物はながめて 思ふべらなり


432

 あふからも ものはなほこそ かなしけれ、別れむことを 兼て思へば  
 「ものはなほ」は「藻の花穂」か「藻の花ほ」の(ほ)と(を)の使い方か、それとも「ものは猶」とすべきか

元永古今和歌集
 あふからも ものは猶こそ かなしけれ、別れむことを 兼て思へば


434

 御吉野の よしのの滝に 浮かび出づる、泡をか玉の 来ゆとみ
らむ

元永古今和歌集
 御吉野の よしのの滝に 浮かび出づる、泡をか玉の 来ゆとみ
らむ

公任本古今集
 御吉野の よしのの滝に 浮かび出づる、
たまをかまたゆきとみらむ

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 解説右側は
 
使用字母
 う め
宇免;
元永古今では「むめ」


かにはざくら
樺桜;(
かばざくら
桜の一種白色小花。他に上不見桜(うわみずざくら)のこととも。
京都・新潟では若い花穂を塩漬けにする。


かず
潜く;
水中にもぐる。



清原深養父




 おがたまのき
小賀玉木;
モクレン科の常緑高木、白色小花で芳香がある。

紀友則



「和」は「由」と間違えたもの



藻の花;
沼や湖、川などに生える藻の花。白い小さな花で水面に浮かべて咲き、すぐに散ってしまう。


公任本古今集;
伝藤原公任筆古今和歌集


「禮」は「礼」とすることもあり。


「與」は「与」とすることもあり。





                 現代語訳                           解釈              解説及び使用字母

   物名歌

うめ(梅)
                       詠み人不明
429
「あな
うめに常なるべくも見えぬかな、恋しかるべきかは匂ひつつ」
ああ、梅の花に何時も同じであるように見えないかなあ、恋もそうなる運命であるかどうか影響を匂わせ続けて。
或は
穴埋めをした処で何時もと同じだとも思えないなあ、恋しがるべきなのでしょうか、艶やかに煌めく様子を漂わせ続けながら。



かにはざくら(樺桜)
                       紀貫之

430
「潜けども波の
中には探られで、風吹くごとに浮き沈む玉」
水中に潜らせても波の中には求められないで、風が吹く度に浮いたり沈んだりする玉の様であるよ。



すもものはな(李花)

431
「今幾か春もなければ
鶯も、物は眺めて思ふべらなり」
今日で何日?春も無ければ鶯でも、景色ばかり眺めて思っていたに違いない。



からもものはな(唐桃花)
                       清原深養父

432
「会う
からも物は尚こそ悲しけれ、別れむ事を予て思へば」
逢うにしてもそれでも尚、どことなく頼りない、別れるだろうことを予め思っていれば。



たちはな(橘)

433
「足引きの山
立ち離れ行く雲の、宿り定めぬ世にこそありけれ」
山から遠ざかって行く雲の様に、留まるところを定めない世の中に有るべきであったろう。



おがたまのき(小賀玉木)
                       紀友則

434
「御吉野の吉野の滝に浮かび出づる、泡
をか玉の消ゆと見つらむ」
吉野にある吉野の滝に浮かび出ていたのは、泡だったのか玉が消えたのかと見えてしまったのだろう。


 
もののなうた(ぶつめいか)
物名歌;物の名を意味とは関係なく詠み込んだ歌。
緑字部分

429
(ああ、梅の花が常に美しく咲いている状態で見えないかなあ、恋もそうあるのが相応しいのだろうか、何時も慕い続けてますよとの余韻を匂わせ続けて。)との意。
或は
(あの時の穴埋めをした処で何時もと同じだとも思えないなあ、何時も恋い慕っていますと恋しく見せるべきなのでしょうか、艶やかに美しい姿を匂わせ続けながら。)との意。

かにはざくら
樺櫻;山桜の一種ウワミズザクラの古称。「樺」は「櫻皮」とも書き白樺の古称。

430
(涙川の中に私の心を潜らせるけれども、あの人も心は波の中には探し求める事が出来なくて、まるで風が吹く度に浮沈を繰り返す浮き玉の様でありますよ。)との意。


431
(今日で何日だろう?春も来なければ鶯だって、囀る事をしないで景色ばかり眺めて何時に為ったら春は来るのだろうと思っていたに違いない。)との意。

べらなり;…ようだ。…に違いない。確定推量の意の助動詞「べし」の語幹「べ」に接尾語「ら」が付き、形容動詞型の語尾「なり」の付いたもの。


からもものはな あんず    からもも はな
唐桃花;杏の古称。「杏の花」とも書く。果実は食用や漢方薬に。

432
(あの人と逢う事にしたとしてもそれでも尚どことなく頼りない、別れて終うかも知れないと予想出来て終うのでね。)との意。

たちばな                         こうじみかん
橘;食用柑橘類の総称。「時軸の核の木の実」「柑子蜜柑」ともいう。時鳥と共に和歌にはよく詠み込まれ、昔を思い出すよすがとして象徴的に使われていた。

433
(山から立ち去って行く雲の様に暮らすところを一ヶ所に決める事無く、広く世間に認められるべきであったのだなあ。)との意。転勤するなり、旅するなりしてと今にして気づいた様子を歌にしたもの。

足引きの;枕詞。「山」に掛る。

世に有り;世間に認められる。評判が高い。

をがたまのき
小賀玉木;木蓮の仲間の常緑高木。長楕円形の葉で紫色を帯びた白い小花を開き、芳香がある。葉は香料ともする。古今伝授三木の一つ。

434
(吉野にある吉野の滝に浮かび出ていたのは、あれは泡だったのか光輝いて見えていた玉が消えたのかと思ってしまったのでしょうね。)との意。

つらむ;…たのだろう。確述完了の助動詞「つ」の終止形「つ」に推量の助動詞「らむ」のついたもの。

 

きのつらゆき

紀貫之;平安時代前期の歌人で歌学者でもあり、三十六歌仙の一人でもある。歌風は理知的で修辞技巧を駆使した、繊細優美な古今調を代表している。醍醐・朱雀両天皇に仕え、御書所預から土佐守を経て従四位下木工権頭に至る。紀友則らと共に古今和歌集を撰進する。家集に「貫之集」の他、「古今和歌集仮名序」、「大堰川行幸和歌序」、「土佐日記」、「新撰和歌(撰)」などがある。生年868年~没年945年頃

きよはらのふかやぶ
清原深養父;平安中期の歌人で、中古三十六歌仙の一人。清原房則の子で、清原元輔の祖父に当たり、清少納言の曾祖父でもある。官位は内蔵大允、従五位下。家集に深養父集がある。生没年未詳。

きのとものり
紀友則;平安時代前期の歌人で、三十六歌仙の一人。宇多・醍醐両天皇に仕え、従兄弟の紀貫之らと共に古今和歌集撰者の一人であるが、集の完成を見ずに亡くなる。格調高い流麗な歌風で、古今集をはじめ勅撰集に64首入集。家集に友則集が有る。生年845年頃~没年905年。


こきんでんじゅさんぼく
古今伝授三木;通常は「をがたまのき」、「めどにけづりばな」、「かはなぐさ」の三種類。
めどにけづりばな
蓍に削花;蓍萩に付けた削り花。蓍萩はマメ科の萩の仲間の小低木状の多年草で、草地や路傍に普通に生える。紫条のある白い小蝶型花をつけ、若芽は食用にもした。
かはなぐさ
川菜草;川に生えている食用となる水草の一種か。或は川菜のことか。川菜は日本各地の沿岸で普通に見られる緑色の海藻で、アオサの類の総称。乾燥してふりかけとしたり、みそ汁の具にしたりする。


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