本阿弥切・断簡(古今和歌集巻第十八 雑歌下)拡大5          戻る 本阿弥切 一覧へ

                                    写真をクリックすると拡大画面になります 昭和初期模本
極薄茶(白具引)・柄不明の唐草具引剥奪唐紙料紙

                                                                 

本阿弥切 断簡 具引剥奪唐紙 極薄茶(白具引) 『不明の唐草』 古今和歌集巻十八 雑歌下 柄不明の唐草(がらふめいのからくさ)  本阿弥切断簡
 (古今和歌集巻第十八 雑歌下)



解説及び
使用字母



清書用 臨書用紙 本阿弥切 薄茶 『花襷』
清書用 薄茶

現在左写真部分と同柄の臨書用紙は作成しておりません上掲の物を代用するか白の夾竹桃を代用して下さい。
作成したらお知らせ致します。
こちらの物は柄が判別できません。白無地(極薄茶に白具引)の具剥奪紙又は薄茶の花襷の物をご利用下さい。

 
歌番号は元永本古今和歌集での通し番号(歌の一部が異なっている場合も同じ番号で記載)          
( )内の歌番号は小松茂美氏監修「本阿弥切古今集」(二玄社発行)の通し番号(類推含む)  
               かな                       
使用字母            解釈(現代語訳)へ

   つくしにはべりけるときにまかりかよひて
   ごうちはべりける人のもとに京にかへり
   まうできてつかはしける

           きのとものり

999                    (991)
 ふるさとは みしごともあらず をののえ

 の、くちしところぞ こひしかりける


   女方いちどものがたりして、わかれての
   ちにつかはしける

 みちのきくなほがむすめ

   
1000                 (992)
    あかざりし そでのなかにや とめ

 てけん、我たましひの なき心ちする


   寛平御ときもろこしのはうがんに
   めされてはべりけるとう宮にさぶら
   ひて、をのこどもさげたうべけるつい
   でによみはべりける
   
           ふぢはらのただたう

1001                    (993)
 なよたけの よながきうへに はつしもの、

 おきゐてものを おもふころかな



                 
   川久之爾者部利个留止幾仁万可利
與日天
   己宇知者部利希留人乃毛止仁京爾可部利
   万宇天支天川可八之个留

             支乃止毛能利

1000
 布留左止波 美之己止毛安良春 遠乃々衣

 乃、久知之止己呂所 己日之可利希流


   女方以知止毛乃可多利之天、和可禮弖乃
   知爾川可者之个留

     

 美知乃久那本可武寸免

   
1001
    安可左利之 曾天乃奈可爾也 止女

 天个无、我多末之日乃 那支心知寸留


   寛平御止支裳呂己之乃者宇加无
   女左禮天盤部利个留止宇宮爾左不良
   悲天、遠乃己止毛左个多宇部希留川以
   天爾與美盤部利个留

              不知者良乃多々太宇

1002
 那與多个乃 與奈可支宇部爾 波川之毛乃、


 於支為天毛乃遠 於毛不己呂可那


                          ページトップ アイコン
 「爾」は「尓」とすることも。  
 「个」は「介」とすることも。
 「禮」は「礼」とすることも。
 「弖」は「天」とすることも。
 「與」は「与」とすることも。


999
 ふるさとは みしごともあらず をののえの、くちしところぞ こひしかりける

元永古今和歌集・                                      きの友則
 ふるさとは みしごともあらず をののえの、くちし所ぞ 恋しかりける

公任本古今集(991)                                     紀友則
 ふるさとは みしごともあらず をののえの、くちしところぞ こひしかりける


1000
 あかざりし そでのなかにや とめてけ我たましひの なき心ちする

元永古今和歌集・                                      陸奥御
 あかざりし そでのなかにや とめてけ、わがたましひの なき心地する

公任本古今集(992)
                               陸奥橘のくすなをがむすめ
 あかざりし そでのなかにや いりにけむ我たましひの なき心ちする

1001                                        藤原ただたう
 なよたけの よながきうへに はつしもの、おきゐてものを おもふころかな

元永古今和歌集                                 
藤原忠房
 なよたけの よながきうへに はつしもの、おきゐてものを おもふころかな

公任本古今集(993)                               
藤原忠房
 なよたけの よながきうへに はつしもの、おきゐてものを おもふころかな



                                                                   戻る 本阿弥切 一覧へ
一行目は第六紙

 解説右側は

  使用字母

左側のひらがな中漢字の意味の通じるものは漢字で表記


行の途中から次の歌が始まる











○部分は「す」の書き忘れか

















公任本古今集;
伝藤原公任筆古今和歌集


水色文字は他本との異なる箇所













水色文字「すめば」は見消ち





節;竹や葦などの茎の節と節の間



          現代語訳                                      解釈      解説及び使用字母へ 
 
   筑紫に赴任しておりました時に親しく通って
   碁を打っておりました人の元に都に帰ってから
   参上して差し上げた歌

                           紀友則

999
「故郷は見し如も非ず斧の柄の、朽ちし所ぞ恋しかりける」
故郷は見ての通りと云う訳ではないよ、時の経つのも忘れて過ごした場所が懐かしいことだよ。


   女友達が一度世間話などして、別れて後に
   差し上げた歌


陸奥のきくなほの娘

1000
「飽かざりし袖の中にや留めてけん、我魂の無き心地する」
飽きる事無くこの袖の中に留め置いていたでしょうか、いいえ留め置くことなど出来ませんよ、私は魂がまるで抜けてしまった心地ですのでね。



    寛平(宇多天皇)の御代に遣唐使の判官に
    呼び出されておりました東宮(後の醍醐天皇)のお傍にお仕えして
    いて、お付きの男たちをお退けになり遮りなされたついでに

    お詠みになりました歌

                        藤原忠とう

1001
「弱竹の節長き上に初霜の、起き居て物を思ふ頃かな」
撓った弱竹の細長い節間の上に初霜が降りているよ、起き上がって物思いに耽ってしまうものだなあ。



つくし

筑紫;筑前・筑後を合わせた地域で共に現在の福岡県の古称。古くには九州地方全体をもさしていた。元は大宰府の有る筑紫郡の小地名。


999

帰って来た故郷は昔の様ではないなあ、貴方と時の経つのも忘れて碁を打った筑紫の地が懐かしく恋しいことですよ。)との意を詠んだ歌。

おののえのくち
斧の柄の朽ち;ほんの少しだけの時間だと思っている間に長い年月を過ごしたとの意。「斧の柄の朽つ」の連用形。

をんながた
女方;女の側。女のいる所、特に女房の控える台盤所(詰所)。

1000
(私は何時までも飽きる事無く流した涙を拭って、この袖の中に留め置いて措くことが出来ていたでしょうか、いいえ留め置くことなど出来ませんよ。だって私は自分の魂が抜け出してしまって心が空っぽの様な状態なのですから)との意で詠んだ歌。何故泣いているんでしょうねえこのお方は?

当時、深く物思いをすると魂が肉体から遊離すると云う俗信が有った。

もろこしのはうがん

唐土判官;遣唐使の判官で、副使に次ぐ役所。「唐土」は日本から中国を指して呼んだ古称。

下ぐ;退ける。目上の人の前から引き下がらせる。

1001                    たわ
細くしなやかな竹がお辞儀をした様に撓んで細長い節と節との間の上に初霜が降りていますよ、こんなにも夜が長いと何だか目が覚めて起き上がるなどして物思いに耽ってしまうものですねえ。)との意。
なよたけ
弱竹の;枕詞。「よ」、「ふし」などに掛る。ここでは意味も通じる。
 よ
節;竹や葦などの茎の、節と節との間。「よ」は「夜」との掛詞。

おき;「置き」と「起き」との掛詞。

 

きのとものり                               うだ・だいごりょうてんのう        い と こ
紀友則;平安時代前期の歌人で、三十六歌仙の一人。宇多・醍醐両天皇に仕え、従兄弟の紀貫之らと共に古今和歌集撰者の一人であるが、集の完成を見ずに亡くなる。格調高い流麗な歌風で、古今集をはじめ勅撰集に64首入集。家集に友則集が有る。生年845年頃〜没年905年。


をの                                                   
斧の柄の朽つ;昔、中国の晋の王質が山中で仙人の囲碁を見ていた処、一局終わらない内に持っていた斧の柄が腐ってしまい、村に帰ると随分と長い年月が経って終ており、知人は皆死んでしまっていた。という故事によるもの。

だいばんどころ
台盤所;台盤を置いて措く所。宮中では清涼殿の一室で女房の詰所。貴族の屋敷では食物を調理する台所。また、貴族の妻の敬称である御台所の事も云う。

台盤;宮中や貴族の家などで、食物を盛りつけた盤を乗せておく台。四脚の食卓の様なもので、朱又は黒の漆塗りの縁が中よりも高く作られた台。

ふじわらのただふさ 
藤原忠房;平安前期の貴族で歌人でもあり、中古三十六歌仙の一人に名を連ねている。藤原興嗣の子で官位は従四位上、右京大夫。古今和歌集以下の勅撰集に17首が収められている。
うきょうのだいぶ
右京大夫;律令制で、京の都の西側半分で右京職として行政・訴訟・租税・交通などの事務をつかさどった役所の長官。

藤原忠とう;忠房の間違いか。或は「忠藤」若しくは「忠薹」か。「藤」は垂れ下がる「花房」を「薹」は「立房」で共に「房」を連想する。
薹;フキや野菜などで花を咲かせる為に蕾を房状に付けて立ち上がる時期の花茎全体のこと。



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本阿弥切 断簡 具引剥奪唐紙 極薄茶(白具引) 『不明の唐草』 古今和歌集巻十八 雑歌下