本阿弥切・巻子本(古今和歌集巻第十 物名歌)見返し部分拡大       戻る 本阿弥切 一覧へ                                    写真をクリックすると拡大画面になります 昭和初期模本 


青グレー・雲鶴文具引剥奪唐紙料紙第一紙部分

本阿弥切 部分 具引剥奪唐紙 青グレー 『蓮唐草』 右側白部分が見返し料紙
雲鶴(うんかく)
清書用 臨書用紙 本阿弥切 青グレー 『雲鶴』 料紙
具剥奪唐紙
『雲鶴』


巻子本
本阿弥切

古今和歌集巻第十 物名歌


解説及び
使用字母


 具剥奪唐紙『雲鶴紋(雲鶴)』(元は具引唐紙が経年使用により部分剥落したもので、具引剥奪唐紙ともいう。)

歌番号は元永本古今和歌集での通し番号(歌の一部が異なっている場合も同じ番号で記載)
 ( )内の歌番号は小松茂美氏監修「本阿弥切古今集」(二玄社発行)の通し番号(類推)              解釈(現代語訳)




 うぐひす

       ふぢはらのあつゆき
424                       (422)
 心から 花のしづくに そぼちつつ、うぐひ
 すとのみ とりのなくらむ


 ほととぎす
425                       (423)
 くべつほど ときすぎぬれや まちわび
 て、なくなるこゑに 人をとよむる


 うつせみ
426                       (424)
 なみのうつ せみればたまぞ みだれたる、ひ
 ろはばそでに はかなからむや

見返し料紙(金銀中小切箔ノゲ砂子振り)
約半分の大きさです(右側部分を割愛しております)
 


 宇久比寸

         不知者良乃安川由幾
424
 心可良 花乃之川久爾 所本知川々、宇久日
 寸止乃美 止利乃那具良无

 保止々支寸
425
 久遍川本登 々支寸支奴禮也 万知和日
 天、奈久那留己衛爾 人遠止與武流

 宇川世三
426
 奈三乃宇川 世美礼者多末所 美多礼多留、日
 呂者々曾天爾 盤可那可良无也

「禮」は「礼」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「與」は「与」とすることも。

           現代語訳                         解釈          解説及び使用字母

   うぐひす(鶯)
                     藤原あつゆき
424
「心から 花の雫に 濡ちつつ、
とのみ 鳥の鳴くらむ」
心から花の雫に濡れながら、鶯だとばかりに鳥が鳴いているよ。



   ほととぎす(時鳥)
                     詠み人不明

425
「苦べつ
ほど 時過ぎぬれや 待ち侘びて、なくなる声に 人を響動むる」
いったいどれほどの時が過ぎれば待ちわびて気をもみ、聞こえなくなった鳴声に今度は私が泣き叫ぶのだろうか。



   うつせみ(空蝉)
                     滋春
426
「波の
うつ せみればたまぞ 乱れたる、広幅袖に 儚なからむや」
波の打つ瀬を見れば水飛沫が乱れ飛んでいるよ、広幅袖にはどうして儚く感じているのだろう。


もののなうた
物名歌;物の名を意味とは関係なく詠み込んだ歌。
緑字部分

藤原あつゆき;元永本では敏行

424
(雨上がりか、霧の中か、花の雫にしっぽりと濡れながら、其れだとはっきり判る鳴き声で鶯のさえずりだけが心地よく響いてくることよ!。)との意。


ほととぎす;時鳥・杜鵑・不如帰・沓手鳥・霍公鳥、等の当て字。
初夏に渡来し秋に南方へ帰る。夏を知らせる鳥として親しまれ多くの詩歌に詠まれた。恋心を掻き立てる鳥や冥途からくる鳥としても。

425
(辛くなってしまうほどの長い時間が過ぎ、待ちくたびれて声さえ出せなくなってしまった。けたたましく響き渡る時鳥の声が私の心をどよめかせるのだ。)との意。

なくなる;「無くなる」と「鳴くなる」の掛詞。
                          
うつしおみ
うつせみ;現人。この世に存在する人。原義は現臣。空蝉は当て字で、平安以降歌に詠まれるようになり、蝉の抜け殻の意が現れて空しさを象徴する手法として用いられた。

426
(浅瀬で波打つごとに水飛沫が飛び散っているよ、まるで私の涙の様に、涙をたっぷりと受け止められる程の幅広の袖なのに、どうして頼りなく空しく感じてしまうのでしょうか。)との意。



うぐひす;「穿ぐ秘す」の意で、春を隠すことに穴をあける=春を告げる。

ふじはらのあつゆき

藤原致行;詳細不明

ありわらのしげはる
在原滋春;平安時代前期の歌人で、在原業平の次男として、在次君とも云われていた。一説によると「大和物語」の作者であるとも伝えられている。生没年未詳。

やまとものがたり
大和物語;平安時代の物語であるが作者は不詳、951年頃の成立。173編の小説話からなっており、前半部分には伊勢物語の系統(後撰集時代の歌人の贈答歌を中心としたもの)をひいた歌物語から成り立っており、後半の約40編には歌に結び付いた伝説的な説話の集成となっている。その後幾度か増補されている。

 



 解説右側は
 
使用字母


「爾」は「尓」とすることもあり。


「禮」は「礼」とすることもあり。


「與」は「与」とすることもあり。

うつせみ
現人
この世に存在する人。現世。
現臣
(うつしおみ)
の転じたもの

空蝉は当て字
蝉は地上に出て7日の命、儚い例えに充てられたもの。



鶯;春告げ鳥
春だよとばかりに鳴く






















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