金沢本万葉集 (7寸1分5厘×8寸9分5厘)       戻る 金沢本万葉集 一覧へ 
 万葉集・巻六 断簡 具引唐紙 『丸唐草』(清書用極薄茶色)

極薄茶色(ごくうすちゃいろ) 丸唐草(二重復丸唐草)  

古筆臨書 粘葉本金沢万葉集 料紙 具引唐紙 『丸唐草』







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唐紙の柄は

丸唐草(二重復丸唐草)

前田家所蔵の万葉集巻六の断簡
十二葉のうちの一部










21.6cmx27.1cm 
良く見ないと判らないぐらい柄がはっきりしておりません。実際の見え具合は中央上側の薄くグレーに見えている程度と為ります。 水色文字は使用字母

      

   十年
元興寺之僧嘆歌一首

    石上乙丸卿配
土佐國時歌三首 并短歌

    秋八月右大臣橘家宴歌四首

       

   十一年
天皇遊狩高円野之時、獲二レ堵中小獣

    擬
御在所大伴坂上郎女作歌一首

       

   十二年
冬十月依太宰少貳藤原廣嗣謀反發軍

   幸于伊勢之時

    川口行宮内舎人大伴家持作歌一首






908

 毎年如 是裳見壯鹿 三吉野乃、清河内之 多藝

 津白浪

 としごとに かくも見てしか みよしのの、き

 よきかうちの たぎつしらなみ

909
 山高三 白木綿花 落多藝追、瀧之河内者 雖見

 不飽香聞

 やまたかみ しらゆふはなに おちたきつ、た

 きのかうちは みれとあかぬかも





         ぐわにこうじ  ほふし なげ
  十年戌寅、元興寺の僧の嘆く歌一首
  いそのかみおと ま ろ きゃう  とさのくに   なが
  石上乙麻呂卿の土佐国に配さへし時の歌三首
  
ならび
  并に短歌

  秋八月、右大臣橘家に宴せる歌四首

             
たかまどのの  みかり      かきなか
 十一年巳卯、天皇高円野に遊狩しましし時、堵中に
  
のが           とり  おほましますところ たてまつ なぞら
  遁れ走れる小獣を獲て、御在所に献るに擬へて

  大伴坂上郎女の作れる歌一首
     
かのえたつ      だざいのしょうに    ひろつぐ
 十二年庚辰冬十月、太宰少貳藤原廣嗣が反を
 
はか    おこ             いでま
 謀り軍を発せるに依りて、伊勢に幸しし時
     
かりみや   う ど ね り
  川口行宮にて内舎人大伴家持の作れる歌一首


908
 年毎に斯くも見てしかみ吉野の、清き河内のたぎつ

 白波


 止之己止仁 可久毛見天之可 見与之能々、幾

 与支可宇知能 多幾徒之良那美


909
     し ら ゆ ふ              かふち
 山高み白木綿花に落ちたぎつ、瀧の河内は見れど

 飽かぬかも

 也末多可美 之良由不者那爾 於知多幾徒、多

 幾能可宇知波 美礼止安可奴可




 う ど ね り           なかつかさしょう
内舎人;律令制のもとで、中務省に属する官人。名家の子弟を選び天皇の雑役や警護に当たる。

 かふち         
河内;こうち。川の中流に沿う小平坦地。川の淵の約とも。

たぎ
激つ;水が激しく沸き返る。激流に砕け散る白波の様子。

し ら ゆ ふ は な
白木綿花;白木綿を花に見立てて、滝の水や波の白さを形容したもの。


 


               
拡大図 小唐草(極薄茶色)  
古筆臨書 粘葉本金沢万葉集 料紙 具引唐紙 『丸唐草』