金沢本万葉集 (7寸1分5厘×8寸9分5厘)       戻る 金沢本万葉集 一覧へ 
 万葉集・巻四 具引唐紙 極薄茶色『小菊唐草』第三十五紙(清書用極薄茶色)

極薄茶色(ごくうすちゃいろ) 小菊唐草  

古筆臨書 粘葉本金沢万葉集 料紙 具引唐紙 『小菊唐草』









 本文解説へ




唐紙の柄は

小菊唐草









21.6cmx27.1cm 
良く見ないと判らないぐらい柄がはっきりしておりません。実際の見え具合は中央上側の薄くグレーに見えている程度と為ります。 水色文字は使用字母


615
 わがせこは あひおもはずとも しきたへの、

 きみがまくらは ゆめにみえこそ

616
 剱大刀 名後雲 吾者無 君尓不相而 年之経無礼者


 つるぎたち なのおしけくも あれはなし、

 きみがあわずて としのへゆけば


617
 後蘆邉 満来塩乃 弥益 在念君我之 忘金鶴


 あしべより みちくるしほの いやましに、

 おもふがきみが わすれかねつる


  大神女郎、贈
大伴宿禰家持歌一首

618

 狭夜中尓 友喚千鳥 物念統 和備居時二 鳴打苧名

 さよなかに ともよぶちどり ものおもふと

 わびをるときに なきつつもとな


  大伴坂上郎女怨恨歌一首并短歌

619
 押照 難波乃菅之 根毛呼呂尓 君之聞而手 年

 深 長四云者 真十鏡 磨師情乎 緩手師 其

 日之極 浪之共 靡玉藻乃 云々 意者不持 大船乃



615
 和可世己波 安比於毛者寸止无 之幾多部能、

 幾見可末久良波 由女爾美恵己所

616
  
つるぎたち         あれ
 剱大刀名の惜し気くも吾は無し、

 君に会わずて年の経ぬれば

 川留幾多知 奈能遠之計久毛 安礼者奈之、

 幾見可安者寸天 止之能部由計波

617

   あしべ
       しを  いやまし
 葦辺より満ち来る潮の弥増に、念へか君が忘れかねつる

 
安之部与利 美知久留之遠能 以也末之爾、

 於毛不可幾見可 和寸礼可禰川留

  おほみわ
  大神女郎、大伴宿禰家持に贈れる歌一首

618               
 小夜中に友よぶ千鳥もの思うと、わびをる時に鳴きつつもとな

 左与那可爾 止毛与不知止利 毛能於毛不登、

 和比遠留止幾爾 奈支川々毛止奈


 
おほとものさかのへのいらつめ  うらみ       ならび
  大伴坂上郎女、怨恨の歌一首并に短歌


619
     なにわ  すげ           きこ
 おし照る 難波の菅の ねもころに、君が聞して 年深く
                
こころ         
 長くし言へば まそ鏡 磨ぎし情を 許してし その日の極み
    
むた なび
 波の共 靡く玉藻の かにかくに 心は持たず 大船の


いやまし
弥益に;いよいよ益々。弥が上に。

 さよなか

小夜中;夜中。真夜中。「さ」は接頭語。

ねもこ
懇ろ;心遣いの細やかな様。親切丁寧。互いに親しみのある様子。男女が秘かに情を通じること。

むた
共;「の」又は「が」を介して(・・・と共に)の意を表す。

かにかくに
云々;あれこれと、とやかくと。いろいろに。

 


               
拡大図 小菊唐草(極薄茶色)  
古筆臨書 粘葉本金沢万葉集 料紙 具引唐紙 『小菊唐草』