香紙切 (巻第七 恋上 断簡)         戻る 香紙切 へ   
    丁子染紙(丁子茶色)
こちらの色は、ぼかしの様にも見えますが元々は単色の香染で、長年の変化により褪色、或は脱色した物と思われます。丁子茶色とは、丁子の煮汁で濃く染めた色でやや黄茶味の強く出たような色。ほんのりと丁子の香りのするような色のこと。

丁子茶色
(ちょうじちゃいろ)
香紙切 麗花集 巻第七 恋上 (丁字茶色) 解説へ11.3cmx20.5cm
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。

          かな
         使用時母           現代語訳へ

 麗花集巻第七 戀上

     題不知   山邊赤人

 あはぢしま とわたるふねの かぢまに

 も、我はわすれず 君をしぞおもふ



        だいしらず  あすかむすめ

 一人ふす あれたるやどの とこのうらに、あはれ

 いくよの ねざめなるらん

  


 麗花集巻第七 戀上

      題不知  山邊赤人

 安者遅之万 止和多留不禰乃 可知万二

 毛、我者和寸礼寸 君遠之曾於毛不



         多以之良寸  安寸可无寸女

 一人不数 安礼多留也止乃 止己乃宇良爾、安者礼

 以久與乃 年左女奈留良无



 
           現代語訳
            解説             使用字母へ


  麗花集巻第七 恋上

      題不知   山辺赤人

お題不明              山部赤人

 『淡路島門渡る舟の楫間にも、我は忘れず君をしぞ思ふ』

淡路島の海峡部分を渡る舟の櫓を漕ぐ間でさへも、私は忘れる事無くずっと貴方の事を考えておりましたよ。


      題不知  飛鳥女

 『一人臥す荒れたる宿の床の内に、哀れ幾夜の寝覚めなるらん』

一人で横になるみすぼらしい我が家の寝床の中で、淋しい事だと何度の夜を明かしたことでしょうか。


 


(淡路島の短い海峡部分を渡る舟の櫓を漕ぐ僅かな時間でさへも、片時も忘れる事無く、私はずっと貴方の事を想い続けておりましたよ。)との意。

 とわた 
門渡る;海、河などの幅の狭い海峡部を渡る。
 かじま
楫間;漕いでいる楫の動きが止まる程の、ほんの僅かの間。

しぞ;上の語(ここでは君)を強調する働きがある。
「し」は間投助詞「ぞ」は係助詞。



(一人きりで横になり気分まで落ち込みながら、手入れも行き届いていない我が家の、浦になる程もの涙の流れる寝床の中で、実らぬ恋を思い,
みじめにもどれだけの夜を明かしたことでしょうか。)との意。

うら;「内」と「浦」との掛詞。


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やまべのあかひと
山部赤人;奈良時代初期の万葉歌人で、三十六歌仙の一人。古来より、柿本人麻呂と共に歌聖と称されている。下級官吏として宮廷に仕えていたようで聖武天皇との行幸供奉の作品が多い。優美・清澄な自然を詠んだ叙景歌に優れ、万葉時代の代表的な自然詩人で、「万葉集」に多くの歌が収められている(長歌13首、短歌38首)。

床の浦波;床を浦に見立てて、そこでこぼす涙を波に例えて云う語。打寄せる波の如く、止めど無く溢れ出る涙の意。

飛鳥女;詳細不詳。明日香村の娘の意か。

 

個人蔵