香紙切 (巻第四 秋上 断簡)
丁子染紙(素色或は薄香色)
秋毎に大宮人の来る野辺は、さがのこととや花を見る覧
こちらの色は、未晒しの繊維そのものの色の様にも見えますが元々は淡色の香染で、長年の変化により褪色、或は脱色した物と思われます。薄香色とは、香色を更に薄くしたような色で、有るか無いかの程度の色。そこはかとなく丁子の香りのするような色のこと。
素色(しろいろ)
12.2cmx20.9cm
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。
かな |
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あきごとに おほみや人の くるのべは、さが のこととや 花をみるらん あきのよ、をぎふくかぜをきき て よ し と き をぎのはを そそやあきかぜ ふきぬなり こぼれやしぬる しらつゆのたま 御屏風に、たびびとはつかりき |
安幾己止仁 於保見也人乃 久流乃部盤、左可 乃己止々也 花遠身留良无 安幾乃與、遠幾不久可世遠支々 天 與之止支 遠幾乃者遠 所々也安幾可世 不幾奴奈利 己本礼也之奴留 之良川遊乃多万 カ 御屏風爾、多比々止者川可利幾 |
現代語訳 |
解説 使用字母へ |
秋毎に大宮人の来る野辺は、さがのこととや花を見る覧 秋毎に宮中の人々が来る野辺は嵯峨の事だとか云うそうですよ、早速行って花を見るとしましょうか。 秋の夜、荻吹く風を聞きて 嘉言 荻の葉を楚々や秋風吹きぬなり、零れやしぬる白露の玉 荻の葉の間を楚々とした音を立てながら秋の風が吹き抜けて行きましたよ、零れ落ちて仕舞いましたね白露の玉が(まるでぱあっと砕け散るようにして)。 御屏風に、旅人はつかりき |
(秋毎に宮中の人々が来る野辺と言えば、もはや習慣となっている嵯峨の事だとか云うそうですよ、我々も早速行って花を見るとしましょうか。)との意。 さがのこと;「性の事」習わし、習慣の事。 「祥の事」兆しの事。めでたい標。 「嵯峨の事」高低が在って険しいこと。 或は花、紅葉の名所「嵯峨の事」か はぎ 花;秋に野辺で愛でる花と言へば萩の花 (荻の葉の間をさらさらとした音を立てながら秋の風が吹き抜けて行きましたよ、途端に白露の玉がまるでぱあっと砕け散るようにして飛散って零れ落ちてしまいましたよ。)との意で、荻風の音に振り向くとキラキラと飛散る珠に感動した様子を詠んだ歌。 おぎ 荻;イネ科の多年草。ススキに似る。 ススキは原野に多いが、荻は水辺に多く群落を作る。 そ そ 楚々;風が穏やかに心地よく吹く様。 またその折、軽いものが触れ合って立てる幽かな音 ページ ![]() |
おおえのよしとき 大江嘉言;平安時代後期の学者で歌人。文章生を経て対馬守となり任地にて没。源道済らとの親交も知られ家集に「大江嘉言集」がある。 |
逸翁美術館蔵