寸松庵(寸松庵色紙・古今和歌集抄本) 巻五・秋下      戻る 寸松庵色紙 一覧へ
 具引唐紙『花襷紋』(薄渋黄土色)「花見つつ」 田中親美氏作模写本

こちらの寸松庵色紙は明治末期の初版複製本では間に合わず、大正初期に増版されたもの。
歌を右に寄せて左側の空間を大きくとっている。当初この部分には次の歌を書くつもりであったのかもしれず、左下側には文字を消して修正した様な跡が見受けられる。継色紙のように項を渡って書くことも予定していたのであろうか。それとも、ここには元々歌が書かれていて後世の人が歌の途中で途切れているのを嫌って、一枚の茶掛けとして美しく見せる為に余分な文字を消し去ったものであろうか。




                かな                                水色文字は使用時母

寸松庵色紙 秋下 『花見つつ』 (薄渋黄土色)
12.6cmx12.5cm
 

  花見つつ ひとまつと

  きの しろたへの、そで

  かとのみぞ あやまた

         れける


      
使用時母

  花 見 川々 悲止末川止

  幾乃 之呂多部乃、所天

  加止乃美曾 安 也 末多

            礼 个 留


                          
 
274
 花見つつ人待つ時の白妙の、袖かとのみぞ過たれける。

花を見ながら人を待っている時には、ひょっとしたらあの人の白妙の袖かと思い違いをしてしまう様なそわそわした気分ですよ。


白妙の;枕詞。「衣」「袖」「袂」「帯」「襷」「紐」「ひれ」などにかかる。また「雪」「雲」などにも。

    
かじ
白妙;穀(楮類)の木の白い皮の繊維で織った布。




薄渋黄土色具引唐紙・白雲母『花襷紋』(全面)

 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
 一行は一行に、繰返しは仮名で表記



歌を右に寄せて、左の空間を大きくとっている。当初、この部分に歌二首を書くつもりであったのか。
左側には文字の消し跡の様なものが残されている。


参考;歌275 (とものり)
(ひともとと おもひし花を おほさわの、いけのそこにも たれかうゑけむ)





写真では確認し辛いが、花襷紋が施されている。

薄渋黄土色;黄茶、黄などとすることも。
 右の写真はこの箇所に該当する清書用臨書用紙(左は上製)
これまでの清書用には入れられていない柄色(上製のみ)
(普通清書用では同色柄無の物を利用してください、右側)
     上製       普通清書用
  寸松庵色紙 具剥奪唐紙(薄渋黄土色)『花襷』 清書用 臨書用紙(上製) 拡大へ 寸松庵色紙 具剥奪唐紙(薄渋黄土色) 清書用 臨書用紙 拡大へ
清書用 薄渋黄土色具剥奪唐紙・白雲母『花襷紋』

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