三十六人集(西本願寺本)
躬恒集 染紙『全面金銀砂子振』(清書用臨書用紙)         戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ

三十六人集 染紙 『全面金銀砂子振』 (躬恒集)   左の臨書用紙では隈取はしておりません。全面に金銀の砂子を鏤めたものとなります。
参考写真です
躬恒集 染紙 『全面金銀砂子振』 書拡大へ
唐紙料紙の書手本
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全面金銀砂子振・染紙(躬恒集)・(半懐紙)
花鳥折枝金銀袷型打(松枝・柳・紅葉・草花・千鳥など)
(現物は淡茶染紙の隈取金銀砂子振ですが、写真は通常の染紙全面砂子振で代用品です。) 
 
 
三十六人集 染紙 『全面金銀砂子振』 (躬恒集) 拡大 
 写真は代用品です。

薄黄茶色染に
全面金銀砂子振をして花鳥折枝銀燻銀袷型打を施したたもの。
 全面金銀砂子振・染紙(躬恒集)・(半懐紙)
花鳥折枝金銀袷型打(松枝・柳・紅葉・草花・千鳥など)
(現物は淡茶染紙の隈取金銀砂子振ですが、写真は通常の染紙全面砂子振で代用品です。)
 


 書手本

三十六人集 染紙 『隈取』 (躬恒集) 書手本
 躬恒集 染紙(隈取金銀砂子振) 『隈取』 書手本 縦6寸7分、横1尺5分5厘
第八紙                              

歌番号は躬恒集での通し番号              青色文字は使用字母
79
 はるがすみ よしののやまを たちこめて、こころ
 よわくや ゆきをふらする

   なつ

80
 つきみつつ をるすべもなき わがやどに
、いとども
 きなく ほととぎすかな

   四月やまのゆきをみる

81                 
 しらゆきも まだきひずけり やまざとを、
 いづばかりには はるをしるらむ

   なつ

82 
 つきみつつ まつとしらすや ほととぎす、こてはたほかに
                  ゆきてなくらめ


 さうのうた
83
 としをへて おもひおもひて
 あひぬれば、月日のみこそ うれしかりけれ

84
 よとともに ひとをわすれぬ むくゐこそ、けふはうれしく
                         あひもそむらめ

85                 
 みつつわれ なぐさめかねつ さらしなの、
おばすてやまに てりし
                            つきかも

   あき
86
 あまの川 ふねさしわたす さをしかの、しがらみふする あきはぎのはな

87
 くらべみむ わがころもでと あきはぎの、はなのいろとは いづれ
                             まされり

88
 あらたまの としふりつもる やまざとに、ゆき
                  あかれぬは わがみなりけ○

    春
89
 あひおもはぬ はなにこころを つけそめて、
はるのやまべに な
                           かゐくらしつ


79
 盤留可須美 與之乃々也万遠 多知己女天、己々呂
 與和久也 由支遠不良寸ル

   那川

80
 徒支美徒々 遠留須部毛那支 和可也止仁
、以止々母 幾那久 本止々支寸可那

   四月也万乃由支遠美留

81                 
 志良由支毛 万多支比寸希利 也万左止遠、
 伊川者可利爾盤 波留遠之留良無

   那徒
82
 徒支美川々
万川止之良寸也 保止々幾春、己天盤多保可
              由支天那久良女

  左宇乃宇多

83
 止之遠部天 於毛比々々々天 
 安比奴礼盤、月日乃身己曾 宇礼之可利希礼

84

 夜止々母爾
比止遠和寸礼奴 武久為己曾、計不盤宇礼之久
                         安比母所无良女

85                  
美徒々和礼 那久左女可年徒 左良之那乃、遠八寸天也万爾 天利之

                              川幾可裳


   安支
86
 安万乃川 不禰左之和多寸 左遠之可能、
之可良美不寸留 安支八幾乃八那

87
 久良部美武 和可己呂毛天止 安支盤幾乃、盤那乃以呂止八以川礼
                              万左礼利

88
 安良太万乃 止之不利川毛留 也万左止仁、由支
                 安可礼奴盤 和可美那利計□


    春
89
 安比於毛八奴 盤那爾己々呂遠 徒計所女天、盤留乃也万部爾那

                           可為久良之徒


「个」は「介」とすることも。        □は不明文字「けり」か、「計」は何とか読み取れるが「り」は「利」かどうか不明。
「爾」は「尓」とすることも。
「弖」は「天」とすることも。
「與」は「与」とすることも。

79
吉野山を一面の春霞が覆いつくしているが、春だというのにいったい何に絆されて雪を降らせているのか。

心弱く;情に脆くて心が臆しやすい。

80                                       や ど
月見をしながらぼんやりとしていると、住処とする手立ても判らず我が宿(屋外)に、幾度となく来ては鳴く時鳥もいるのだなあ。

いとど;さらにいっそう。ますます。古来時鳥の鳴く声は恋心を募らせるものであった。

81
白雪も未だに乾いていない(濡れている)ので、出て行く頃には山里は、春を感じるようにはなっているでしょう。

82
月を見ながら(物思いに耽っていると誰かが私を)待っていると知らせたいのだろうか時鳥よ、此処ではしとやかにして、(他に)行って鳴けばよい。

83
歳を重ねて深く思い悩んで逢ってみれば、(そのあれこれと思い悩んでいた)月日だけが(今となっては)快く楽しい日々でしたよ。

84
(俗世を捨てた身であるから)世の中と共に人々を忘れぬ報いこそが、今日は嬉しくより間柄も深まることでしょうね。

85
見ていながら私には慰める事も出来ないでいる、まるで更科の姨捨山に照る月の様である。
(昔、更砂に住む男が親代わりの姥を山の嶺に置いて逃げ帰ってきたが、折からの名月に照らされて後悔の念に堪えず、「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」と口ずさみ、翌朝姥を連れ帰ったと云う棄老伝説がある。)

86
天の川で棹さして舟を渡らせるかの如く、牡鹿(の鳴く声が)が柵の様に潜んで隠れている秋萩の花(の株元より響き渡ってくるようだ。)

87
私の衣の袖と秋萩の花の色とは、どちらが優れているのか眺め比べてみようではないか。
(表面では衣手と秋萩の花の色とを競っているが、その内面では衰えて往く自分の色気を悲しむ心を詠んでいる。)

88
年の初めに雪の降り積もる山里で、互いに(別々の方向に)別れて行ってしまった(と思っていた)のは私の方だけであったのだ。

89
(心ならずも)思いもよらない花に心を深く寄せて、春の山辺に長居をしてしまいましたよ。




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