三十六人集選集 赤人集 破り継『天の川』(清書用臨書用紙)  戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ

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破り継 『天の川(二又)』(赤人集)・(半懐紙)
文人松を配した松原に千鳥が舞っています。
二つの流れが合流する地点《逢瀬》を現しております。
 
 
 
三十六人集 破り継 『天の川』 (赤人集) 拡大 
判り辛いですが、川岸に銀泥で降積もった雪が描かれております。春が待ち遠しい様子が感じとって頂けますでしょうか 
破り継 『天の川(二又)』(赤人集)中洲部分
松も千鳥も銀型打ちです。
向こうの瀬には、騒めく白波を岸には降積った雪を表現しているのが
お解り頂けますでしょうか。
 
 



赤人集 書手本

三十六人集 破り継 『天の川』 (赤人集)  解説・使用字母 
 破り継 『天の川(二又)』(赤人集)書手本 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第十四紙

歌番号は赤人集での通し番号              青色文字は使用字母

116

 はるののに あさるきぎすの つまごひに
 おのがありかを ひとにしられつつ

117
 ひさかたの あまのはやまに このゆふ
 べ、かすみたなびく はるたちくらし

118
 あづさゆみ はるはやちかく やどりせ
 ば、つぎてさくらむ うぐひ○のこゑ

119
 うちなびき はるさりくれて し
 かすがに、そらくもりあひ ゆきは
             ふりつつ

120
 むめのはな さきちりぬらし しかす
 がに、しらゆきには ○○○○○○○

121
 まきもくが ひばらにたてる はる
 がすみ 、○○○○○○○ ○○○○○○○



116

 者留乃々仁 安左留支々須乃 川末己日仁
 於乃可安利加遠 日止爾之良礼川々

117
 日左可多乃 安末乃者也末耳 己乃遊不
 部、加春美多那飛久 者留多知久良之

118
 安徒左由美 者留波也知可久 也止利世
 者、徒支天左久良无 宇久比□乃己恵

119
 宇知那飛支 者留左利久礼天 志
 可須可仁、曾良久毛利安比 由支波
             不利徒々

120
 武女乃者奈 左支知利奴良之 々加春
 可耳、志良由支仁者 □□□□□□□

121
 末支毛久可日者良仁多天留波留
 可春三、□□□□□□□ □□□□□□□


 

山部赤人;三十六歌仙の一人で、奈良初期の万葉歌人。柿本人麻呂とともに歌聖と称されおり、自然を詠んだ歌が多い。また、下級官吏として仕えていたらしく、行幸供奉に関するものも多い。

116

春の野に漁る雉子の妻恋に、己が在処を人に知られつつ。(万葉集巻第八、大伴宿祢家持)
春の野で餌を探し求めている雉が妻を慕って、自分の居場所を人に知られ知られしながら鳴いていることだこと。
きぎす きじ
雉子;雉の古称。
                   
はるぞうか あきぞうか
歌117から後ろは万葉集巻第十からの採歌。春雑歌〜秋雑歌(七夕九十八首まで)

117
(高天原から降って来たと云う)天の端山(万葉集では天の香具山)に今宵は霞がたなびいて、ああ春になったのだなあと時日を過ごしていることよ。

118
春はもう直ぐ其処まで訪れておりますよ、続いて泣きじゃくる鶯の声が聞こえてくるでしょうよ。
梓弓;「はる」を導き出すための枕詞で訳さない。

119
春は遠ざかって終わりになろうかと云うのに、空は曇りあって(霧や霞で曇って)何時までも雪は降り続いていることよ。

打ち靡く;「はる」を導き出す枕詞。「打ち靡き」とあることから或は意味を持たせて「引き寄せられて」としたものか?。
空曇遇ひ;万葉集では「天雲霧らひ」となっており、意図的に変更したともとれる。

120
梅の花 咲き散り過ぎぬ しかすがに、白雪庭に ふりしきにつつ。
梅の花が咲きもう既に散り去ってしまったよ、そうは言うものの(春遠くまだまだ)白雪は我が家の庭に頻りに降り続いていることよ。

121                    
纏向が檜原に立てる春霞、おほにし思はばなづみ来めやも。
纏向の檜原に湧き立つ春霞よ、覆い隠してしまえと思われたならば悩み苦しんでまで来たであろうか。いや来ないであろう。


まきむく
纏向;「まきもく」とも。奈良県桜井市の奈良盆地一帯に広がる3〜4世紀の集落跡地。垂仁天皇・景行天皇の皇居があった地域。特殊な文様を持つ円盤状の木製祭具が出土し、山陰・山陽・東海などの各地の土器もあり、前方後円墳や箸墓古墳もあることから初期大和政権の中心地ではとみられている。

真木(槙)木;真木は杉の古称。槙は犬槙、高野槙、羅漢槙などの総称。これらの針葉樹のことか。吉野杉の鎮守の森のことか。
ひばら
檜原;檜の茂った所




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