大字朗詠集切(大字和漢朗詠集切)和漢朗詠集 巻下 山寺  戻る 大字朗詠集切 一覧へ
    本鳥の子紙(薄茶色)5寸5分×8寸2分
字粒が他の和漢朗詠集の物よりも大きく書かれており、字間・行間も大らかである。表面は高野切同様の加工で染の雲母振り。
料紙は雲母振りの染紙。


薄茶色

『大字朗詠』 大字和漢朗詠集切 断簡 
19.4cmx25.2cm
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。



         漢詩・かな                                
水色文字は使用時母

580                    
                     
慈恩寺
 變閲水之橋以為到岸之途 





581
 策
馬來時只思風煙之可一レ翫、逢

 談處漸覺世俗之皆空
。 英明

582
 人如鳥路穿雲出、地是龍門趁水

 登 


583
 三千世界眼前盡、十二因縁心裏

 空 
竹生嶋 都


   


  えっすい     へん
 閲水の橋を變ぜずして以て到岸の途と為す。
                      
だいじおんじ
                      大慈恩寺
                             
おののたかむら
                             小野篁


    
むちう  きた     ふえん  もてあそ
 馬に策て來る時只風煙の翫ぶべきことを思う、
              
ようや
 僧に逢ひて談ずる處に漸くに世俗の皆
       
さと
 空しきことを覺んず。 
源英明

    
ちょうろ  ごとし   うがち        これ りゅうもん
 人は鳥路の如雲を穿て出ず、地は是龍門
   
もとめ
 水を趁めて登る。
菅原道真

        
まなこ    つき
 三千世界は眼の前に盡ぬ、
           
うち
 十二因縁は心の裏に空し。 竹生嶋 都良香





























漢字の意味の通じるものは漢字で表記
一行は一行に、繰返しは仮名で表記

さんぜんせかい  
三千世界;三千大千世界。須弥山を中心に日・月・四天下・四天王・三十三天・夜摩天・兜率天・楽変化天・他化自在天・梵世天などを含む一世界を千個合わせたものを小千世界、それを千個合わせたものを中千世界、更にそれを千個合わせたものを大千世界とする。


じふにいんえん
  しゅじょう  
十二因縁;衆生の苦の原因を順に12段階を立てて説明したもの。無明・行・識・名色・六処・触・受・愛・取・有・生・老死の12の項目。初期仏教の中心となる重要な説教。

うが
穿つ突き抜ける。孔をあける。

 だいじおんじ  
大慈恩寺;唐の長安に後の高僧が建てた寺。帰朝後の玄奘が住職となり、翻経院を設けて仏典の翻訳を行った。

おののたかむら
小野篁;平安前期の文人・貴族で、遣唐副使に任ぜられたが、大使とそりが合わず病と称して命に背き、隠岐に流された。博学で詩文に長けた。


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