道済集 (6寸7分5厘×1尺2分)            戻る 道済集 一覧へ 
   前田家所蔵 具引蝋箋(清書用2・3枚目)
こちらは昭和初期の複製本となります。原本は小紋の緞子表紙で、見返しには金銀切箔を散した装飾料紙が使われております。右項は薄い水灰色の亀甲紋の具引蝋箋で、他項には同柄の濃色の物も在ります。左項は当時としては珍しく、ぼかしの入った料紙に唐草柄の蝋箋が施されており、貴重な資料となるものです。

蜜柑色みかんいろ) 宝唐草     薄水グレー色(うすみずグレーいろ)亀甲紋  
粘葉本 『道済集』 (宝唐草・亀甲紋) 拡大へ 

右項;亀甲紋
具引蝋箋(全ローセン)


左項;宝唐草
部分ぼかし
具引蝋箋(全ローセン)




本文解説
使用字母へ




20.4cmx30.9cm
 
弱い光を当てて唐紙を強調しております。実際の見え具合は周りの薄くグレーに見えている程度と為ります。   
       かな                   使用字母
  にょういんのおんまえ
  女院御前にてゆきのひろ

  うふりてはべりしに、こ

  れよめとおほせられしかば

 としごとの ふゆふるもの

 と しりながら、とこめづらなる
       
かな
 ふすまゆき哉


  遍照かへしてはべりし

 ふすまゆき ふるゆふぐれは

 とりわきて、君をきませと

 めすにやはあらぬ
  
おほいどの
  大殿わかぎみの御はかまぎ

  に、やすのかはらかきてはべ

        り し し き しがたに


 

  女院御前爾天由幾乃悲路

  宇不利弖波部利之爾、己

  礼夜女登於本世良礼志可八

 東之己登乃 不遊不類裳能

 止 志利奈可良、止己女都良奈類

 布須末由支哉


  遍照可部之天者部利之

 婦須末由支 不類由不久礼盤

 東利和支天、君遠起末勢止

 免春耳也者阿良奴

  大移殿和可支三乃御者可万支

  爾、也春乃可者良可支天者部

         利之々幾志可多仁


 

 女院御前にて雪の広う降りて侍りしに、是読めと仰せられしかば
年毎の冬降るものと知りながら、常珍なる衾雪かな
 遍照返して侍りし
衾雪降る夕暮れは取り分きて、君を来ませと召すにやは有らぬ
 大殿の若君の御袴着に、安の河原書きて侍りし色紙形に

 


女院;天皇の母や三后また内親王などに対して朝廷から与えられた尊称。待遇は上皇に準ずる。皇太后藤原詮子を東三条院と称したのに始まる。

ふすまゆき
衾雪;衾の様に多く降り積もった雪
衾は布で作った古代の寝具(布団)









取り分き;特別に。殊更に。

召す;呼び寄せる。お招きする。

やは・・・ぬ;実現することを望む思い。
・・ないものか、否・・・あってほしい。

袴着;幼児に初めて袴を着せる儀式。7・5・3歳の何れかに行う。陰暦の11月に行うのが通例。












拡大図  蜜柑色ボカシ 全ローセン                         亀甲紋唐紙
粘葉本 『道済集』 (宝唐草・亀甲紋) 拡大
柄は光が当たるときらりと輝き、光が無ければ沈んで見えにくくなります。右側の亀甲紋では白く光っている亀甲と、暗く青グレーに沈んでいる亀甲とがお解り頂けると思います。