伊勢集(石山切)  具引紙『薄茶』 (清書用臨書用紙)   戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第十六紙及び第十七紙料紙の裏面で、薄茶具引紙『花鳥折枝燻金銀袷型打』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、その裏面用の料紙になります。(料紙そのものは表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。)裏面の歌の臨書をご希望の場合には破り継『夏武之能』(第十六紙)又は具引唐紙『丸獅子唐草』(第十七紙料紙)の柄をご利用下さい。

伊勢集 具引紙 『薄茶』   伊勢集 『具引染紙』 書拡大へ
唐紙料紙の書手本拡大


伊勢集第十六紙裏面
第十七紙裏面 書
 具引紙 『薄茶』金銀切箔雲母振り 花鳥折枝燻金銀袷型打 (半懐紙)
伊勢集実物では右項の左上隅に僅かだけ破り継部分が御座いますが、本臨書用紙では他の部分での代用も考慮して破り継部分を無視して全面具引料紙としております。

  伊勢集 書


伊勢集 具引紙 『薄茶』 拡大  中央部分
花鳥折枝燻金銀袷型打
 中央部分 具引紙 薄茶 花鳥折枝燻金銀袷型打(燻金は青金と燻銀の混合)
青金2割淡い燻銀8割程度の混合ですので、銀泥との違いが分かりにくい為、銀型打ちのように見えますが、手に取ってみればその違いが確認できます。
細かい点々の光は雲母の輝きです。四角い光は金銀小切箔です。。
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 具引紙 『薄茶』 拡大
 左下陰の部分


花鳥折枝
 左下陰の部分 光の反射の少ない様子
金銀袷型打も光を失い鈍い色合いです。
 


伊勢集 『具引染紙』 書手本 解説及び使用字母

伊勢集第十六紙裏面
第十七紙裏面 書
 伊勢集 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 右項第十六紙・左項第十七紙裏面

歌番号は伊勢集での通し番号                              青色文字は使用字母          解釈(現代語訳)
129
 なつむしの おもひにいりて なぞもかく

 わが心から もえむとはする

   朱雀院にて人の心にもあらすつるを

   ころしたりけるを、いまひとつのつるい

   みじうこひなきければ、あめのいみ

   じくふる日
130
 なくこゑに そゐてなみだは のぼらねど

 雲のうへより あめとふるかな

   九月九日そこのつるはしにける

131
 きくのはに おきゐるべくも あらなくに

 ちとせのみをも 露になすかな

   山とにむかしおやありける人の、おや

   なくなりてはつせにまいるとて

132
 一人ゆく ことこそうけれ ふるさとの

 むかしならひて みし人もなく

   山みねにて


129
 奈川武之能 於毛比爾以利天 奈所毛可久

 和可心可良 毛衣武止者春流

   朱雀院二天人乃心爾毛安良須川留乎

   己呂之太利希類遠、以末比乃徒類以

   三之宇己比奈支希禮者、安女乃以三

   志久不留日
130
 奈久己恵爾 所為天奈三多者 能本良年登

 雲能宇部與利 安女止不留可那

   九月九日楚己能川留者之爾計留
131
 幾久能者仁 於支為留部久毛 安良奈久仁

 千止世能美遠毛 露爾奈春可那

   山止爾武可之於也安利計留人乃、於也

   奈久那利天者川世仁末以留止天

132
 一人遊具 己止己楚宇希禮 不留左止能

 无可之奈良比天 三之人毛奈久

   山美子二天


「禮」は「礼」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。


          現代語訳                      解釈         解説及び使用字母

129
「夏虫の思ひに入りてなぞもかく、我が心から燃えむとはする」
夏虫が深く思い込んで(炎の中に)入って行く様に、どうしてこんなにも自らが心の底から燃えようとしてしまうのだろうか。


   朱雀院にて人が不本意ながら鶴を
   殺してしまったのを、もう一方の鶴が
   たいそう恋い慕って(悲しんで)泣いていたので、雨が随分と
   降る日のこと、

130
「鳴く声に添いて涙は昇らねど、雲の上より雨と降るかな」
鶴の鳴く声に寄り添って(空高く迄)涙が昇る事は無いのだけれど、まるで雲の上から雨となって(涙が)降っているようですね。

   九月九日には、この鶴は死んでしまった、

131
「菊の葉に置き居るべくも有らなくに、千年の身をも露に為すかな」
菊の葉に降りてきて居れるはずも無いのに、千年とも云われる長い寿命であってもその身を露と化すのだなあ。


   大和に昔両親が住んでいた人の、親が
   亡くなられて初瀬にお参りになると云って、

132
「一人行く事こそ憂けれ故郷の、昔慣らひて見し人も無く」
一人で行くことはとても気が重いのです、故郷には昔慣れ親しんだ人も亡くなってしまい知っている人も居ないので。


   山峰にて

129
(夏虫は何故、もがくと知りながら炎の中へ飛び込んでしまうのだろう、どうして私は心の底から情熱を燃やそうとしてしまうのだろうか。苦しむかもしれないのに)との意。

もかく;「も斯く」=どうしてこのように、と「もがく」=悶え苦しんで手足を動かす

すざくいん
朱雀院;書道に堪能で、三筆の一人として名を馳せた嵯峨天皇以降の歴代天皇の離宮。


130
(どしゃ降りの雨の中で死んだ鶴を偲んで鶴の鳴声が響き渡る、この雨はあたかも鶴の涙の様に思へてなりませんよ。)との意を詠んだ歌。


131
(菊に宿る露は飲むと長生きすると信じられていたが、そこに宿る事が出来るはずも無いであろうに、千年とも云われるその身であっても儚く消える露となって終いたいのだなあ。)との意。

はつせ                         はつせのあさくらのみや なみきのみや
初瀬;大和の国の一地区で長谷寺の門前町。泊瀬朝倉宮、泊瀬列城宮の上代帝京の地で桜の名所。


132
(故郷とはいっても慣れ親しんだ友も親しい人も亡くなっており、もう知合いもいない地なので懐かしさよりも独り身の寂しさの方が先に立つのですよ。)との意を詠んだ歌。





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