伊勢集  具引唐紙『水辺の鳥』 (清書用臨書用紙)    戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第十九紙料紙、具引唐紙『水辺の水鳥』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ柄、若しくは白具引(花鳥折枝)をご用意ください。

伊勢集 具引唐紙 『水辺の鳥』 伊勢集 『具引唐紙』 (水辺の鳥) 書拡大へ
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 具引唐紙 白『水辺の鳥』 花鳥折枝金銀袷型打 (半懐紙)   伊勢集 書


伊勢集 具引唐紙 『水辺の鳥』 右上側部分 拡大 右上側部分

ギラ引唐紙
『花唐草』
 
 花唐草右上側部分 具引唐紙 白 花鳥折枝金銀袷型打
様々の花を包み込む様に唐草を描いてあるので、花唐草と言われております。
花鳥折枝金銀袷型打(千鳥・蝶々・女郎花・柳・紅葉・芝桜など)
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 具引唐紙 『水辺の鳥』 拡大
 左下陰の部分 
光の反射の少ない様子
 左下陰の部分 光の反射の少ない様子
唐草柄も光を反射しなければグレーに見えます。

金銀袷型打も光を失い鈍い色合いです。(松枝・千鳥・蝶々・蓼・紅葉・柳)
 

伊勢集 具引唐紙 『水辺の鳥』 拡大
具引唐紙
(雲母摺唐紙)

『水辺の鳥』
水鳥部分拡大
(伊勢集原本と図柄は異なります) 
 具引唐紙 白『水辺の鳥』 花鳥折枝金銀袷型打
光を当てた状態での見え方(水鳥部分)
(伊勢集原本と図柄は異なります。雰囲気だけでもお楽しみ下さい。)
勿論地にも柄の上にも墨は乗りますので、安心してご使用頂けます。
 


書手本

伊勢集 『具引唐紙』 (水辺の鳥) 第十九紙 書手本 解説及び使用字母 
 伊勢集 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 具引唐紙『花唐草』 第十九紙

歌番号は伊勢集での通し番号                               青色文字は使用字母         解釈(現代語訳)

151

 (たぎつせの はやからぬをぞ うらみつる、)
 みつともおとを きかむとおもへば


   はらからのなくなりたるを恋て
152
 おもかげを あひみぬかずに なすときは、
 心のみこそ しづめられけれ


   ながらのはしつくるをききて
153
 つのくにの ながらのはしも つくるなり、
 いまはわがみを なににたとへむ


   うたて人の物をいひけるに
154
 しるといへば まくらだにせで ねし物を、
 きりならぬなの そらに立らん


   ひとのつらくなるころ
155
 ひとしれず たえなましかは わびつつも、
 なきなぞとだに いふべき物を


   人の心かはりたるころゑになみの
   こえたるをみてかきつく
156
 まつかけて たのめし人も なけれども、
 (なみのこゆるは なをぞかなしき)



151

 太支川世能 者也可良奴遠楚 宇良美川類、
 美川止无於止乎 支可武止於毛部者


    者良可羅乃奈久那利多類遠戀天
152
 於毛可希遠 安比美奴可春仁 奈寸止支波、
 心乃美己所 之川女良礼希禮


    奈可良能者之徒久留遠支々天
153
 川乃久仁能 奈可羅乃者之毛 徒久類奈利、
 以末波和可三遠 那二々堂止部武


    宇太天人乃物乎以飛希類爾
154
 志流止以部者 末久良太爾世天 年之物乎、
 幾利奈良奴那乃 所良仁立良无


    比止能川良久奈流己呂
155
 飛止之禮春 多衣那末之可波 和比川々毛、
 奈支那楚止太爾 以不部支物乎


    人乃心可者利堂流己呂恵爾那三能
    己衣多類遠美天可支徒久
156
 万徒可希天 太乃女之人毛 奈希礼止无、
 (奈美乃己由類者 那乎所可奈之支)


「禮」は「礼」とすることも。
「戀」は「恋」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
( )は上部は前項、下部は次項にあり


                     現代語訳                        解釈             解説及び使用字母
 


151
「激つ瀬の速からぬをぞ恨みつる、みつとも音を聞かむと思へば」
水の激しく流れる瀬の流れが速すぎた事を残念に思ってましたよ、願いが叶おうとも音を聞こうと思っておりましたので。


   兄弟姉妹の亡くなってしまったのを懐かしんで、

152
「面影を相見ぬ数に為す時は、心のみこそ静められけれ」
面影を面と向かって見ていた価値あるものとする時は、心だけは平静でいられたのだなあ。


   長柄の橋を作ると聞いて、

153
「津國の長柄の橋も作るなり、今は我が身を何に例へむ」
摂津の国の長柄の橋も作るそうですよ、今は我が身を何に喩えましょうかねえ。


   異様に人がものを言っていたので、

154
「知ると云えば枕だにせで寝しものを、霧ならぬ名の空に立つらん」
交際していると言うならば枕も共にしないで寝たものを、霧ではないがその様な名が空に立つでしょうね。


   人の辛くなる頃、

155
「人知れず堪えなましかば詫びつつも、無き名ぞとだに言うべきものを」
人に知られないように耐えておりましたならば、思い煩いながらも身に覚えのない評判だぞと言っておられましたのに。


   人の心が変ってしまった頃、絵の中に波の
   越えている処を見て書きつけた歌、

156
「俟つ欠けて頼めし人も無けれども、波の超ゆるは猶ぞ哀しき」
頼りとしていた所が欠けて頼りとなる人も居ないのだけれども、波が越えて行くのはそれでも尚哀しいことですよ。
或は
「まつ陰で頼めし人も無けれども、波の超ゆるは猶ぞ哀しき」
松の木陰で頼りとなる人も居ないのだけれども、波が越えて行くのはそれでも尚哀しいことですよ。



151

立つことさへ不安定な水が荒れ狂う瀬で流れが速すぎる事を嘆いておりましたよ、願いが叶ったとしても世間の噂を気にしておりましたので。)との意を詠んだ歌。

みつ;「満つ」と「水」との掛詞。

同胞;同じ母から生まれた兄弟姉妹。異父兄弟。


152
(ぼんやりと目の前に浮かぶ姿が価値あるものと感じた時には、心だけは落着いた感情でいられたのだなあ。)との意。

面影;目先にないものがいかにも目の前にあるように感じる姿(顔形)。


長柄の橋;大阪市大淀区の淀川の支流の長良川に架けられていた橋。その事全てがあるがままに続くことの喩えとして引用される。

153
(今となっては古びてしまって人を渡すことすら出来はしないと云う長柄の橋もとうとう付替える事に為ったそうですよ、とするなら今からは我が身を何に喩えたら良いのでしょうかねえ。)と皮肉交じりの感想を詠んだ歌。


154
交際していると言うのならば枕も共にしないで寝ましたのに、きっとおぼろげながらも恋しているとの噂が町中に立ってしまうのでしょうね。)との意。

名の空に立つ;噂が根拠なく立つ。根も葉もない噂が立つ。

155
(人に知られない様にして我慢していたならば、心細く過ごしながらも根拠のない噂だぞと心の中で言い放つに違いないのに。)との意を詠んだ歌。

無き名;根拠のない噂。身に覚えのない評判。

156
(頼りにしていた人がいなくなって他に頼る人も居ないので、波が越えてくるように寄る年波に皴が増えて来るというのはより一層哀しいことですよ。)と咄嗟に綴った切ない歌。

俟つ;期待する。頼りとする。

波;和歌では、年老いてから皮膚に生じる皴に喩える。

或は
(頼りとする人を待つ松の木陰で頼りとなる人も居ないのだけれども、波が越えて肥大して来るように寄る年波に皴が目立ってくると云うのは何といっても哀しいことですね。)との意とも取れる。
「まつ」は「待つ」と「松」との、「超ゆ」は「肥ゆ」との掛詞。


代々栄えるものの加護としての松蔭の「松」と来るか来ないかもしれない「待つ」。


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