伊勢集（石山切）波間（浮沈み）

三十六人集　伊勢集(石山切)　破り継『波間（浮沈み）』　（清書用臨書用紙）　　

伊勢集第十八紙料紙、破り継『波間（浮沈み）』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の臨書には同じ料紙をご利用頂くか、白具引料紙（花鳥折枝）をご利用下さい。

詫ぶる涙

破り継料紙の書手本
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伊勢集・波間（浮沈み）　（半懐紙）
こちらの破り継はほぼ水平にﾋﾟｰｽを配したタイプのもので、継口が波打っていて大小のうねりを見せるタイプのものです。よく見ると上側の台紙は白色無地で唐紙柄の無い物が使用してあり、天と地を意識できる様工夫されています。白地に僅かに見えているのは西瓜の葉です。
台紙の具引唐紙の柄は二重唐草（重ね唐草）です。

左上側破り継部分　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

左上側破り継部分

伊勢集・波間（浮沈み）
左上側破り継部分の拡大です。唐紙柄は、二重唐草（重ね唐草）です。
青グレー色のﾋﾟｰｽの上に少しだけ現れている西瓜の葉がご覧いただけますでしょうか（金色のギザギザの葉先）。

　右上側破り継部分　　　　　　　　　　　　　　　　　　

右上側破り継部分

伊勢集・波間（浮沈み）
右上側破り継部分の拡大です。白台紙の唐紙柄は二重唐草（重ね唐草）です。
花鳥折枝が輝いて見えておりませんが、光を当てていない為で、手にするとちゃんと輝いて見えますのでご心配ありません。

左下側色台紙部分　　　　　　　　　　　　　　　　　

左下側色台紙部分
灰ﾍﾞｰｼﾞｭ色

二重唐草
（重ね唐草）

伊勢集・波間（浮沈み）　　花鳥折枝金銀袷型打　台紙の柄は二重唐草（重ね唐草）
花や実を配したこのような唐草の柄に、蔓が一重のものとこの写真のように二重のものとが存在します。
二重唐草は二重の蔓の輪の中に花実を配した柄が積重なっていますので、重ね唐草とも呼ばれています。

解説及び使用字母へ

伊勢集・波間（浮沈み）　書手本　縦6寸7分、横1尺5分5厘　第十八紙

歌番号は伊勢集内での通し番号　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青色文字は使用字母　　　　　　　　　解釈（現代語訳）へ

143
　よとともにわがぬれぎぬとなる物は
　わぶるなみだの
　　　　きするなるべし

　　　人に物いひて猶つつましかり
　　　けるころ
144
　あひみてもつつむおもひのわびしきは
　人まにのみぞねはなかれける

　　　よそながらおもひいでける人の
　　　おとなかりければ
145
　ふるさととあらぬ物から
　　　　　　　　　　　我ために
　　　　　　　　　人の心のあれて
　　　　　　　　　　　　　　　みゆらむ

　　　亭子院の御屏風ににはのほとり
　　　にもみぢあり
146
　うきしづみふちせながるる
　　　　　　　　　　　もみぢばに
　ふかくあさくぞ
　　　　　　いろはみえける

　　　ひたはへたるところ

143
　與止々毛仁和可奴礼支奴止那留物者
　和不類奈美堂能
　　　　幾須留那留部之

　　　人二物以比天猶川々末之可利
　　　希留己呂
144
　安比美天毛徒々武於毛比乃和比之支盤
　人末仁乃美所禰者那可連計留

　　　與所奈可良於毛比以天計留人乃
　　　於止奈可利希禮者
145
　不類左止々安良奴物可良
　　　　　　　　　　　我堂免爾
　　　　　　　　人乃心能安礼天
　　　　　　　　　　　　　　美遊良无

　　　亭子院乃御屏風二々者能本止利
　　　耳毛美遅安利
146
　宇支志徒三布遅世奈可留々
　　　　　　　　　　　毛美遅波爾
　不可久安佐久楚
　　　　　　以呂者美衣計留

　　　飛多者遍堂流止己呂

「禮」は「礼」とすることも。　　　　黄色文字は前項に在り
「爾」は「尓」とすることも。

　　　　　　　　　　現代語訳　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　解釈　　　　　　　　解説及び使用字母へ

143
「世と共に我が濡れ衣となるものは、詫ぶる涙の帰するなるべし」
世の中に在って（私と一緒に）私の根も葉もない噂となる事柄については、すまないと謂う思いで込上げてくる涙に辿り着いてしまうに違いないでしょう。

　　　人に情を通じようとして尚且つ気が引ける思いだったころ

144
「相見ても慎む思ひの侘しきは、ひと間にのみぞ根花枯れける」
お目にかかってみても恥じらいで気が引ける思いの侘しいことには、人との間が絶えてしまって根花も枯れてしまうことですね。

　　　他所に居ながら思い出した人からの
　　　便りが無かったので、

145
「故郷と在らぬものから我が為に、人の心の散れて見ゆらむ」
故郷でも無いのだから私の為になどと、人の心も遠のいた様に感じられるのでしょう。

　　　亭子院の御屏風に描かれた庭の畔に
　　　紅葉が有り

146
「浮き沈み淵瀬流るる紅葉葉に、深く浅くぞ色は見えける」
浮いたり沈んだりしながら淵や瀬を流れている紅葉の葉に、濃いものや淡いものなど色とりどりの色が見えておりますよ。

　　　（稲葉の）ひたすらにはびこっている処、

143
（世の中に在って私と一緒に私の根も葉もない噂となってしまう事柄については、すまないと云う思いで込上げてくる涙が溢れ出てしまう事となってしまうでしょう。）との意。

144
（お目にかかってみても恥じらいで気が引ける思いでいることの侘しいことには、情を通じるきっかけとしての事の起こりも心ときめくことも無くなってしまうことですね。）との意。又、（寝床に入って間もない頃のことも疎くなって離れて終いますね）との意も含んでいる。

「根花」は「寝端」との掛詞。「枯れて」は「離れて」との掛詞。

根；事の起る元。人の本性。
花；美しいこと。時めくこと。栄える事。名誉。

145
（故郷でも無いのだからわざわざ私の為に便りなどしなくとも良いかなという事で、あの人の心も遠のいた様に感じられるのだろう。）と便り無い事を読んだ歌。
あ
散れて；気持ちが遠のいて。離散して。
荒れて；気持ちや生活などがすさんで。

146
（屏風の絵を見て紅葉の景色を詠んだもの）
「浮沈」「淵瀬」「深浅」と対をリズミカルに織り込んだ歌。

ていじいん　　　　　　　　　　　　　かんぴょう
亭子院；宇多法皇の院号。寛平法皇とも云う。又その離宮。落飾して坊主になり仏門に入った上皇を太上法皇（法皇）と呼んだ。

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