伊勢集(石山切) 具引唐紙 白『大波(鯱波)』 (清書用臨書用紙)     戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第二十六紙で、白具引唐紙『大波(鯱波)』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、裏面の料紙加工は施しておりません。(料紙そのものは表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。)裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ料紙をご用意頂くか、白具引染紙(花鳥折枝)をご利用下さい。

 伊勢集 具引唐紙 白 『大波(鯱波)』 花鳥折枝金銀袷型打 拡大 伊勢集 具引唐紙 白 『大波(鯱波)』 書拡大へ
白具引唐紙の書手本
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 具引唐紙 白 『大波(鯱波)』  花鳥折枝金銀袷型打 (半懐紙)


  伊勢集 書


伊勢集 具引唐紙 白 『大波(鯱波)』 花鳥折枝金銀袷型打 左上部分拡大 右上側部分
『大波(鯱波)』
花鳥折枝金銀袷型打
 
 右上側部分 『大波(鯱波)』 花鳥折枝金銀袷型打  
白具引唐紙に金銀花鳥折枝を施したものです。
柳、紅葉、松枝、庭藤、芝桜、不明の草花、千鳥、蝶々。
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 具引唐紙 白 『大波(鯱波)』 花鳥折枝金銀袷型打 中央下側部分拡大 
判り辛いですが、金銀で一つの柄になっております。金泥は通常の濃さではなく銀で増量されたものです。  
 左下側部分 具引唐紙 白 『大波(鯱波)』 花鳥折枝金銀袷型打
白具引唐紙に金銀花鳥折枝を施したものです。
蔓草、松葉、蓼、草藤、千鳥、蝶々。
 


伊勢集 書手本

伊勢集 具引唐紙 白 『大波(鯱波)』 花鳥折枝金銀袷型打 書手本拡大  解説及び使用字母
 伊勢集 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第廿六紙  具引唐紙『鯱波』
 両面加工の料紙を使用して綴じた帖です(見開き)。

歌番号は伊勢集での通し番号                              青色文字は
使用字母          解釈(現代語訳)

222
 ありそうみの はまにはあらぬ にはにて
 も、かずしられねば わすれてぞつむ

   となりなる人のそこにくらべよと
   て花をおこせたるに

223
 春にさへ わすられにたる やどなれば
 いろくらふべき 花だにもなし

224
 我をこそ わすれもはてめ むめのはな
 さきしぞとだに おもひいでなむ


   やよひふたつあるとし

225
 さくら花 はるくばはれる としだにも
 人のこころに あかれやはせぬ

   我いへを人のになしてのち花
   をやるとて


226

 花のいろの むかしながらに みゆめれば
 君かやととも おもほえぬかな

   こ中宮の内侍のもとに



222

 安利楚宇三能 者万仁者安良奴 二八爾天 
 毛、加春之良禮年者 和春禮天所川武

    止奈利那留人能楚己仁久良部與止
    天花乎於己世堂流爾

223
 春仁左部 和春良禮爾太類 也止奈禮八
 以呂久良婦部支 花多爾毛那之

224
 我乎己楚 和春禮毛者天女 武女乃者那
 左支之所止多仁 於毛比以天那武

    也與比不太川安類止之


225
 左久良花 者流久者々禮留 止之太爾裳
 人能己々呂爾 安可禮也者世奴

    我以部遠人能爾奈之天能知花
    乎也類止天

226
 花能以路乃 武可之奈可良仁 美遊免禮八
 君可也止々毛 於毛保衣奴可那

    古中宮能内侍乃毛止爾


「禮」は「礼」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。


          現代語訳                      解釈

222
「荒磯海の浜に在らぬ庭にても、数知られねば忘れてぞ積む」
荒磯の様な海の浜ではない庭ではあっても、数を知っておられないので忘れてしまって積んだのだろうよ。


   隣に住んでいる人が優劣を競おうではないかと
   花を持ってきたので、

223
「春にさへ忘られにたる宿なれば、色比ぶべき花だにも無し」
春にさへ忘れられてしまった我が家であるので、花の色艶を競うだけの花でさへも咲いておりませんよ。

224
「我をこそ忘れも果てめ梅の花、咲きしぞとだに思ひ出でなむ」
私こそすっかり忘れ果てて終いなさい、梅の花よ、咲いていたぞとばかりにきっと思い出してしまうだろう、から。


   弥生(3月)の二つある年、

225
「桜花晴るくば晴れる年だにも、人の心に散れやはせぬ」
桜の花よ、せめて(雲を)払い除ければ晴れる年だけでも、人の心を別々にはしないで欲しいのですが。


   我が家をある人が唯一無二とした後で
   華美を極めると云って、

226
「花の色の昔ながらに見ゆめれば、君が宿とも思ほえぬかな」
花の色艶が昔のままかと見られる様なので、貴方の家とも思われないのですがねえ。


   若い中宮の内侍の元に、


   (前栽を植えさせなさって庭砂を運ばせていた時に、
   家の人でもない人が庭砂を持ってきたので、)の詞書。
222
(荒磯の海の様に砂が多く打ち寄せられるというわけでも無い庭であるが、どれ程必要なのかを知らないので、どこの家との記憶も無しに積んでいったのでしょう。)との意。


223
(春にさへも忘れられる程のみすぼらしい家なので競うだけの花も無いですよ。)と軽く往なして読んだ歌。
春にさへ忘れられた家とは自分自身の事をも示唆する。


224
(昔は美しく咲いていたことを自分の若かりし頃と重ね合わせて思い出してしまうから、私の方こそ忘れ去ってしまいなさいよ。)との意。


225
(せめて心が晴れる様にすれば晴れる年だけでも、花を咲かせて人の心を散り散りにすることなく晴々とした物にして欲しいのですよ。)


晴るく;開く、晴れるようにする。

あか
散れ;散り散りになる、別々になる。

に な
似無し;比べられるものが無い。二つとない。
花を遣る;華美を極める。派手に振舞う。豪華な生活をする。

226
(貴方の振舞いが昔あったそのままの様に見られる様なので、とても今の貴方の家とも思われないのですがねえ。)といぶかしがる歌。

こ;「小」=若い、「古」=太皇太后、「故」=亡くなられた、
こちゅうのてん
壺中之天;別天地。酒を飲んで俗世間の事を忘れる楽しみ。
227
「百磯城の花の匂いは呉竹の、世々にも為と聞くは誠か」



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