伊勢集(石山切)  具引唐紙『小唐草』(清書用臨書用紙)     戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第二十八紙料紙、具引唐紙『小唐草(小重ね唐草)』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ柄、若しくは白具引(花鳥折枝)をご用意ください。

伊勢集 具引・薄茶色 『小唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 拡大 伊勢集 具引唐紙 『小唐草』 書拡大へ
白具引料紙の書手本
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 具引唐紙 『小唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 (半懐紙)   伊勢集 書


伊勢集 具引・薄茶色 『小唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 右上側部分拡大 右上側部分
花鳥折枝金銀
袷型打
 右上側部分 花鳥折枝金銀袷型打  
薄黄茶具引唐紙(小唐草)花鳥折枝を施したものです。
ススキ、柳、紅葉、松葉、蔓竜胆、蕨、千鳥、蝶々。
 伊勢集 書


伊勢集 具引・薄茶色 『小唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 左下側部分拡大 
判り辛いですが、金銀で一つの柄になっております。  
 左下側部分 具引白 花鳥折枝金銀袷型打
薄黄茶具引唐紙(小唐草)花鳥折枝を施したものです。
柳、紅葉、松葉、蓼、千鳥、蚊屋吊草。
 


伊勢集 具引唐紙 (小唐草) 花鳥折枝金銀袷型打 書手本 拡大  解説及び使用字母
 伊勢集 具引唐紙 『小唐草(小重唐草)』 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第二十八紙
 両面加工の料紙を使用して綴じた帖です。

歌番号は伊勢集での通し番号                             青色文字は
使用字母          解釈(現代語訳)
244
 (しをるとも なみだならねば ぬらしけむ)

 はるさめこそは あはれともみめ


245
 しらくもの たなびきにける みやまには、

 てる月影も よそにこそきけ

   かへし

246
 雲はらふ てる日こもれる やまなれば、

 あかき月にも みえぬなるらん

247
 花すすき ほにもいでてし なきやどは、

 むかししのぶの 草をこそみれ

248
 つらなから へなむとぞおもふ よそにても、

 人やけぬると きかむとおもへば

249
 にこるえの かたふかくこそ あせにけれ、

 みをはちすさへ みればおいにけり


   みかど物におはしましけるついでに
   かつらなるいへにおはしまして、そこの
   花にかきつけさせたまひける

250
 むめのはな かたにのこらす なりにけり、

 にほひでたにや をしまさりつる


244
 (志遠留止毛 奈三多那良年者 奴良之希無)

 者類左女己楚八 安者礼止毛三女


245
 志良久毛能 太那比幾爾計留 美也末仁者、

 天流月影毛 與楚仁己曾幾計

    可部之

246
 雲八良婦 天流日己毛禮留 也末奈礼盤、

 安可支月爾毛 美衣奴那留良无

247
 花春々支 保爾毛以天々之 奈支也止波、

 武可之志乃不能 草乎己楚三礼

248
 川良那可良 辺那武止所於毛婦 與楚爾天毛、

 人夜希奴留止 支可武止於毛部者

249
 耳己流衣能 可太不可久己楚 安世仁希禮

 美遠者知須左部 三礼者於以爾計利


    美可止物二於者之末志計留川以天爾
    加川良那類以部爾於者之末志天、所己能
    花爾可支川計左世太万比計留

250
 武女乃者那 加堂爾能己良須 奈利爾計利、

 耳保比天多爾也 遠之末左利川類



「禮」は「礼」とすることも。            ( )内は前項に在り
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。

                  現代語訳                            解釈              解説及び使用字母

244
「萎るとも涙ならねば濡らしけむ、春雨こそは哀れとも見れ」
ぐったりとしている様子に涙ではないならば(何かが)濡らしたのであろう、春雨こそは何とも物悲しいものとみる事が出来ますよ。

245
「白雲の棚引きにける深山には、照る月影も他所にこそ利け」
白雲がたなびいていたと云う深山では、照り輝く月の光も他所でこそ効き目があると云うものですよ


   返しの歌

246
「雲払ふ照る日こもれる山なれば、明き月にも見えぬなるらん」
雲を払い除けるような太陽の光も隠してしまう山であるならば、明るい月でさへも明るいと思われない事に為るのであろうなあ。


247
「花芒穂にも出でてし無き宿は、昔しのぶの草をこそ見れ」
花芒の穂が出てしまっている廃屋には、昔の忍草をこそ眺めようではないか。


248
「連ながら経なむとぞ思ふ他所にても、人や消ぬると聞かむと思へば」
仲間ではあるがそこを通過しようと思う、他所であっても人は消えてしまうのかと尋ねようと思って。
或は
「連仲らへ南無とぞ思ふ四十にても、人やけぬると聞かむと思へば」
仲間との間柄では仏の救いを願おうとも思う、四十歳でも人は亡くなって終うのかと聞いてみようかと思いましてね。


249
「濁る絵の片深くこそ褪せにけれ、身を恥ぢずさへ見れば老いにけり」
濁った絵の片方だけが親密な様子も色褪せてしまった、容貌を恥じることも無くいたが、良く見れば年老いてしまっていたよ。


   天皇が公務にお出かけになられるついでに、
   桂と云う所の屋敷においでになられまして、そこの
   花(をお題)に(歌を)お書付になられた。

250
「梅の花方に残らずなりにけり、匂ひ出たにや惜しまざりつる」
梅の花は屋敷に残らないこととなってしまったようだ、香が出ていると云うのに惜しまれなかったのだろうか、否惜しまれたであろうなあ。



244
(打ちひしがれている様子に涙でないとするならば春雨が濡らしたのでしょう、春雨こそはしみじみとして情趣が有る物と捉えるべきですよ。)との意。

春雨;春の芽吹きの頃に静にしっとりと細やかに降る雨。風情ある様。

245
(雲がたなびいていれば月が照り輝いていたとしても、雲に遮られていてはここではそのお蔭がないので、月見の楽しみは別の場所でしか享受できませんよ。)との意。

利け;可能である。係助詞「こそ」を受けて「利く」の已然形「利け」となったもの。

246
(憂いに曇った心のわだかまりを払い除けて晴々させてくれないような山であるなら、明るく澄んだ月さへも見る事が出来ない事態となってしまうのであるのでしょう。)との意。

247
(穂の出た芒の生えているほど荒れ果ててしまった屋敷ではあるが、昔を思い懐かしんで偲ぶ忍草を眺めるとしましょうよ。)との意。

248
(仲間が亡くなって終ったのであるが、立ち寄らないで通過しようと思う、別の場所でも人はこの世から消えてなくなるのかと聞いてみようと思いましてね。)と茫然自失の様子を詠んだ歌。
或は
(親しい間柄では仏様の救いを願っているが、あの世では四十歳の若さでも人は死んでしまうのかと仏法僧に尋ねてみようと思いましてね。)との意。

249
(邪念のある絵のように片思いの様子も色褪せてしまったようだ、容貌を恥ずかしいと思ったことも無かったが、よくよく見れば年を取って終っていたのだなあ。)との意。

にけり;…してしまったことだ。完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」過去の助動詞「けり」の付いた形。今まで気が付かなかった事実に気が付いて述べる意を詠嘆を以って表す。

250
(何かでもって御家取り潰しにでもなあったのであろうか、この梅の花も良い香りを振り撒いているのに残念なことであるよ。無念であったろうなあ。)との意。
或は単純に、散ってしまいつつある梅の花の様子を見て以前がそうであったと回想して名残惜しんだ歌とも読める。

にや;…だろうか、否…ではない。格助詞「に」と係助詞「や」で反語の意を表す。


かつら
桂;山城国葛野郡桂の里。歌枕。数寄屋造りの書院と回遊式庭園で有名な桂離宮の有る今の京都市西京区の桂川に沿った中心区域。宇津保物語や源氏物語の舞台でもある。





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         解説及び使用字母