伊勢集  ギラ引唐紙『花唐草』 (清書用臨書用紙)    戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第三十二紙料紙、ギラ(雲母)引唐紙『花唐草』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ柄、若しくは白具引(花鳥折枝)をご用意ください。

伊勢集 ギラ引唐紙 『花唐草』 伊勢集 『ギラ引唐紙』 (花唐草) 書拡大へ
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  伊勢集
 第三十二紙
 ギラ引(雲母引)唐紙 白『花唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 (半懐紙)
ギラ引唐紙とは一旦白具(胡粉)で下地を白く塗り、その後粉状の雲母を膠で溶いた綺羅泥を
塗引いたものに、更に版木を用いて胡粉の糊で柄を摺り出したものとなります。
特徴としては地色が輝き、唐草柄は艶消しとなって現れて一味違った雰囲気となります。

  伊勢集 書


伊勢集 ギラ引唐紙 『花唐草』 右上側部分 拡大 右上側部分

ギラ引唐紙
『花唐草』
 
 花唐草右上側部分 ギラ引唐紙 白 花鳥折枝金銀袷型打
様々の花を包み込む様に唐草を描いてあるので、花唐草と言われております。
花鳥折枝金銀袷型打(千鳥・蝶々・女郎花・柳・紅葉・芝桜など)
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 ギラ引唐紙 『花唐草』 拡大
 左下陰の部分 
光の反射の少ない様子
 左下陰の部分 光の反射の少ない様子
唐草柄も光を反射しなければグレーに見えます。

金銀袷型打も光を失い鈍い色合いです。(松枝・千鳥・蝶々・蓼・紅葉・柳)
 

伊勢集 ギラ引唐紙 『花唐草』 拡大
ギラ引唐紙
(雲母引唐紙)

『花唐草』拡大
 
 ギラ引(雲母引)唐紙 白『花唐草』 花鳥折枝金銀袷型打
光を当てた状態での見え方(柄が艶消しとなり、地の方が輝いて見えます。)
勿論地にも柄の上にも墨は乗りますので、安心してご使用頂けます。
 


書手本

伊勢集 『ギラ引唐紙』 (花唐草) 第三十二紙 書手本 解説及び使用字母 
 伊勢集 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 ギラ引唐紙『花唐草』 第三十二紙

歌番号は伊勢集での通し番号                               青色文字は使用字母         解釈(現代語訳)

200

 うきながら ひとをわすれむ ことかたみ、
 またこころにぞ かつさはりける

   物おもひける人のふゆものへいきける

   みちに、ひのみえければ
201
 ふゆがれの のへとわがみを おもひせば
 もえむはるをも またまし物を

202
 すむさとは くもちならねと はつかりの、
 なきわたりぬる 物にざりける


   人のなかされけるとき

203
 せきそむる なみだいづみに たへせずは、
 ながるるみをぞ とどめざりける

   ひと
204
 ふかきおもひ そめづといひし ことのはは、
 いつか秋風 吹てちりぬる

   かへし
205
 こころなき みは草木にも あらなくに、
 (秋ふくかぜに うたかはるらん)



200

 宇支奈可良 比止乎和春礼武 己止可太美、
 末太己々呂爾所 可川左八利計留

    物於毛比希類人乃不由毛能部以支計留

    美知仁、比能美衣希礼八
201
 婦遊可礼能 々辺止和可美乎 於毛比世波、
 毛衣武者類遠毛 末太末之物乎

202
 寸武左止波 久毛知奈良年止 八川可利能、
 奈支和堂利奴類 物爾左利計類


    人能奈可左礼希類止支

203

 世支楚武類 奈美太以川美爾 太衣世春波、
 奈可類々美遠所 止々女左利
計留

    比止
204
 婦可支於毛比 楚女徒止以比之 己止能者々、
 伊川可秋風 吹天遅利奴類

    可部之
205
 己々呂奈支 美者草木二毛 安良奈久仁、
 (秋婦久可世仁 宇太可者類良无)


「禮」は「礼」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
( )は次項にあり


                     現代語訳                        解釈             解説及び使用字母
 


200
「憂きながら人を忘れむ事難み、又心にぞ且つ触りける」
煩わしいことながら人を忘れる事も難しいので、どうしようもなくて心の奥底にこそ又も感情を害してしまうのですよ。


   物思いに耽っていた人が冬に任地へ向かった道すがらに、
   火が見えていたので、

201
「冬枯れの野へと我が身を思ひせば、萌えむ春をも待たまし物を」
冬枯れの野原へともしも我が身を思ったならば、新芽の萌え出る春をも待っていたであろうに。

202
「住む里は雲路ならねど初雁の、鳴き渡りぬる物にざりける」
住む里は雲路ではないのだけれども、初秋の雁が鳴き渡っていたものであったのだなあ。


   人の泣かされて涙を流された時

203
「せき初むる涙泉に堪へせずば、流るる澪ぞ留めざりける」
堰き止め始めた涙が泉に堪えれなければ、流れる水路は止められなかっただろう。


   人

204
「深き思ひ染めづと云ひし言の葉は、何時か秋風吹きて散りぬる」
深い思いに染まらないと云われている言葉は、いつか秋風が吹いて散って終うものだよ。


   返し

205
「心無き身は草木にも有らなくに、秋吹く風にうたかわるらむ」
ものの情趣を感じる心も無いこの身は草木でも無かろうに、秋吹く風に歌が変るでしょうか。



200
(煩わしいことながら人を忘れる事も難しいので、どうしようもなくて心の奥底で又も数多くの事が神経に触れてしまうのですよ。)との意を詠んだ歌。

かつ;「且つ」と「数」との掛詞。

火;野火。春の野焼きの火の後に新芽がそろって芽吹きだす。和歌では恋の炎とともに恋の予感も連想させて詠まれる。


201
(もし冬枯れの野原の様に我が身を喩えたならば、草木の芽生える春まで待っていたであろうものを。=恋心の炎の燃え上がる春まで待っていたのであろうに、でも実際はこうして歩いているよ。)との意。

せば…まし;もし…だったら…だろうに。過去の助動詞「き」の未然形「せ」に接続助詞「ば」更に反実仮想の助動詞「まし」の付いた形。

202
(私の住んでいる里は雲の通う所ではないのだけれども、初秋になると雁が鳴き乍ら飛んでいたものだったなあ。)との回想を詠んだ歌。

ざりける;…だったのだなあ。係助詞「ぞ」に補助動詞「あり」の連用形の付いた「ぞあり」の約音「ざり」に過去の助動詞「けり」の連体形「ける」の付いた形。

203
(流れ出るのを堰止め始めた涙が抑止の泉に耐え切れなかったならば、流れ出る涙の通り道を制止することは出来なかったでしょう。)との意。

ざりける;…ないのだった。打消しの助動詞「ず」の連用形「ざり」に過去の助動詞「けり」が付き「ぞ」を受けて連体形「ける」となったもの。

204
(深い思いを表現できないとも云われている和歌は、いつの日にか飽きの風に吹かれて無くなって終うものですよ。)と「言葉」を美しく染まらない「木の葉」に準えて秋風が吹けば何れ散って終うとの儚さを詠んだ歌。


205
(思いやりの心の無い私は草木じゃあるまいし、秋の風で歌が変ってしまうものでしょうか。)と切り返した歌。





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