三十六人集 伊勢集(石山切) 破り継『人』(清書用臨書用紙) 戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ  戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第三十五紙料紙、破り継『和禮左部宇支』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の臨書には同じ料紙をご利用頂くか、白具引料紙(花鳥折枝)をご利用下さい。

三十六人集 破り継 『人』 (伊勢集) 第三十五紙料紙   伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 書拡大へ
破り継料紙の書手本
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第三十五紙用料紙
伊勢集・破り継『人』 (半懐紙)原本より一回り大きくなります。
こちらの破り継は右側半分に白台紙を左側に大きく色紙を集めたタイプのもので、白台紙との継口はやや滑らかですが、染紙紙片同士は小刻みに波打ったタイプのものです。一部には金銀を鏤めていない青色の具引唐紙が用いられており、湖のようにも見えます。右側の白台紙には唐草柄の無い具引紙が使用されています。
 
  
三十六人集 破り継 『人』 (伊勢集) 左上部分拡大 左上破り継部分


伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打に
光を当てた見え方
 
 伊勢集・破り継 『人』左上破り継部分の拡大です。
下側中央のの藍白の唐紙柄は、小菊唐草で破り継紙片の様に使用してあります。
この写真の中に4枚の破り継紙片、1枚の唐草柄の無い白台紙が有ります。
   
三十六人集 破り継 『人』 (伊勢集) 左下部分拡大 左下側破り継部分

花鳥折枝金銀
袷型打
(千鳥・紅葉・松枝・柳・草藤)


 
伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打に
光を当てた見え方
 伊勢集・破り継 『人』
左下側破り継部分の拡大です。左下隅の黄土色紙片と濃紫根色の紙片には金銀が鏤められています。
上側中央の藍白色は唐草柄(小菊唐草)の有る具引を使った紙片です。
花鳥折枝金銀袷型打は原紙の物とは異なります。同等の雰囲気の柄としてご了承下さい。
 
三十六人集 破り継 『人』 (伊勢集) 右下側台紙部分拡大 染紙台紙部分
花鳥折枝金銀袷型打

(千鳥・紅葉・草藤・蝶々・藤袴)


 
伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打に
光を当てた見え方
 
伊勢集・破り継『人』  花鳥折枝金銀袷型打 
右側の台紙部分は唐草柄の無い白色の具引染紙です。
 


伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 書手本(伊勢集)   解説及び使用字母
 伊勢集・人 書手本 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第三十五紙 破り継料紙

歌番号は伊勢集内での通し番号                 青色文字は
使用字母        解釈(現代語訳)
322
 (ぬれかへり せかれぬみをに ひかれてや、)
 われさへうきに なかれよりけむ


323
 ゆめとても 人にかたるな しるといへば、
 たまくらならぬ まくらだにせず


324
 いたづらに たまるなみだの つつまれば、
 これしてけてと いはまし物を


   人
325
 おも影は みづにつけても みえずやは、
 心にのりて こがれし物を


   かへし

326
 こころにや のりてこがれし あふみてふ、
 なばいたづらに みづかけもせで


327
 わすらるる わがみをしらで はまちどり、
 ふみとめてきと たのみけるかな


328
 あひもみぬ としのわたりに ぬれくれば、
 みをふかからぬ 心とやみる


329
 わがごとく 物はおもはじ たなばたも、
 (あふなぬかをし 待いつとおもへば)


 
322
 (奴禮可部利 世可礼奴三越爾 比可連天也、)
 和礼左部宇支仁 奈可礼與利計武


323
 遊免止天毛 人爾可太類奈 之流止以部者、
 太万久良那良奴 末久良太爾世須


324
 以堂川良仁 太万類奈三堂能 徒々末礼者、
 己禮之天希天止 以者末之物越


   人
325
 於毛影者 美川爾川計天毛 美衣須也者、
 心爾能利天 己可礼之物乎


   可部之

326
 己々呂爾也 能利天己可礼之 安婦美天不、
 奈者以太川良爾 美徒可希毛世天


327
 和春良留々 和可三超之良天 者万遅止利、
 婦三止女天支止 太乃三計留可那

328
 安比毛美奴 止之能和太利爾 奴礼久連波、
 美乎婦可々良奴 心止也美類


329
 和可己止久 物者於毛者之 堂那者太裳、
 (安婦奈奴可乎之 待以川止於毛部者)


「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「禮」は「礼」とすることも。
( )内は次項にあり。

          現代語訳                      解釈         解説及び使用字母

322

「濡れ帰り急かれぬ澪に引かれてや、我さへ浮きに流れ寄りけむ」
濡れ帰ってまいりましたよ、激しく流れていた澪に引かれましてね、私でさへ浮き上がって流れに寄ってしまいそうでしたよ。



323
「夢とても人に語るな知ると云えば、手枕ならぬ枕だにせず」
夢だと云っても人に語るではない、知れるところとなれば手枕ではないが枕ですらして寝る事が出来なくなりますよ。



324
「徒らに溜まる涙の慎まれば、これしてけてと言はまし物を」
空しい事にたまる涙に気おくれすれば、こうして欲しいせいだと言ったらよかったでしょうに。


   人

325
「面影は水に付けても見えずやは、心に乗りて焦がれし物を」
面影は水に漬けても見えないのだろうか、深く心にとめて恋い慕っていれば良かったでしょうに。


   返し

326
「心にや乗りて焦がれし淡海てふ、なば徒らに水掛けもせで」
心に留めて憧れていたのは琵琶湖と言う湖ですよ、それなら無駄に水掛もしない事ですよ。


327
「忘らるる我が身を知らで浜千鳥、踏み止めて来と頼みけるかな」
忘れられる私の事は知らないでしょうに、浜千鳥よ踏んで跡を残してきてよと頼んでみたかなあ。



328
「相も見ぬ年の渡りに濡れ来れば、澪深からぬ心とや見る」
契りを交わしてしまった、年に一度の事とは言え濡れ沙汰となれば、澪も深くない心と見られてしまうでしょうか。



329
「我が如く物は思はじ七夕も、逢ふ七日愛し待ち出づと思へば」
自分の事のように物事を思わないことです、七夕も逢う七日を愛しんで待ち受けて出会うのだと思えば。


322
(ずぶ濡れになって帰ってまいりましたよ、激しく流れていた水脈に引き込まれましてね、私でさへ浮き上がって流れに引き寄せられてしまいそうでしたよ。)との意を詠んだ歌。「流れ」は「世の中の趨勢」であり、「浮き」は「憂き」との掛詞で心外な事ばかりで心身共に疲れ、心閉ざされたような心地に吸い寄せられてしまいましたよ。との意も含む。

323
(幾ら夢だからと云っても決して他人に喋ってはなりませんよ、人様に知られることとなれば腕枕は愚か枕でさへ高くして寝る事は出来なくなってしまいますよ。)との意を詠んだ歌

枕す;頭を枕の上に乗せて寝る。枕にして寝る。

324
(暇に任せてする事が無いままに溢れ来る涙に気が引けてしまうのならば、こうして欲しいからだと言ってしまえば良かったのでしょうに!。)との意を詠んだ歌。

325
(人の影は水の中に実態が無くても水面に映るのにあの人の面影は水に浸かっても見えないのでしょうか、こんな事ならもっと関心を寄せて心に留めて恋い慕って居ればよかったなあ)との意を詠んだもの。
もの
物を;…のになあ。…なら良いのだがなあ。詠嘆の意を表す「終助詞」


326
(心に留めて憧れていたのは琵琶湖と言う湖ですよ、それなら無駄に水掛け遊びもしない事ですよ。何の役にも立ちませんよ、琵琶湖は大きくて水の不足することも無いのでね)と返して詠んだ歌

「掛け」は「欠け」との掛詞。
あふみ  び わ こ   あふみ
淡海;琵琶湖。近江は古くは「淡海」と書き、淡水の海のある国の意。

327
(忘れ去られる運命の私のことなど知らないで有ろうに浜千鳥よ、踏んで足跡を残してきてよ=手紙をよこさないでよと頼んでいたのかなあ。)との意。

「踏み止め」は「文留め」との掛詞。

328
(男女の契りを交わしてしまいました、年に一度の事とは言っても色恋沙汰となれば、誠を尽くさない心の持ち主だと思われてしまうのでしょうか。)との意。
とし  わた
年の渡り;一年に一度彦星が天の川を渡って織女星に逢う事。

329
(自分の事のように物事を思わなければ好いのです、七夕だって逢う為の七月七日を愛しく思って待ちに待って出会うのだと考えればね。)との意。



みをふか
                                   みをつくし
澪深からぬ;澪が深ければ杭を打って舟の航路を示す事が出来る(=澪標)が、澪が深くなければ危ないので杭を打つほどのことも無く(=澪標とならずに身を尽くすことも無い)なるので、誠の無い事。道徳心の無い事。


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解説及び使用字母
 
 
 
三十六人集 破り継 『人』 (伊勢集) 左上側破り継部分拡大
花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 左上側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『人』左上側破り継部分の拡大 花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態  
 
三十六人集 破り継 『人』 (伊勢集) 左下側台紙部分拡大
花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 左下側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『人』左下側破り継部分の拡大 花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態  
 
三十六人集 破り継 『人』 (伊勢集) 右下側台紙部分拡大
 花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『人』 第三十五紙 右下側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『人』右下側破り継部分の拡大 花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態