三十六人集 伊勢集(石山切) 具引唐紙『丸唐草』(清書用臨書用紙) 戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ  戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第四十紙料紙、白具引を施し白雲母で柄摺りを行った具引唐紙『丸唐草(二重複丸紋唐草)』の部分の清書用臨書用紙になります。
丸唐草は花唐草(宝相華唐草)の一部分に、四つの花柄をあしらった五百円玉大の二重丸紋の外側に、更に蔓草を繋げた柄の二重丸紋で包んだような柄の紋なので二重複丸紋と呼ばれ、それぞれの二重複丸紋が花唐草の様な蔓草で包まれるように繋がった柄となっている為、二重複丸紋唐草と云われます。それを簡略して丸唐草と呼びます。人によっては重巻複丸唐草と呼ぶこともあります。
伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の臨書には同じ料紙をご利用頂くか、白具引料紙(花鳥折枝)をご利用下さい。

三十六人集 具引唐紙 『丸唐草』 (伊勢集) 第四十紙料紙   伊勢集 具引唐紙 『丸唐草』 第四十紙 書拡大へ
破り継料紙の書手本
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第四十紙用料紙
伊勢集・具引唐紙『丸唐草(二重複丸紋唐草)』 (半懐紙)原本より一回り大きくなります。
こちらの孔雀唐草の具引唐紙料紙は古筆料紙では紫に下染されたものに白色の胡粉で具引され更に白雲母で柄を摺り出された唐紙料紙になります。臨書用紙では薄紫に色付けした具を塗ったものになります。
 
  
三十六人集 具引唐紙 『丸唐草』 (伊勢集) 右上側部分拡大 右上側部分


 
 伊勢集・白具引唐紙 『丸唐草』右上側部分の拡大です。
花鳥折枝金銀袷型打
松枝・千鳥・蔓竜胆・蝶々・紅葉 。
   
三十六人集 具引唐紙 『丸唐草』 (伊勢集) 左下側部分拡大 左下側部分

花鳥折枝金銀
袷型打
(千鳥・蝶々・紅葉・松枝・柳・草藤)

 伊勢集・白具引唐紙 『丸唐草』 花鳥折枝金銀袷型打
左下側部分の拡大です。写真の右側にあるのが、孔雀の胴体から頭にかけての部分になりまっす。
花鳥折枝金銀袷型打は原紙の物とは異なります。同等の雰囲気の柄としてご了承下さい。
 
三十六人集 具引唐紙 『丸唐草』 (伊勢集) 右下側部分拡大 染紙台紙部分
花鳥折枝金銀袷型打

(千鳥・紅葉・蕨・蝶々・桔梗)


 
具引唐紙 『丸唐草(二重複丸紋唐草)』 墨摺り柄 拡大へ
二重丸柄部分墨摺りに
して柄を見易くしたもの
 
伊勢集・白具引唐紙『丸唐草』  花鳥折枝金銀袷型打 
千鳥・蔓竜胆・蝶々・紅葉・松枝・蓼。
 


伊勢集 具引唐紙 『丸唐草』 第四十紙 書手本(伊勢集)     第四十紙
  『丸唐草』
(二重複丸紋唐草)
解説及び使用字母
 伊勢集・『和可世己乎』 書手本 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第四十紙 具引唐紙料紙 『丸唐草』

歌番号は伊勢集内での通し番号                青色文字は
使用字母        解釈(現代語訳)
389
 わがせこを ならしの山の よぶこどり、いも
 よびかへせ よのふけぬとき


390
 みちのくは いつくはあれど しほかまの、
 うらこぐふねの ふなでかなしも


391
 あしろいけの はしたにおふる たまささひ、
 ひさしくなりぬ ゆめにあひみて

392
 みつのうらの みつのはまとは なりぬとも、
 なにのかひかは あらむとすらん


393
 つのくにの みつのほりえに あめふれば、みき
 はもみえず まさるわがこひ


394
 いかでかと おもふこころは ほりかねの
、ゐより
 もなをぞ ふかさまされる


395
 あふみのや しかのうらかぜ うらめしく、
 たづねきたれど かゐなかりけり


396
 いはしみづ いはぬ物から こかくれて、たぎ
 つこころを ひとはしらなむ


397
 ありしとき ひひきのなたと あれしかは、
 こひしからすの せきそゆくらん


389
 和可世己乎 奈良之能山乃 與婦己止利、以毛
 與比可部世 與能婦希奴止支


390
 美遅能久波 以川久波安禮止 之本可末能、
 宇羅己久婦年能 不奈天可那之母


391
 安之呂以希能 者之太爾於婦類 太末左々比、
 比左之久奈利奴 由女爾安比美天

392
 美徒乃宇良能 美川乃者万止波 奈利奴止毛、
 奈爾乃可比可者 安良无止春良无


393
 川乃久仁能 美川乃本利衣仁 安免婦礼者、美支
 者毛美衣須 末佐類和可己比


394
 
以可天可登 於毛婦己々呂者 本利可年能、為與利
 毛奈遠楚 婦可左末左礼類


395
 安婦美乃也 志可能宇良可世 宇羅女之倶、
 太川年幾多礼止 可為奈可利希利


396
 以者之美徒 以者奴物可良 己可久礼天、多支
 徒己々呂遠 比止者之良奈無


397
 安利之止支 比々支乃那太止 安禮之可者、
 己比志可良寸乃 世支所遊久良无


「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「禮」は「礼」とすることも。
( )内は次項にあり。

          現代語訳                     解釈         解説及び使用字母

389

「我が背子をならしの山の呼子鳥、妹呼び返せ夜の更けぬ時」
夫を馴らす為にならしの山の呼子鳥よ、妻を呼び戻してよ夜が更けてしまわない内に。



390
「陸奥は何処はあれど塩釜の、浦漕ぐ舟の船出かなしも」
陸奥では他の場所はともかく、塩釜では浦を漕いで出て行く舟の船出は心に染みて感じられるよなあ。



391
「網代池の端に生ふる玉鷦鷯、久しく成りぬ夢に相見て」
網代池の隅っこで生きている鷦鷯よ、随分と経ってしまった事ですよ夢で逢って契りを結んでからというものは。



392
「御津の浦の満つの浜とは成りぬとも、何の甲斐かは有らむとすらむ」
御津の入り江の一杯になった浜辺とはなってしまったとしても、何かしらの甲斐は有るのでありましょう。



393
「津國の御津の堀江に雨降れば、水際も見えず勝る我が恋」
摂津の國の御津の運河に雨が降ると、水際が見えなくなり私の恋心も勝ってしまいますよ。



394
「如何でかと思ふ心は堀金の、井よりも猶ぞ深さ勝れる」
どうしてなのかと思う心は堀金の井戸よりも猶の事深さが勝っておりますよ。



395
「近江のや滋賀の浦風恨めしく、訪ね来れど甲斐無かりけり」 
近江にある滋賀の浜辺を吹く風は恨みに思われますねえ、はるばるやっては来たけれども何の甲斐もなかったなあ!。



396
「石清水云わぬ物から木隠れて、激つ心を人は知らなむ」
石清水の様に言わないけれども木陰に隠れる様にして、激しく荒れている心を他人は知らないでしょうね。



397
「在りし時響きの灘とあれしかば、恋しからずの関ぞ行くらん」
あの時の響灘の様に大荒れていたならば、恋しく思うこともなく関を越えて行ったでしょう。
「在りし時響きの名だと有れしかば、恋しからずの尺素行くらん」
昔の様に評判の名であるとしたならば、恋しく等有りませんよとの手紙も通ったのでしょうね。

389
(私の夫を我が家のしきたりに慣れさせるため、呼び戻す為の笛を鳴らすならしの山の呼子鳥よ、妻を呼び戻しなさいな、夜が更けてしまわない内に。)との意を詠んだ歌。
「ならし」は「馴らし」と「鳴らし」との掛詞。


390
(陸奥の他の場所ではともかく、ここ塩釜では港を漕いで出て行く舟の門出は自分の事の様に心に染みて感じられることだなあ。)との意を詠んだ歌

陸奥;青森・岩手・宮城・福島の四県。

391
(網代漁をする池の端っこの方で中途半端に生きている様子の鷦鷯よ、随分と経ってしまった事ですねえ!夢の中で貴方と逢って契りを結んでからは、もう三十三歳になってしまいましたよ。)との意を詠んだ歌。
たまさざひ             さざひ(みそさざい)
玉鷦鷯;「たま」は接頭語で「鷦鷯」の美称。黒くて細かいゴマ斑の有る非常に小さな鳥で、雄は美声をとどろかせて囀る。
「みそさざい」は「鷦鷯」と「三十三才」との掛詞

392
(喩え御津の浜の舟で一杯になった浜辺の様に私の心の内も貴方への思いでいっぱいに成ったとしても、なにがしかの値打は有るのでしょうね。)との意を詠んだもの。

うら;「浦」と「うら(心に秘めた思い、内心)」との掛詞。


393
(摂津の国に雨が降ると流れ来た水で増水した運河の水際も見えなくなるように、私の恋心も見境が無くなり思いが募ってしまいますよ。)との意を詠んだ歌

堀江;地面を掘って水を通した人口の水路。


394
(何とかして振り向かせたいものですよと思う気持ちは、堀金の井戸の深さよりも更に一層深いものとなっておりますよ。)との意を詠んだ歌。


395
(近江にある志賀の都まではるばると尋ねては来たけれども、あの人の心の内を吹く思いの風は浜風の様に冷たく残念に思われて来た甲斐も無かったなあ)との意を詠んだ歌。

うらかぜ;「浦風」と「心風」との掛詞。

396
(岩の間から湧き出る清水の岩ではないが口に出しては言わないものの隠れる様にしているので、苛立つ心を他の人はきっと知らないでしょうね。)

397
(あの頃の響灘の時化る海の様に大荒れしていたならば、恋しく思って心痛めることも無く難なく関を越えて行ったのでしょう。)
或は
(昔の様に世間に広く知れ渡たった名が今でも存在しているのならば、恋しく等ございませんよとの手紙も届けたのでしょうね。)と負けず嫌いに皮肉を込めた歌とも取れる。


よぶこどり
   
呼子鳥;人を呼ぶような鳴き方をする鳥。郭公とも時鳥とも云われている。

みつ                なにわ     おほとも
御津;大阪湾にある難波の港。難波の御津、大伴の御津とも。

つのくに
津國;摂津の一帯。今の大阪府の北部と兵庫県東部に渡る地域一帯の古称。




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解説及び使用字母
 
具引唐紙 『丸唐草(二重複丸紋唐草)』 墨摺り柄 拡大  『丸唐草』(二重複丸紋唐草)

墨摺り 柄見本
 『丸唐草』(二重複丸紋唐草)墨摺り (墨で柄を見易くしたものになります)