三十六人集 伊勢集(石山切) 破り継『偽らず』(清書用臨書用紙) 戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ  戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第四十三紙料紙、破り継『以川者良須』の歌で始まるの部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の臨書には同じ料紙をご利用頂くか、白具引料紙(花鳥折枝)をご利用下さい。

三十六人集 破り継 『偽らず』 (伊勢集) 第四十三紙料紙   伊勢集 破り継 『偽らず』 第四十三紙 書拡大へ
破り継料紙の書手本
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第三十九紙用料紙
伊勢集・破り継『偽らず』 (半懐紙)原本より一回り大きくなります。
こちらの破り継は左側に白台紙を配し、中央下側付近から島の形に染紙5枚を使用し、右上隅にも同様に濃い目の3枚の染紙で島を配して、間にある藍白の染紙が流れる川の様に映える破り継に仕上げたタイプのものです。
左側の白台紙は唐草柄の無い具引紙と成っております。
 
 左上側白台紙部分 
三十六人集 破り継 『偽らず』 (伊勢集) 左上部分拡大 左上白台紙部分


伊勢集 破り継 『偽らず』 第四十三紙 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打に
光を当てた見え方
 
 伊勢集・破り継 『偽らず』左上具引唐紙台紙部分の拡大です。
唐紙柄の無い白具引で、花鳥折枝金銀袷型打が施してあり、光を受ければ金銀の輝きもちゃんと感じられます。
この写真の中に1枚の破り継紙片、共に唐紙柄の無い1枚の白台紙と1枚の色台紙が有ります。
 左下側破り継部分
三十六人集 破り継 『偽らず』 (伊勢集) 右上側部分拡大 右上側破り継部分

花鳥折枝金銀
袷型打
(千鳥・紅葉・蓬・柳・草藤)


 
伊勢集 破り継 『偽らず』 第四十三紙 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打に
光を当てた見え方
 伊勢集・破り継 『偽らず』
左下側破り継部分の拡大です。黄土色紙片と濃紺色紙片及び橡色と焦茶色の紙片には金銀が鏤められています。
左側の白台紙は唐紙柄の無い白具引です。
花鳥折枝金銀袷型打は原紙の物とは異なります。同等の雰囲気の柄としてご了承下さい。
 右下側破り継部分
三十六人集 破り継 『偽らず』 (伊勢集) 右下側台紙部分拡大 染紙台紙部分
花鳥折枝金銀袷型打

(千鳥・紅葉・草藤・蝶々・藤袴)


 
伊勢集 破り継 『偽らず』 第四十三紙 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打に
光を当てた見え方
 
伊勢集・破り継『偽らず』  花鳥折枝金銀袷型打 
右側の色台紙部分は唐草柄の無い藍白色の具引染紙です。
 


伊勢集 破り継 『以川者良須』 第四十三紙 書手本(伊勢集)   解説及び使用字母
 伊勢集・『以川者良須』 書手本 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第四十三紙 破り継料紙

歌番号は伊勢集内での通し番号                青色文字は
使用字母        解釈(現代語訳)

   かえし

445

 いつはらず こころをよする のりのあめの、

 そそぐしるしに ぬるるたもとか


   くることかたかりける人に七月七日
   にいひやりける
446
 いむべくは しのふ物から よもすがら、
 あまのかはにぞ うらやまれぬる

   
をむなしのみや
   女四宮かくれたまひてのち
447
 ここらよを きくがなかにも かなしきに、
 人のなみだは はてやしぬらん


   御かへし
448
 きく人も あはれといふなる おもひには、
 いとどなみだの つきずもあるかな


   またこれよりまいらする
449
 ことだにも かよふみならば なき人の、
 なみだのほども きこえきなまし


   御かへし
450
 ゆきかよふ みちはなくとも しでのやま、
 ことのはをだに ふきもこさなん

     

   宮の御てかかせたまへる物をみて
451
 なき人の かきとどめける みづぐきは、うち
 みるよりぞ かなしかりける



   可部之
445

 以川者良須 己々呂乎與春流 乃利能安免乃、
 楚々久之流志仁 奴留々堂毛止可


   久類己止可多可利計留人爾七月七日
   耳以日也計留
446
 以武部久波 志乃不物可良 與毛寸可良、
 安万乃可者仁所 宇良也末礼奴留


   女四宮可久礼堂万比天乃知
447
 己々良與遠 支久可奈可仁毛 可奈之幾仁、
 人乃那三太者 々天也之奴良无


   御可部之
448
 幾久人毛 安者禮止以不奈留 於毛比耳葉、
 以止々那三多乃 川支須毛安留可那


   末太己礼與利末以良須留
449
 己止太爾毛 可與婦美奈良波 奈支人乃、
 奈美堂能本止毛 支己盈左幾那末之


   御可部之
450
 遊支可與婦 美知波奈久止毛 志天乃也万、
 己止乃者乎多仁 不支毛己佐奈无


   宮乃御天可々世太万部留物遠美天
451
 奈支人乃 可支止々免計類 美川久支波、宇遅
 美類與利楚 可奈之可利希類



「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「禮」は「礼」とすることも。
( )内は次項にあり。

          現代語訳                     解釈         解説及び使用字母

445

「偽らず心を寄する法の雨の、注ぐ標に濡るる袂か」
偽りなく心を寄せる法の雨のであるかのように、降りかかった印に濡れている袂なのでしょうか。



   来ることが難しかった人に七月七日に
   歌を詠んで送る

446
「忌むべくは偲ふ物から夜もすがら、天の川にぞ羨まれぬる」
避けるべきは思い慕いつつも一晩中は無しですよ、きっと天の川に羨ましがられてしまいますよ。


   美女で若い四宮様がお亡くなりになって後に


447
「ここら世を聞くが中にも悲しきに、人の涙は果てやしぬらん」
ここら辺りの世の中で聞いた内でも心が痛むので、人の涙は尽き果てて無くなってしまうでしょう。



   御返しの歌

448
「聞く人も哀れと言ふなる思ひには、いとど涙の尽きずもあるかな」
聞く人もしんみりとした心地であると言うような思ひには、更にいっそう涙の尽きないことにもなるのだろうなあ。



   更に重ねて進上致しました歌

449
「言だにも通ふ身ならば亡き人の、涙の程も聞こえきなまし」
言葉だけでも通じる身分であるならば、亡くなられた人の涙の程度も聞こえて来たでありましょうに。



   御返しの歌

450
「行き通ふ道はなくとも死出の山、言の葉をだに吹きも越さなん」
行き来する道は無いけれども死出の山では、言葉だけでも吹き越せることでしょう。



   宮様の御手(筆跡)のお書きになられた物を見て

451
「亡き人の書き留めける水茎は、打ち見るよりぞ悲しかりける」
亡き人が書き留めていた筆跡は、ちらっと見るや否や悲しみが思い起こされますよ。


445
(私の袖が濡れているのは嘘偽りなく心寄せて仏法に信心しているので、本当に法の雨でも降ったかのように、その証明として濡れている袖なのでしょうか。)との意を詠んだ歌。
のりのあめ
法の雨;仏法が衆生を慈しみ潤すのを雨に例えて云う言葉。

濡るる袂;涙に濡れたような様子の袖

446
(避けるべきことは例えずっと思い慕っていたとしても一晩中はよしなさいよ、きっと天の川に羨ましがられて妬まれますよ。)との意を詠んだ歌

物から;…けれども。…ものの。逆説の確定条件を表す。

ぬる;…してしまう。完了の助動詞「ぬ」が「ぞ」を受けての連体形「ぬる」。動作を話し手が完了させるのではなく、意志とは無関係に自然に作用が完了することを表す。

447
(時代も地域も含めてここら中の多くの世間で聞いた中でも随分心が痛むので、きっと人々の涙も尽き果てて無くなってしまうのでしょうね。)と追悼の意を詠んだ歌。


448
(聞く人もしみじみと心を動かされるほど気の毒なことですと口にしてしまうほどの気持ちになるので、そうでなくとも涙の尽きないことにもなるのだろうなあ。)との意を詠んだもの。

いとど;程度が一層甚だしい様。ますます。いよいよ。程度の甚だしさを示す副詞「いと」が重ねられた「いといと」の転。

まいらす;差し上げる。献上する。「参る」よりも謙譲の気持ちが強い。

449
(出来ればお噂だけでも、互いによく知っている間柄であったなら、亡くなられた御方の悲しみの程度も自ずと耳に入って来たのでしょうに。)との意を詠嘆して詠んだ歌

450

(人々の行き交う道は有りはしませんが死出の山では、せめて和歌だけでも交わし合わせるようになりたいものですね。=出会わなくとも意思の疎通が出来ると良いですね。)との意を返して詠んだ歌。

死出の山;冥途にあると云われる山。死の苦しさを山に喩えた物。唐末の偽経で十王経に説く死後初七日、秦広王の庁に至る間にある険しい山。

451
(お亡くなりになられた宮様の書き残された筆跡を、一目見るだけで悲しみが込上げて来るものだったのですねえ。)との意を詠んだ歌。

かりける;…ことだったのだ。…ことであったなあ。前にある形容詞の連用形語尾「く」に動詞「あり」が付いた形容動詞「悲しくあり」が約音となり「悲しかり」となった語尾の「かり」に過去の助動詞「けり」が付き、係助詞「ぞ」を受けて「ける」となったもの。今まで気が付かなかった事実に気が付いて述べる意を表す。


をむなしのみや
 
女四宮;四番目の皇女。(をみな)又は音便の(をんな)とも。参考までに年を取った女性に対しては「おみな」や「おんな」として「を」から「お」へ使い分けていたとされる。また「女」の読みは皇族や貴族に対しては「をんな(おんな)」を使い、やや蔑んだ意の有る「め」を呼ぶことは殆どなかったそうである。

お て 
御手;人の筆跡の尊敬語。




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解説及び使用字母
 
 
 左上側台紙部分
三十六人集 破り継 『偽らず』 (伊勢集) 左上側破り継部分拡大
花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『偽らず』 第四十三紙 左上側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『偽らず』左上側台紙部分の拡大 花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態  
 左下側破り継部分
三十六人集 破り継 『偽らず』 (伊勢集) 左下側台紙部分拡大
花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『偽らず』 第四十三紙 右上側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『偽らず』左下側破り継部分の拡大 花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態  
 右下側破り継部分
三十六人集 破り継 『偽らず』 (伊勢集) 右下側台紙部分拡大
 花鳥折枝金銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『偽らず』 第四十三紙 右下側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『偽らず』右下側破り継部分の拡大 金銀大小切箔砂子に光を当てた状態
写真は同様の料紙の同様の部分ですが、同じ造りの別の料紙となります。