三十六人集 伊勢集(石山切) 破り継『草枕』(清書用臨書用紙) 戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ  戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第四十六紙料紙、破り継『草末久良』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の臨書には同じ料紙をご利用頂くか、白具引料紙(花鳥折枝)をご利用下さい。

三十六人集 破り継 『草枕』 (伊勢集)   伊勢集 破り継 『草末久良』 第四十六紙 書拡大へ
破り継料紙の書手本
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第四十六紙用料紙
伊勢集・破り継『我宿波』 (半懐紙)原本より一回り大きくなります。
こちらの破り継は左側半分に色台紙を、中央縦向に細長く破り継紙片を配して右側に白台紙を置いて、左右に隔てて見えるタイプのものです。左側には金銀を鏤めていない染紙が用いられており、唐草柄の無い色台紙で代わりに野草や鹿が描かれており草枕をする野原のようにも見えます。
  
三十六人集 破り継 『草枕』 (伊勢集) 左上部分拡大 左上破り継部分


伊勢集 破り継 『草枕』 第四十六紙用 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打及び野草銀燻銀袷型に
光を当てた見え方
 
 伊勢集・破り継 『草枕』左上破り継部分の拡大です。
左側の薄茶色の染紙は色台紙で、唐草柄の無い唐紙の様に使用してあります。
この写真の中に2枚の破り継紙片、2枚の台紙(左側薄茶色は具引染紙の色台紙、右端白色は具引染紙)が有ります。
   
三十六人集 破り継 『草枕』 (伊勢集) 左下部分拡大 左下側破り継部分

野草銀燻銀
袷型打
(芒・桐・若松・茅・犬蓼)


 
伊勢集 破り継 『草末久良』 第四十六紙 部分拡大へ
花鳥折枝金銀袷型打に
光を当てた見え方
 伊勢集・破り継 『草枕』
左下側色台紙部分の拡大です。野草の銀・燻銀の袷型打ちと夫婦鹿の色打ちです。

鹿の柄を見易くするため、陰での見え方になります。
 
三十六人集 破り継 『草枕』 (伊勢集) 右下側破り継部分拡大 染紙台紙部分
花鳥折枝金銀袷型打

(千鳥・紅葉・桜草・蔓竜胆)
 
伊勢集・破り継『草枕』 右下側破り継部分  花鳥折枝金銀袷型打 
右側の台紙部分は唐草柄の無い白色の具引染紙です。
 


伊勢集 破り継 『草末久良』 第四十六紙 書手本(伊勢集)   解説及び使用字母
 伊勢集・草枕 書手本 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第四十六紙 破り継料紙

歌番号は伊勢集内での通し番号                 青色文字は
使用字母        解釈(現代語訳)
473
 草まくら そでは露にも ぬれしかど、
 わがすそゆきし ふちせだにのき


   かまつほくさ

474
 山またをし そぼつばかりも もりつれば、
 秋もからむと わかまつほくさ


475
 うきみより きことしづくは こほるとも、
 いつまもらばか もるもしるべき


476
 うつせみの おもひにこゑし たえざらば、
 またも雲まに つゆはおくらん


477
 あけぬとも たたじとぞおもふ からにしき、
 君がこころし かたなならずば


   うたの院よりおはれて人のかたきに
   なりける人のもとに

478
 のけさまに 人におはれし われなれや、
 せなかあはせに 人のなるらん


479
 はこつくり せなかあはせに なりぬとも、
 おなじこころに むすばれぞせむ


480
 きしもなく しほもみちなば まつやまを、
 したにてなみは こさむとぞ思


481
 みえもせぬ ふかきこころを かたりくは、
 (人にかちぬと おもふ物かは)

 
473
 草末久良 楚天波露爾毛 奴礼之可止、
 和可春所由支之 不知世太爾乃支


   可万川本久左

474
 山末太遠志 所本川者可利毛 々利徒礼者、
 秋毛可良武止 和可万徒本久左


475
 宇支美與利 喜己止之徒久者 己保類止毛、
 以川末毛良者可 毛留毛之流部支


476
 宇徒世美乃 於毛比爾己恵之 多衣佐良波、
 末太毛雲末仁 川由者於倶良无


477
 安希奴止毛 太々之止所於毛婦 可良仁之支、
 君可己々呂之 可太那々良寸者


   宇太乃院與利於者礼天人乃可多支仁
   奈利計留人能毛止爾

478
 能希左末仁 人爾於者礼之 和礼奈連也、
 世那可安者世仁 人乃奈類良无


479
 者己川久利 世奈可安者世仁 奈利奴止毛、
 於那之心爾 武春者礼所世无


480
 支之毛奈久 志保毛美遅那者 万徒也末遠、
 志多爾天那三者 己佐武止所思


481
 美衣毛世奴 不可支己々呂遠 可太利倶者、
 (人爾可知奴止 於毛婦物可八)


「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「禮」は「礼」とすることも。
( )内は次項にあり。

          現代語訳                      解釈         解説及び使用字母

473

「草枕袖は露にも濡れしかど、我が裾往きし淵瀬だに退き」
野宿をしたので袖は露にも濡れてしまいましたが、私の裾は通り過ぎてきた淵瀬でさへ退いてしまいましたよ。


   かまつぼ草

474
「山また愛し濡つばかりも漏りつれば、秋も絡むと我が俟つ穂草」
山も等しく愛おしいですよ、雨がよく降るばかりでも零れ落ちれば、秋も絡んでくると私が期待して待っている尾花ですよ。


475
「憂き身よりき毎雫は零るとも、何時守らばか洩るも知るべき」
辛いことの多い身の上から木々の雫が零れようとも、何時守れば良いのか、守ることも漏れてしまうことも認識すべきですよ。


476
「現臣の思ひに聲し堪えざらば、またも雲間に露は置くらん」
世間で暮らす人の思いが聞こえてきて堪えられなければ、またしても雨の上がった時でも露は降りて来るのでしょうね。


477
「上げぬとも裁たじとぞ思ふ唐錦、君が心し片名成らずば」
官位を上げられたとしても仕立てないと思いますよ唐錦を、貴方の心に片名が残らないのであれば。


   宇多の院から追い出されて人の結婚相手に
   なってしまった人の元に、

478
「仰け様に人に追われし我なれや、背中合はせに人のなるらん」
仰向けに人に追われる身となってしまった私ですが、背中合わせの人となってしまいましたよ。


479
「羽子造り背中合はせになりぬとも、同じ心に結ばれぞせむ」
羽子板の様に背中合わせになってしまったとしても、同じ心で結ばれたいものですね。


480
「岸も無く潮も満ちなば松山を、下にて波は越さむとぞ思ふ」
岸も無く潮も満ちたならば松山を下にして、波は超えて行くのだろうと思いますよ
又は
「雉も鳴く潮も満ちなば待つ山を、下にて波は越さむとぞ思ふ」
雉も鳴いている潮も満ちてしまったので、待つ山を下にして波は越えて来るのだろうと思いますよ。


481
「見えもせぬ深き心を語り来は、人に勝ちぬと思ふ物かは」
見る事さへ叶わぬ心の奥底を語って行くのは、人に勝てるとでも思っているからなのだろうか。


473
(私の人生は野宿の様な物ですので何度も涙で袖を濡らしましたが、過ごしてきた道のりは無常ともいえる世の中の変わり易さでさへ遠のいてしまう程のものでしたよ。)との意を詠んだ歌。


474
(山もまた愛おしいですよ、雨が降るばかりであっても涙が零れ落ちればそれを搔き消してくれますし、秋が来れば気にしないで済む飽きも離れずに纏い付いてくるでしょうしね。そうありたいと願って待っている尾花=秋ですよ。)との意を詠んだ歌

「秋」は「飽き」との掛詞。

475
(辛いことの多い身の上ですから事ある毎に涙が零れ落ちようとも、何時守ればよいのか自身を守るだけでなく、関係が漏れないよう心がける事も認識するべきですよ。)との意を詠んだ歌。

「守る」は「洩る」と「木毎」と「機毎」との掛詞。

476
(この世に未練が耳打ちして堪える事が出来なければ、気持ちの晴れ間であっても再び涙が溢れ出すことでしょうね。)との意を詠んだもの。


477
(成し遂げられたとしても唐錦を仕立てる事はすまいと思いますよ、貴方様の心の中に私の一文字を刻む事が出来なければね。)との意を詠んだ歌
からにしき
唐錦;紅色の入った美しい模様で、紅葉などにも例える事のある唐織の錦。
かたな
片名;名前の二字の内、一方の文字。例「家康」の「家」又は「康」

478
(無抵抗の状態で人に追い出される身となってしまった私ではありますが、仲の悪い状況にと人がなってしまいましたよ)との意。

お晴れ;御成。皇族・摂家などの外出、来着の尊敬語。

479
(両面が表のの様に不仲な状態に見えてしまったとしても、同じ思いで親しい関係に繋がっていたいものですよ)との意。


480
(岸も無く潮も満ちてしまったのならば、その波が松の生えている山でさへも下に沈めた状態にして通り越して来るのだろうと思いますよ)との意。
又は、
(子を思う情けの深い鳥とされる雉も鳴いているし潮も満ちてしまったので(=潮時)、老いを待つ山を下にするほどの勢いで老いの波は越してくるのだろうと思いますよ。)との意。


481
(見る事さへ出来ない心の思慮深さを語って歩くのは、人に勝てるとでも思ってのことなのだろうか、そんなことも無いであろうがなあ)との意。

物かは;…なものであろうか。(いや、そうでも無かろう)形式名詞「もの」に係助詞「か」及び「は」の付いた形で強い感動又は反語の意を表す。



かまつぼ草;キク科の多年草。田の畔や野原に自生し、高さ約60㎝程で夏になると茎の先に径3~4cmの菊に似た鮮やかな黄色の花をつける。
昔はこの花を乾かして薬用とした。小車、野車とも云う。

 ていじいん
            かんぴょうほうおう
亭子院;宇多法皇の院号。寛平法皇とも云う。又その離宮。落飾して坊主になり仏門に入った上皇を太上法皇(法皇)と呼んだ。

 う だ の                                                                                         ならびがおか
宇太野;平安京の北辺、北山南麓に位置し近辺に点在する野原の一つで、現在の京都市右京区宇多野一帯に広がっていた。西は嵯峨野、東は北野、南は双ヶ岡に接しており、9世紀の初め頃には「山陵の地(天皇の墓地)」に定められて、光孝・村上・円融の3天皇の陵墓がある。嘗ては天皇の鷹狩りの地でもあった。



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解説及び使用字母
 
 
 
三十六人集 破り継 『草枕』 (伊勢集) 左上側破り継部分拡大
花鳥野草銀燻銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『草枕』 第四十六紙 左上側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『草枕』左上側破り継部分の拡大 花鳥野草銀燻銀袷型打に光を当てた状態  
 
三十六人集 破り継 『草枕』 (伊勢集) 左下側台紙部分拡大
花鳥野草銀燻銀袷型打に光を当てた状態


伊勢集 破り継 『草枕』 第四十六紙 左下側部分拡大へ
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 伊勢集・破り継 『草枕』左下側色台紙部分の拡大 花鳥野草銀燻銀袷型打に光を当てた状態