伊勢集(石山切)  具引唐紙『花唐草』 (清書用臨書用紙)    戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第七紙料紙、具引唐紙『花唐草』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には白具引紙(花鳥折枝)をご用意ください。

伊勢集 具引唐紙 『花唐草』  伊勢集 『具引唐紙』 書拡大へ
唐紙料紙の書手本拡大
 
 具引唐紙 白『花唐草』 花鳥折枝金銀袷型打 (半懐紙) 
花鳥折枝金型打の柄は原本とは異なり、近似の物を施しております。
 



 伊勢集 具引唐紙 『花唐草』 拡大 花鳥折枝燻金銀袷型打(燻金は青金と燻銀の混合)
 花唐草中央部分 具引唐紙 白 花鳥折枝燻金銀袷型打(燻金は青金と燻銀の混合)
様々の花を包み込む様に唐草を描いてあるので、花唐草と言われております。
上の拡大画面の中に色々な齢の七つの花が有るのがお解り頂けますでしょうか?。
 伊勢集 書


伊勢集 具引唐紙 『花唐草』 拡大 
 花鳥折枝燻金銀袷型打(燻金は青金と燻銀の混合)
 左下陰の部分 光の反射の少ない様子
唐草柄も光を反射しなければグレーに見えます。

金銀袷型打も光を失い鈍い色合いです。
 


書手本

伊勢集 『具引唐紙』(花唐草)  解説及び使用字母
 伊勢集 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 具引唐紙『花唐草』 第七紙

歌番号は伊勢集での通し番号                            青色文字は使用字母           解釈(現代語訳)

   またかくきこえたてまつれる

30

 人もきぬ をばながそでも まねかれば
 いとどあだなる なをやたちなむ

   御かへし
31
 我まねく そでともしらで はなすすき
 いろかはるとぞ おもひわびつる

   うためすおくにかきてまいらす
32
 山のはの おとにのみきく ももしきを、みを
 はやながら みるよしもがな


   しのびてしりたりける人をやうやういひ

   ののしりければ、かうふりのはこにたま

   をいれたりければ、それにをんなのいひ

   つけたりける。
33
 たぎつせと なのなかるれば たまのをの
 あひみしほどを くらべつるかな

   この中宮東宮の女御ときこえさせけ

   る時、だいたまはせてよませたまひける

   御屏風の歌、をとこのゆきあひつつ物

    (いひけるゑなむありける。むめのはなの
   たよりに物いひそめたるをんなにをとこ)



    末太可久幾己衣堂天末川禮類

30

 人毛支奴 乎者那可所天毛 万年可連波
 以止々安太那留 奈遠也堂知那無

    御可部之
31
 我末禰久 楚天止毛之良天 者那春々支
 以路可者類止楚 於毛比和比川類

    宇太女寸於倶爾可幾天末以良須
32
 山乃者能 於止爾乃三支久 毛々志支越、美乎
 者也奈可良 美類與之毛可那

    志乃比天志利多利計留人乎也宇々々以比

    乃々之利希禮者、可宇不利乃者己仁堂万

    乎以禮多利希禮者、楚禮爾遠无那乃以比

    川計太利希留


33

 堂支川世止 奈能奈可類禮者 堂万能遠乃
 安比美志本止遠 久良部
徒留可那

    己能中宮東宮能女御止支己盈佐世計

    類時、堂以太万者世天與万世太万比計留

    御屏風能歌、乎止己能由支安比川々物

    (以比希類恵奈武安利計留武女乃者那能
    堂與利爾物以比楚女多類遠无那二乎止己)


「禮」は「」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
( )は次項にあり

          現代語訳                       解釈      解説及び使用字母

   又、この様にお噂されております。

30
「人も来ぬ尾花が袖を招かれば、いとど徒なる名をや立ちなむ」
人も来てしまったので花芒に袖招きをされたとなれば、たいそう色好みの評判が立ってしまう事でしょう。



   お返しの歌


31
「我招く袖とも知らで花薄、色変はるとぞ思ひ詫びつる」
私を手招きする袖だとも知らなかったのです、花薄よ、きっと蒼褪めた顔色でどうして良いか判らなくなって思い悩んでしまっていたのでしょう。



   歌を所望する奥様に書いて差し上げる、

32
「山の端の音にのみ聞く百磯城を、身を早ながら見る由もがな」
あの山の端のずっと向こうに噂だけには聞いている宮中を、以前のままの私で見る手立てが有ったらなあ。



   秘密にしていた人の事をあれこれと
   喧しく騒ぎ立てるので、高風の箱に玉(大切な物)を
   入れて(隠して)しまったので、そのことを女性が
   言いつけたのであった。


33
「たぎつ瀬と名のなかるれば玉の緒の、相見し程を比べつるかな」
激しく流れる瀬と共に名声(信用)も流れてしまった(無くなって終った)よ、玉を連ねて繋ぎ留めておく玉の緒のように顔を見せるようにする時間(を持って心を通わせ合い)親しく付き合っていたいものだなあ。



   この中宮(皇后)東宮の女御と申し上げられていた時、
   (歌の)題をお告げになられて詠ませ奉らせた
   御屏風の歌に、男性と出会いながら
   (気の利いたことを言う屏風絵でも有ったら良かったのに。
   梅の花の言伝に初めて言葉をかける女性に男性は、)




30
(ススキの穂が風に揺れる度に手招きをしているように見えてしまったなら、それこそ無実の噂が立ってしまいますよ)との意。

あだ  
徒なる名をや;色好みのうわさ、浮気の評判。無実の噂。「をや」は強調をあらわす。
はなすすき
花芒が己を呼ぶ女性の手招きに見えてしまう程の色好み。と捉えられる。

31
(花薄は穂に出でた状態(=恋の思いをあらわにした様子)なので、そうとは知らないで、狼狽えた様子で塞込んでしまってたのでしょうね)との意。




32
(手の届かないところにある噂では耳にする宮中を、身も心も以前のままでお目にかかる方法が有ったら良かったのに)との意を代弁した歌。

ももしき
百敷;禁中、禁庭、禁裏。内裏、






33
(「激つ瀬=やかましく騒ぎ立てる様子」の流れの如くに信用も流されてしまったが、玉の緒のように何時でも向かい合って心通わせ親しくいていたいものだなあ。)との願望を詠った歌。

比べつる;心を通わせ合い親しく付き合ってる。「比ぶ」の連用形「比べ」に完了の助動詞「つ」の連体形「つる」の付いた形(自分の気持ちと相手の気持ちを繰合せる意から)。

にょうご
女御;天皇の寝所に侍した高位の女官。中宮の下、更衣の上に位する。平安以降は女御の中から皇后になった。




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