伊勢集(石山切) 染紙 萱楮紙(清書用臨書用紙)     戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第九紙料紙で萱楮紙を使用して、古代茶色に染めた染紙『花鳥折枝金銀袷型打』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ料紙をご利用下さい。

伊勢集 染・中色 (古代茶)  伊勢集 染紙 『萱楮』 書拡大へ
染紙料紙の書手本
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 染・中色 古代茶(やや鼠色のくすみ) 花鳥折枝金銀袷型打


   伊勢集 書



 伊勢集 染・中色 (古代茶) 花鳥折枝拡大  花鳥折枝
金銀袷型打部分
 花鳥折枝金銀袷型打部分 光を当てて強調してあります。  
金と銀で一つの柄になるように作ってあります。
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 染・中色 (古代茶) 花鳥折枝拡大
紙屋紙
平安時代に京都紙屋院で漉いていた上質の官製紙。後になると反故紙を漉き返していたので、薄墨紙・水雲紙・宿紙などとも言った。又、綸旨を書くのに用いられたため、綸旨紙とも云われる。
 
 花鳥折枝陰部分 (染・中色 古代茶)
萱漉の特徴である漉目が確認できます。
料紙加工が施してありますので、もちろん細字が書ける様になっております。

左側半分は地色部分も陰の為、灰色っぽく映っております。
 


貫之集 染紙 『萱楮』 解説及び使用字母
 伊勢集 染紙 書 縦6寸7分、横1尺5分5厘 第九紙
(写真では花鳥折枝が不明瞭ですが、柄は有ります。)料紙は紙屋紙と呼ばれていたもの。



歌番号は伊勢集での通し番号                           青色文字は使用字母           解釈(現代語訳)
48
 ふりとけぬ しぐればかりに やまびこの

 こゑをかたみに ききかはすかな

   しはすにをとこきたり、あひぬべ

   きやうなるを、おやききつけてせ

   いすれば、いでてをんな
49
 よるこゆと たれかつけけむ あふさかの

 せきかたむめり はやくかへりね

   といふにゆきのふりければ

50
 かへるさの みちゆくべくも おもほえず

 こほりてゆきの ふりしまされば

   といふほどに、よあけぬればをとこ

51
 あふことの あはぬよながら あけぬれば

 我こそかへれ こころやはゆく
   
ちょうごんか     ていじいん
   長恨歌の屏風を亭子院のみかど

   かかせたまひてその所々よませたまひ

   けるみかどの御になして
52
 もみぢばに いろみえわかず ちるものは

 物おもふあきの なみだなりけり


48
 婦利止希奴 志久禮者可利爾 也万比己乃

 己恵乎加多美爾 支々加者春可那

   志者春仁遠止己支多利、安比奴部

   幾也宇奈類乎、於也支々川希天世

   以春禮者、以天々遠无奈
49
 與類己由止 太禮可川希々武 安不左可能

 世支可堂武女利 者也久可部利年

   止以不爾由支能不利希禮者
50
 可部流左能 美遅由久部倶毛 於毛本衣寸

 己保利天遊支能 不利之末左禮盤

   東以布本止爾、與安希奴禮者乎止己

51
 安不己止能 安者奴與那可良 安計奴連波

 我己曾加部連 己々呂也者遊久

   長恨歌能屏風乎亭子院能美可止

   加々世多万比天所乃所々與万世太万比

   計留美可止能御爾奈之天
52
 毛美遅者仁 以呂美衣和可春 知流毛乃者

 物於毛婦安支能 奈三多奈利計里


「禮」は「」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。

          現代語訳                      解釈       解説及び使用字母
48
「降り解けぬ時雨ばかりに山彦の、声を形見に聞き交すかな」
降っては中々止まない時雨(涙が止めどもなく流れ落ちる心地)であるので、山彦の声を思い出にして互いに聞き合うことにしましょうね。


  師走に男性が訪ねて来た、(娘が)面会してしまう様子なので、
  ご両親が聞きつけて制止したが女性は現れて、


49
「夜来ゆと誰か告げけむ逢坂の、関固むめり早く帰りね」
夜中に来てくださいねと誰かが言っておりましたのに、逢坂の関も厳重に警備されてしまいますよ、早く帰って下さいね。


  と言っている処へ雪が降って来たので、

50
「帰るさの道行くべくも思ほえず、凍りて雪の降りし勝れば」
帰りがけの行く道でさえ思い出されないのですよ、寒気で凍てついた上に雪が降り積もってしまいましたので。


  と言っている内に夜が明けてしまいましたので、男性は、

51
「逢ふ事の合はぬ夜ながら明けぬれば、我こそ帰れ心やは行く」
逢うことの機会の無かった夜ではあるが、明けてしまったのであれば私自身は帰ってしまうが心だけでも行くであろうか、いや行きはしない。


  長恨歌の屏風を亭子院の帝が
  お造らせなさいましてその所々をお詠みなされる
  帝の仰せに従って、

52
「紅葉葉に色見えわかず散る物は、物思ふ秋の涙なりけり」
紅葉した草木の葉で色の見分けも付かずに散る物は、物思いに耽る秋の涙であったのですよ


48
(涙が止めどもなく流れ落ちる心境であるので、木霊の帰ってくる山彦の声を思い出として互いに聞き合って慰みにでもするかな。)との意。

山彦;山の男の意で、音や声の反響を山の霊の声としたもの。木霊。呼子鳥などとも。


49
(夜中ですよと申しましたのに、監視が厳重になり逢うのが難しくなってしまいますよ)との意を込めた歌。

おうさかのせき
逢坂関;逢坂山にあった関所。延暦十四年廃止になる。男女の仲を裂く関としてしばしば和歌にも使われる。
かた
固むめり;守りを固める。関を閉められるぞ。「めり」は「見あり」が語源。原因は定かでないが、それとわかる様子を表すもの。

50
(帰りがけの通って行く道でさへ思い出す事が出来ない、その上更に道は凍って雪まで降り積もってしまったものですから。尚のこと判らなくなってしまいましたよ。)との中々帰らない事への言い訳を詠んだ歌。

51
(逢える機会の無かった夜だったのですが、夜が明けてしまったのであれば体こそ帰らねばならないのですが、心までもが帰って行くのであろうか、否帰りはしないでしょう)との意を込めた歌。

ちょうごんか
長恨歌;白楽天の作った長編叙事詩。戦乱で殺された楊貴妃の魂を探し求める旨の七言百二十句。源氏物語は、これに影響を受けて作されたとされる。
ていじいん
亭子院;宇多法皇の院号

52
(「顔に紅葉を散らす」より、女性が赤面しているのかどうかも分からずに散る物と言えば、物思いに耽る秋(厭き)の頃の涙だったのですよ)との意を詠んだ歌。




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