小島切 斎宮女御集(緞子表紙)
鳥の子紙(薄茶色)5寸4分5厘×7寸2分5厘
こちらは、唯一残されていた前田家零本の摸本です。薄目の薄茶色の見返し料紙は表裏に有り、いずれも金銀中小切箔銀砂子銀ノゲです。見返し料紙を除く、両面加工の料紙二葉を粘葉綴じにした冊子です。即ち項数にして8項分で、裏面は高野切同様の加工、表面には更に一葉につき三か所の飛雲を施してあります。
写真は雲母振りの飛雲染紙見開き一葉です。(二項目・三項目)
薄茶色
33cmx22cm
実際よりもやや淡く映っております。薄茶色の雲母振り飛雲染紙です。見開き一紙(二項目・三項目)
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。
かな 使用字母
二項目 とも 一品宮にむかしのこときこえたまて つかさのさうしにすみたまへる ころ うちをおぼしいでて 173 すぎにける むかしのちかく おもほえて、 ありしにあらぬ ほどぞかなしき みやの御返し 174 わすられぬ むかしながらの うきなれど、あ りしにかはる そではぬれけり とほくなりたまふほどみやに御返し |
止毛 一品宮爾武可之乃己止支己盈多末弖 徒閑散乃佐宇之爾寸美多万部留 己呂 宇知遠於本之以天々 春支爾个留 无可之乃知可久 於毛本衣弖、 安利之爾阿良奴 本止曾可奈之支 美也乃御返之 和須良礼奴 武可之奈可良乃 宇支奈礼登、安 利之爾可者留 曾弖者奴礼个里 止本久奈利多万不本止美也爾御返之 |
三項目 175 すぎにしも いま行すゑも ひたみちに、なべて わかれの なき世なりせば 御返し一品宮 176 ゆくかたも すぎにしかたも おもふらん、たれ にもとまる みをいかにせん さきのないしといふ人、さかづきて きて きれきとかまいらせたるに 177 雲井にて さすかにみゆる さかづきの、このて そイ きれきは いかにせよとも |
春支爾之毛 以万行須恵毛比多美知爾、奈部弖 和可礼乃奈支世奈利世者 御返之一品宮 由久加堂毛 須支爾之可太毛於无不良无、多礼 爾毛止万留 美遠以可爾世无 左支乃奈以之止以不人、左可川支天 幾天 幾礼支止可末以良世多留爾 雲井爾弖 左須可爾美由類左可徒支乃、己乃天 曾〃 幾礼支者 以可爾世與止毛 |
漢字の意味の通じるものは漢字で表記 一行は一行に、繰返しは仮名で表記 一段低くなっているのは詞書 三項目末行、「も」の右側「ぞ」の下の「〃」は見消の点。 (「も」は間違いで正しくは「ぞ」ですよ。の意) (歌番号は三十六人集中の斎宮女御集での通し番号) |
一品宮に昔のことども聞こえ給て、宰の曹司に住み給へる頃、内裏を思し出でて 173 過ぎにける昔の近く思ほえて、有りしに有らぬ程ぞ悲しき。 宮の御返し 174 忘られぬ昔ながらの憂きなれど、有りしに変わる袖は濡れけり。 遠くなり給ふ程、宮に御返し 175 過ぎにしも今行末も直路に、並べて別れの無き世なりせば。 御返し一品宮 176 行く方も過ぎにし方も思ふらん、誰にも止まる身を如何にせん。 前の内侍といふ人、盃的礫と書きて参らせたるに 177 雲井にて挿すかに見ゆる盃の、この的礫は如何にせよとぞ。 |