小島切 斎宮女御集(緞子表紙)
鳥の子紙(薄茶色)5寸4分5厘×7寸2分5厘
こちらは、唯一残されていた前田家零本の摸本です。薄目の薄茶色の見返し料紙は表裏に有り、いずれも金銀中小切箔銀砂子銀ノゲです。見返し料紙を除く、両面加工の料紙二葉を粘葉綴じにした冊子です。即ち項数にして8項分です。裏面は高野切同様の加工で、表面には更に一葉につき三か所の飛雲を施してあります。
写真は雲母振りの染紙見開きです。二紙分で中央は糊付部分(四項目・五項目)
四項目と五項目では歌も内容も繋がっておりません。(所謂錯簡)
薄茶色
32cmx22cm
実際よりもやや淡く映っております。薄茶色の雲母振り染紙です。見開き二紙(四項目・五項目)
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。
かな 使用字母
四項目 かへし 178 もちながら ちよをめぐらん さか月の、きよきひ かりは さしもかへなむ おないじないし、とりのこをかがみのは このふたにいれて、はこどりとなんとてまい らせたるが、しにけるをかへしつかはすとて 179 はことりの みをいたづらに なしはてて、あかずかな しき ものをしぞおもへ かへし 180 ばかり そのうへに おもひのぼれる はことりは、いのち許 |
可部之 毛知奈可良知與遠女久良无左可月乃、支與支比 可利者 散之毛加部奈無 於奈利之那以之、止利乃己遠加々美乃盤 己乃不多爾以禮弖、者己止里止奈无止天末以 良世多留可、志爾个留遠可部之徒可八寸止天 者己止里乃見遠以多川良爾奈之者天々安可寸可奈 志支 毛乃遠之所於毛部 可部之 曾乃宇部爾於无比乃本禮留者己止利者以乃知許 |
五項目 55 と たまさかに のふひありやと かすがのの、のもり はいかが つげやしてけむ 御返し 56 かすがのの ゆきのしたくさ ひとしれず、 とふ日ありやと われぞまちつる のの宮におはしけるころ、三 条の宮まゆみのひとはあるにさし て |
止 多万散可爾乃婦日阿利也止可寸可乃々、能毛利 者以可々 川个也志天个武 御返之 可寸可乃々 由支乃之多久散 日止之礼寸、 止不日安利也止 和禮曾万知川留 農々宮爾於盤之个留己呂、三 条乃宮万由美乃比止者阿留爾佐志 天 |
漢字の意味の通じるものは漢字で表記 一行は一行に、繰返しは仮名で表記 一段低くなっているのは詞書 はこどり かほどり かっこう 箱鳥;容鳥或は郭公の異称。(カッホーと鳴く意から) 「箱」つながりで「あく」を引用する時に用いる。 のぼ 思い上れる;心を高く持する たま 偶さか;思いがけない様。めったに無いこと。 野守;狩猟の為の野を守る番人。 野々宮;皇女或は女王が斎宮若しくは斎院になる時、潔斎の為に一年間こもる宮殿。黒木の鳥居を設けて柴垣をめぐらしており、斎宮のものは嵯峨に、斎院のものは紫野に在った。 (歌番号は三十六人集中の斎宮女御集での通し番号) |
返し 178 持ちながら千代を廻らん盃の、清き光はさしも変へなむ。 同じ内侍鳥の子を鏡の箱の蓋に入れて、箱鳥となんとて参らせたるが、死にけるを返し遣はすとて 179 箱鳥の身を徒に成しはてて、あかず悲しきものをしぞ思へ。 返し 180 その上に思ひ上れる箱鳥は、命許り(ぞ短かかりける)。 55 偶さかに訪ふ日有やと春日野の、野守は如何告げやしてけむ。 御返し 56 春日野の雪の下草人知れず、訪ふ日有やと我ぞ待ちつる。 野々宮に御座しける頃、三条の宮檀の一葉有るにさして |