小島切 斎宮女御集(緞子表紙)
鳥の子紙(薄茶色)5寸4分5厘×7寸2分5厘
こちらは、唯一残されていた前田家零本の摸本です。薄目の薄茶色の見返し料紙は表裏に有り、いずれも金銀中小切箔銀砂子銀ノゲです。見返し料紙を除く、両面加工の料紙二葉を粘葉綴じにした冊子です。即ち項数にして8項分です。裏面は高野切同様の加工で、表面には更に一葉につき三か所の飛雲を施してあります。
写真は雲母振りの飛雲染紙見開き一葉です。(六項目・七項目)
薄茶色
33cmx22cm
実際よりもやや淡く映っております。薄茶色の雲母振り飛雲染紙です。見開き一紙(六項目・七項目)
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。
かな 使用字母
六項目 ※ こがらしの かぜのつかひは ちかけれど、ひとのわ するる ものにぞありける いせにおはしましておなじ宮の おほんてくらつかひくだりたまたるに おほんふみもなかりければ 59 ふりはへも ひとはとふべき ゆききぢの、とくる たよりも とどこほりけり うちにおはせし時ひひなあそび に神のおもとにまでたる女にをと こまであひてものいひつかはす |
己可良之乃可世能川可日者知可希礼止日止乃和 春留々 毛乃爾曾安利个留 以世爾於盤之末志弖於奈之宮乃 於保无天久良川可日久多利太万多留爾 於本无布美毛奈可利希礼盤 婦利者部毛 比止者止不部支 由支々地乃,止久留 多與利毛 止々己本利个里 宇知爾於者世之時日々奈阿曾日 爾神乃於无止爾末弖多留女爾遠止 己末天阿日弖毛乃以比川可八春 |
七項目 60 その神は さしもおもはで こしかども、お あ もふことこそ ことになりけれ をうなのかへしにて 61 かみよより いのることだに あるものを、あだし おもひに いかがなる覧 おなじひひなやしろのま へのかはにもみぢちる所にて 62 かぜさへや かみのあたりを はぶくらん、は やきせぜにも ちるもみぢかな むまのないし山吹にさして |
曾乃神盤 散之裳於无者天 己之可止无、於 安 毛不己止己所 己止爾奈利計禮 遠宇奈乃可部之爾天 可美與々利 以乃留己止多爾 阿留毛乃越,安太志 於无比爾 以可々奈留覧 於奈之比々奈也之呂乃万 部乃可波爾毛見知々流所爾天 可世佐部也 可美乃阿多利遠 波不久良无、八 也支世々爾无 知留毛美知可奈 武万乃奈以之山吹爾左之天 |
漢字の意味の通じるものは漢字で表記 一行は一行に、繰返しは仮名で表記 一段低くなっているのは詞書 おほむてぐら みてぐら 御手座; 幣。神に奉る物の総称 ふ は 振り延へ;わざわざ。殊更。 おもと おはしどころ 御許;御座所。おそば。 あだ あだ 他し;異なっている。(徒し)実がない。儚い。 (歌番号は三十六人集中の斎宮女御集での通し番号) |
※ 木枯らしの風の使ひは近けれど、人の忘るるものにぞ有りける。 伊勢に御座しまして同じ宮の御手座使い下り給たるに、御文も無かりければ 59 振り延へも人は訪ふべき往き来路の、解くる便りも滞りけり。 内裏に御座せし時雛遊びに神の御許に詣でたる女に、男詣で会ひて物言ひ遣はす。 60 其の上はさしも思はで来しかども、思ふ事こそ異に有りけれ。 女の返しにて 61 神世より祈ることだに有るものを、他し思ひに如何なるらん。 同じ雛社の前の川に紅葉散る所にて、 62 風さへや神のあたりを省くらん、早き瀬瀬にも散る紅葉かな。 馬内侍山吹にさして |
馬内侍;平安中期の歌人で、右馬権頭源時明の娘。中古三十六歌仙の一人でもある。選子内親王、中宮貞子に仕え掌侍となる。晩年には出家。馬内侍集、大斎院前の御衆(馬内侍歌日記)がある。