小島切 斎宮女御集(緞子表紙)
鳥の子紙(薄茶色)5寸4分5厘×7寸2分5厘
こちらは、唯一残されていた前田家零本の摸本です。薄目の薄茶色の見返し料紙は表裏に有り、いずれも金銀中小切箔銀砂子銀ノゲです。見返し料紙を除く、両面加工の料紙二葉を粘葉綴じにした冊子です。即ち項数にして8項分です。裏面は高野切同様の加工で、表面には更に一葉につき三か所の飛雲を施してあります。
写真左側は裏表紙側の見返し料紙です。右側は雲母振りの染紙(飛雲料紙の裏側)です。
薄茶色
33cmx22cm
実際よりもやや淡く映っております。薄茶色の雲母振り染紙です(八項目)。左は見返し料紙(裏表紙)
写真の状態があまりよくありませんがご了承ください。裏表紙 見返し料紙(前田家旧蔵本の金銀彩加工とは異なります)
薄茶色の染紙に金銀大小の切箔砂子を散し、磨出し用の銀砂子でぼかしをあしらい銀ノゲを撒いたものです。
金箔は極僅かしか使用されておりません。 経年により銀焼けが進んでおります。
かな 使用字母
八項目 63 やへながらあだにみゆれば山吹の、したにこそ なけゐでの川づは かへし 64 やへをだにあだに見えけるやまぶきの、ひとへ心 を思ひこそやれ ひさしうさとにおはしけるころ おなじ内しのもとに 65 ゆめのごとおぼめかれ行世中に、いつとはむ とかおとづれもせぬ の いせへのちの御くだりにたび むか |
也部奈可良安多爾美由礼者山吹乃、之多爾己曾 奈个為弖乃川徒盤 可部之 也部遠多爾安太爾見衣計留也末不支乃比止部心 遠思比己曾也礼 日散之宇佐止爾於者之計留己呂 於奈之内志乃毛止爾 由免乃己止於本女可礼行世中爾以川止八武 東可於止川礼毛世奴 乃 以世部乃知乃御久多利爾多比 武可 |
漢字の意味の通じるものは漢字で表記 一行は一行に、繰返しは仮名で表記 一段低くなっているのは詞書 おぼめく;確かではない。はっきりしない。 訪ふ;人をおとづれ見舞う。 (歌番号は三十六人集中の斎宮女御集での通し番号) |
63 八重ながら他に見ゆれば山吹の、下にこそ鳴け井手の蛙は。 返し 64 八重をだに他に見えける山吹の、一重心を思ひこそ遣れ。 八重と云うだけでさへ別物に見られてしまう山吹なのに、一重心(私の本心)を推し量って汲取ってくださいな。 久しう里に御座しける頃、同じ内侍の許に、 65 と おとづ 夢の如おぼめかれ行く世の中に、いつ訪はむとか訪れもせぬ。 伊勢へ後の御下りの旅、むか |