寸松庵(寸松庵色紙・古今和歌集抄本) 巻三 夏      戻る 寸松庵色紙 一覧へ
 具引唐紙『夏草に蜻蛉』(薄渋黄土色)「ほととぎす」 田中親美氏作模写本

寸松庵色紙は古今和歌集の四季の歌を精撰して書写したもので、佐久間将監が京都大徳寺の離れ寸松庵で愛玩していた事により、寸松庵色紙と名付けられたもの。元々堺が繁盛していた頃に南宗寺の襖に三十六枚の色紙が貼られており、その内の十二枚を寸松庵に譲り受けたもの。残りの幾つかは烏丸光弘が譲り受けている。
現在は個々人及び法人が一枚ずつばらばらに所蔵しており、それまで中々一堂に見る機会など無かった寸松庵が、明治四十二年の大師会に十六枚が出品され大いに話題になった大展観と聞く。現在その数は三十四枚あるとされてはいるが、所在を明らかにしているものは少ない。

この部分の料紙の柄は光琳模様の様な柄で一部分のみに施されている。

歌『ほととぎす ながなくさとの あまたあれば・・・』へ、 歌『おもひいづる ときはの山の ほととぎす・・・』へ

                かな                                水色文字は使用時母

寸松庵色紙 夏 『ほととぎす』 (薄渋黄土色)
12.6cmx13.1cm

    

  ほととぎす ながな

  くさとの あまたあ

   れば、なをうとま

     れぬ おもふ

       ものから


      
使用時母

  本止々支須 那可奈

  久佐止乃 安末太安

    礼盤、奈遠宇止万

       礼奴 於毛不

          毛乃可良


                           (詠人不知)
147
 時鳥長鳴く里の数多あれば、な
疎まれぬ思ふものから

ホトトギスが長々と鳴いている里山は数多くあるけれど、そうは言っても親しまれないのは(その雰囲気に)憂いが在るから。


ホトトギスが長々と鳴いている里山は数多くあるけれど、その名を忌み嫌って遠ざけるのは心に感じるものが在るから。


ホトトギス;沓手鳥、文無鳥、卯月鳥、夜直鳥、死出の田長、夕影鳥など。
「テッペンカケタカ」と、けたたましく長々と繰り返し鳴く。

ここでは恋の歌ではなく、四季の歌として解釈したもの。勿論「汝が泣く」を秘めて歌ったもの。


薄渋黄土色具引唐紙・白雲母『夏草に蜻蛉』(草花に一匹のトンボ)
                                 井上馨侯爵旧蔵

ここに添えられている扇面は、金色地に右上隅に障子を開けて縁側越しに外を見ている殿方の屋敷を、左側に約三倍の広さに妹子の屋敷を描き、妹子が部屋の中でやや伏目に佇んでいる。それぞれの屋敷に向かって一話ずつのツバメが飛、それぞれの庭には前栽が在り石楠花や紅葉も見える。

 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
 一行は一行に、繰返しは仮名で表記

3行目「奈
」としてあるが「奈本」の間違いか?
或はそのまま「奈遠」で良いのか。


ながなく;汝が泣くとする説も

原本の手鏡に付随する扇面には別家屋に男女が描かれている為、「汝が泣く」としたものか。


歌148と続きで同柄の為元は一枚の料紙であったと思われる。


写真では確認できないが、草花と蜻蛉が施されている。

薄渋黄土色;白(素色)・薄茶などとすることも。
 右の写真はこの箇所に該当する清書用臨書用紙(左が上製)
これまでの清書用には入れられていない柄(上製のみ)
(普通清書用では薄渋黄土色柄無の物をご利用ください。)


※蜻蛉の季語は秋なので「秋草」とすべきなのかもしれないが、夏歌が書かれているので「夏草」とした。
     上製        普通清書用
   寸松庵色紙 具剥奪唐紙(薄渋黄土色)『夏草に蜻蛉』 清書用 臨書用紙(上製) 拡大へ 寸松庵色紙 具剥奪紙(薄渋黄土色) 清書用 臨書用紙 拡大へ
                          とんぼ
清書用 薄渋黄土色具剥奪唐紙・『夏草に蜻蛉』

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(寸松庵色紙・古今和歌集抄本) 巻三 夏
 具引唐紙『笹葉』(薄茶色)「思ひ出づる」

                かな                                水色文字は使用時母

寸松庵色紙 夏 『おもひいづる』 (薄茶色)
 12.6cmx13.0cm
    

  おもひいづる ときは

   の山の ほととぎす、

   か ら く れ な ゐ に

     ふ り て て ぞ な

           く


      
使用時母

  於裳比以川留 止支盤

   乃 山 能 本止々支春

   可 良 久 礼 奈 為 爾

     不 利 天 々 曾 那

               久
 
 
                           (詠人不知)
148
 思ひ出づる常盤の山の時鳥、唐紅にふりててぞ鳴く

思い出されるのは常盤の山のホトトギス、空が真っ赤に染まった頃にこそ決まって鳴いていたなあ。





ホトトギス;沓手鳥、文無鳥、卯月鳥、夜直鳥、死出の田長、夕影鳥など。

薄茶色具引唐紙・白雲母『笹葉』(下から入り乱れて隈笹か)
                                梅澤喜一郎氏旧蔵
 
 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
 一行は一行に、繰返しは仮名で表記
「爾」は「尓」とすることも、「礼」は「禮」とすることも。


歌147と続きで同柄の為元は一枚の料紙であったと思われる。


写真では確認できないが、笹葉が施されている。

薄茶色;薄黄茶色とすることも。歌147と続きの為元は1枚の同一料紙で左右の見開きと思われることから、本来は薄渋黄土色。



 右の写真はこの箇所に該当する清書用臨書用紙(左が上製)
これまでの清書用には入れられていない柄(上製のみ)
(普通清書用では薄渋黄土色柄無の物をご利用ください。)
若しくは薄茶色の物を利用することもできます。



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     上製        普通清書用
   寸松庵色紙 具剥奪唐紙(薄渋黄土色)『笹葉』 清書用 臨書用紙(上製) 拡大へ 寸松庵色紙 具剥奪紙(薄渋黄土色) 清書用 臨書用紙 拡大へ
清書用 薄渋黄土色具剥奪唐紙・『笹葉』




当初の粘葉本として書かれていた状態

 
寸松庵色紙 夏 『おもひいづる』 (薄茶色) 拡大へ寸松庵色紙 夏 『ほととぎす』 (薄渋黄土色) 拡大へ
 当初の粘葉本として書かれていた状態

古今和歌集としての歌の続きから
元は一枚の料紙としてこの状態に
なっていたと思われる。


同様に他の左右一紙と思われる部分
         歌148                 歌147
      (井上侯爵蔵)             (梅澤氏蔵)
    唐紙は共に「夏草」
色の違いは保存状態による経年変化の差と思われる。


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