松籟切 伝藤原行成筆 巻子本
唐紙本十番歌合 断簡 (12世紀初め頃の書写と考えられる)
写真の物は昭和26年の模本で分割前の晩翠軒製の巻子本。
松籟切の名は元々題箋のない短い巻物で現在は断簡となっているが、昭和26年の分割の際に付けられたもの。三井高保氏が「十番歌合」として旧蔵していた物を、氏の号に因んで『松籟切』と命名された。十番歌合の名は奥書に藤原弘資(日野弘資)が墨入れしている事に因る。元は和製の唐紙料紙三枚を繋いだ巻子本である。歌は十番、二十首分が清書されている。
同筆遺品がなく行成とは時代が合わない。系統的には伊房の藍紙本万葉集の仮名の流れを汲んだ字体に更に墨の濃淡と太細、遊びと連綿を加えた様な面白い書体であるが、筆者は不明。おそらくは世尊寺流の一人によるもの。
歌題はあるが詠者及び判者は書かれておらず歌合せとしては異例で、然もこれまでのどの歌集にも同一の歌が見当たらないことから、先達の歌の習いを目的とした自歌合とも推測され、現在では類聚歌合の紙背にあった目録より「承暦元年讃岐守顕季歌合」であるとされている。
料紙は鳥の子を使用した和製の具引唐紙で、胡粉引きの白色に柄は白雲母の鉄線唐草一柄のみの清楚で凛々しい。料紙3枚だけなので、同一色同一柄の物は纏まりが在って美しく見える。(本阿弥切の組み方と同様)
桐箱の中には古筆了音による琴山のある極札が収められていた。但し、日野弘資の奥書を基にしたもので墨蹟は行成ではなく別人。原本の表紙は緑色の錦(金糸銀糸の柄入りの緞子)で、模本の物とは別。
清書用 松籟切へ |
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巻子本 松籟切 第一紙 |
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巻子本 松籟切 第二紙 | 松籟切 巻子本 十番歌合 |
巻子本 松籟切 第三紙 |
巻子本 十番歌合 拡大
巻子本は、縦8寸6分×横5尺9寸2分、分割前の巻子は長さ4尺2寸5分(料紙部分のみ)で、これに間似合紙の奥書が在り、江戸時代に藤原弘資の奥書がされている。但し、この模本には約7寸の奧書無の奥付があるのみ。
松籟切 具引唐紙 白 第一紙 8寸6分×1尺5寸9分(第一紙) |
松籟切 具引唐紙 白 第二紙 8寸6分×1尺4寸7分(第二紙) |
松籟切 具引唐紙 白 第三紙 8寸6分×1尺5寸6分(第三紙) |