継色紙 (4寸4分2厘×8寸8分4厘)
古今和歌集 粘葉本 染紙(両面加工)断簡;滴翠美術館蔵
料紙一葉を使い、一葉の左半分(左項)から上の句を書出し、右半分(右項)に下の句(の一部)を戻して
歌一首を納めた様式のもの。同様式の歌が5首存在しております。
昭和初期の模写本 薄渋黄土色(うすしぶおうどいろ) 13.4cmx26.8cm |
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水色文字は使用字母 「上の句」(左項) 「下の句」(右項) やまざくら かすみ のまより ほのかに も みてし人 こそこ ひしか りけれ 夜末左久良 閑春見 濃末與利 本乃可爾 毛 三て之人 己曽故 悲之家 利个禮 (紀 貫之) 古今集(巻十一;恋一)「人の花つみしける所にまかりて、そこなりける人のもとにのちによみてつかわしける。」との詞書は無く、歌のみ散らしてあります。然も上の句と下の句の並びまで散らしてあり、一風変った捉え方がしてあります。 料紙は鳥の子紙の染紙で薄茶色。(若しくは当初生成りの物が経年変化で茶色くなったもの) 実際よりも明るめに写っております。右側には下の句が、左側には上の句がきております。 |
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「山桜霞の間よりほのかにも 見てし人こそ恋しかりけれ」 現代語訳 霞の間から微かに見え隠れしている山櫻よ、ほのかに見えていた貴方こそが恋しく思われていたことよ。 解釈 春霞の隙間から微かに見え隠れしている山桜の様に、チラリチラリとほのかに見えていた貴方様のことだけが離れてしまったその後、どうしようもなく慕わしく切ない程に心惹かれてしまいましたのでございますよ。との意で詠んで贈った歌。 けれ;…たなあ。…たのだ。係助詞「こそ」を受けて助動詞ラ変型「けり」の已然形「けれ」で、今まで気づかなかった事実に気が付いて詠嘆して述べる意を表す。 かり;形容詞又は形容詞型に活用する助動詞などの連用形語尾「く」に動詞「あり」の付いた「くあり」のつづまった「かり」。形容詞の第二活用或は補助活用と呼ばれている形容詞型活用の活用語尾で助動詞と接続する為に生まれた活用。 古今和歌集(巻十一・恋一)詞書。 「人々が花摘みしていた所にお出かけした折に、そこにいらっしゃっていた人に後になってから詠んでお届けになった歌」との説明書きがある。 花摘み;野辺の草花などを摘み取る事。また4月8日の釈迦牟尼世尊の誕生会に女人が花を携えて比叡山の山麓にある花御堂に詣でる行事。 きのつらゆき 紀貫之;平安時代前期の歌人で歌学者でもあり、三十六歌仙の一人でもある。歌風は理知的で修辞技巧を駆使した、繊細優美な古今調を代表している。醍醐・朱雀両天皇に仕え、御書所預から土佐守を経て従四位下木工権頭に至る。紀友則らと共に古今和歌集を撰進する。家集に「貫之集」の他、「古今和歌集仮名序」、「大堰川行幸和歌序」、「土佐日記」、「新撰和歌(撰)」などがある。生年868年〜没年945年頃 ページ |