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やまざくら よそにみるとて
すがのねの、ながき春ひを たちくらしつる
池辺に藤花あり、女水にのぞ
みてこれをみる
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ふぢの花 いろふかけれや かげみれば、いけの
水さへ こむらさきなる
たきの水の辺に人いたりて、これを
みる
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ながれくる たきのいとこそ よはからじ、ぬけと
ぬけとみたれて おつるしら玉
うみのほとりにある松の木のもとに
おこなひ人やすむ
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いくよへし いそべのまつぞ むかしより
たちよるなみや かずはしる覧
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よるならば 月とぞみまし わがやどの、に
はしろたへに ふりしける雪
延木十七年八月におほせによりて
献し
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邪末左久良 與曾爾美類止天
須可乃年農、奈可支春比遠多知久良之川留
池辺爾藤花安利、女水爾乃所
美天己礼遠美留
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不知乃花 以呂不可个礼也 可計美礼者、以个能
水左部 己無良佐支那留
多幾乃水乃辺爾人以多利天、己礼遠
美留
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奈可礼久留 太支乃以止己所 與波可良之、奴个止
奴个止美多礼天 於川留之良玉
宇見乃保止利仁安留松乃木能毛止爾
於己那比人也数無
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以久與部之 以所部能末川曾 武可之與利
多知與流奈美也 可寸波之留覧
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與留奈良波 月止所美末之 和可也止乃、二
者之呂多部爾 不里之个留雪
延木十七年八月爾於保世爾與利天
献之
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