三十六人集(西本願寺本)
貫之集(上) 特選十五枚 (清書用臨書用紙)
紀貫之の家集で上・下二巻からなり、中は更に十巻の部立に仕立てられている。歌の総数は七二七首、その内の上帖で巻一〜巻五の歌数三六九首である。尚、下帖は昭和四年に伊勢集と共に割譲されている。様々な装飾料紙が使われているが、継紙の物は少なく切継を伴った破り継が使用されている。料紙は上巻だけで37枚あり、継紙の料紙は上巻全部で6枚で、内重ね継は無く、破り継の一部に切継の入ったもの5枚、切継だけの物も無く、破り継だけの物1枚である。継紙は少ないが、ぼかし染、墨流し、金銀大小切箔・ちぎり箔ノゲ、彩色画等々、美しく凝った作りの装飾料紙が多い。最後の1枚ギラ引唐紙(表面花襷紋、裏面獅子唐草)には墨入れがなされていない。
(全料紙組順へ)
上巻(上帖)の部立は以下の通り。
巻第一:屏風歌。 延喜五年泉右大将の賀の屏風歌、同六年和歌月令屏風歌、同十三年尚侍の賀の屏風歌、
同十四年女一宮の屏風歌、同十五年斎院の屏風歌、同年故中御門左大臣北方の賀の屏風歌。歌数55首
巻第二;屏風歌。 延喜十五年清和七宮御息所の六十賀の屏風歌、同十八年斎院の屏風歌、同十七年の勅による献歌、
同年篤弘治部卿宮の屏風歌、同十八年女四宮御髪上の屏風歌。歌数49首
巻第三;屏風歌。 某年内裏屏風歌、延喜十一年東宮御屏風歌、某年京極中納言の御屏風歌、延喜七年女八親王の為陽成院の
四十賀の時の屏風歌、延喜末年から延長七年の間の勅による献歌、延喜七年女八親王の屏風歌、承平五年内裏
屏風歌、同六年右大臣殿障子歌、同二年左大臣殿二郎侍従の屏風歌、同六年左衛門督屏風歌、同年本院北方
の賀の屏風歌、同七年右大臣殿屏風歌。歌数152首
巻第四;屏風歌。 延喜十八年東宮御屏風歌、同年承香殿女御の屏風歌、同十九年東宮御息所屏風歌、同五年中宮御屏風歌。
歌数56首
巻第五;屏風歌。 延喜二年左大臣殿北方五十賀の屏風歌、延長四年民部卿清貫の六十賀の屏風歌、同年法皇御六十賀屏風歌、
三条右大臣殿屏風歌。歌数57首
貫之集・上 第八紙 |
貫之集・上 第六紙 |
貫之集・上 第五紙 |
貫之集・上 第四紙 |
貫之集・上 第二紙 |
貫之集・上 第一紙 |
貫之集・上 第二十三紙 |
貫之集・上 第十九紙 |
貫之集・上 第十七紙 |
貫之集・上 第十三紙 |
貫之集・上 第十紙 |
貫之集・上 第九紙 |
貫之集・上 第三十五紙 |
貫之集・上 第二十七紙 |
貫之集・上 第二十四紙 |
西本願寺本三十六人集には様々な装飾料紙が使用されております。具引唐紙を始め、染紙や具引紙或はこれらに暈しや絵・金銀彩を施した装飾料紙、破り継料紙、重ね継料紙及び切継料紙等で、殆どの料紙に金銀で花鳥折枝が描かれているのが特徴です。当時集められる凡その美術料紙がふんだんに用いられております。
三十六人集で使われております装飾料紙の一部です。貫之集・下はこちら
書手本
貫之集・上 料紙組順 料紙順の青色文字は本清書用使用部分
紙順 | 料紙主仕様 | 料紙特徴 |
第一紙 | 染紙『浦の苫屋』 金銀泥下絵(薄茶染) |
金銀泥で右上と左下に浦と岩と波と、左下には更に松と苫屋が描かれている。全面に金銀砂子切箔が蒔かれている。 |
第二紙 | 染紙『金銀大ちぎり箔』 全面ノゲ振(薄黄染) |
黄檗染に金銀の大ちぎり箔を全体に散し、砂子ノゲを全面に鏤めている。裏面も同様の加工が施されている。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第三紙 | 具引染紙 全面砂子(薄赤茶地) |
薄紅色の具引染に全面金銀砂子振。裏面も同様の加工。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第四紙 | 染紙『疎らな下絵』 全面砂子(渋赤茶染) |
渋赤茶染に銀泥でやや大きめのすすきの疎らな下絵。全面に金銀砂子振。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第五紙 | 具引染紙『全面小切箔』 (淡紅上下隈ぼかし) |
薄紅色の具引染をし、更に右上左下の上下隅にぼかしを施して全面金銀小切箔振。裏面は大小切箔及び長切箔振加工。内曇り飛雲の付いた足し紙(歌四首)有。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第六紙 | 檀紙『枝松に鶴』 萱楮(薄茶染) |
薄茶染の檀紙に金銀泥で松の折枝と松の折枝を咥えた鶴が二羽。裏面は千鳥と蝶々。 鳥折枝金銀泥手描き。 |
第七紙 | 破り継料紙『美留水毛』 染紙(朽葉染) |
右端に破り継、左端に切継。中央の染紙は左下から右上にかけて4枚の継紙で細目の破り継。 下側の染紙には金銀の長切箔が散らしてある。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第八紙 | 染紙『墨流し』 刷毛暈し(小切箔砂子) |
素紙に墨流し、左上隅から右下隅にかけてほぼ直線に刷毛ぼかし、その右上側に斜めにほぼ並行して二本、左下側にはやや水平ぎみに二本の刷毛ぼかし。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第九紙 | 染紙(実物は砂子無) 花鳥折枝金銀泥手描き |
黄土色の具引染。花鳥折枝は芒、松、柳、紅葉、撫子、蓬、千鳥、蝶々など。 |
第十紙 | 染紙『墨流し』 筏流し(全面粗砂子) |
素紙に墨流し、銀泥で五か所に水辺の葦と筏流し、水鳥と千鳥。 |
第十一紙 | 具引唐紙 丸唐草(白具引白雲母) |
白地に白雲母で丸唐草(二重複丸唐草)の柄刷り。 裏面は丸獅子唐草(獅子二重丸紋唐草)。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第十二紙 | 染紙(全面金銀砂子) 隈ぼかし(濃紫染) |
紫色の染紙に濃紫の隈ぼかし。全面に金銀砂子振り。実付橘、枝紅葉、蔓竜胆、松、芒、千鳥。 裏面も同様の花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第十三紙 | 染紙『隈ぼかし・青草』 大小切箔ノゲ(橡染) |
橡色の地に下側に三つ左上に三つ、右上隅に二つの叢雲ぼかし。更に緑で青草が描かれる。全体に金銀大小切箔ノゲ。裏面は丸獅子唐草。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第十四紙 | キラ引唐紙 花唐草(薄茶地雲母引) |
薄茶地雲母引に花唐草の刷り出し。裏面は具引唐紙丸獅子唐草(黄雲母)。 花鳥折枝金銀泥手描き |
第十五紙 | 染紙(濃色黄檗染) 全面金銀大小切箔ノゲ |
濃色の黄檗染。全面に金銀大小切箔ノゲ振り。裏面は全面金銀小切箔振 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第十六紙 | ギラ引唐紙 丸唐草(白雲母引) |
白地に白雲母引丸唐草の刷り出し。裏面は具引唐紙丸獅子唐草(白雲母)。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第十七紙 | 染紙『砂浜に青草列描」 全面金銀小切箔 |
黄土色の染紙に朽葉色の暈しが砂浜の如く描かれ、銀泥の草と緑色の青草が暈しの上に列状に描かれている。その手前に銀だけの草が列状に有る。全面に金銀小切箔。 |
第十八紙 | ギラ引唐紙 獅子唐草(白雲母引) |
薄茶地雲母引に獅子唐草の胡粉摺。裏面も同柄で、花鳥折枝は萩、薄、桔梗などの秋草。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第十九紙 | 染紙『天地特殊雲暈し』 全面金銀砂子振 |
朽葉色の染紙の天地の暈しを入れ、更に内曇りに似た雲上の暈しを施してある。全面にやや密に粗めの金銀砂子振。花鳥折枝金銀泥手描き。裏面も同じ。 |
第二十紙 | 破り継料紙『人家紅梅』 花唐草(淡黄具引唐紙) |
右端縦向に縹色の破り継。薄黄地の花唐草の唐紙が有り、中央付近にやや左下がりに破り継と切継の複合したもの(左破り継、右切継)。その左は花唐草の薄黄具引唐紙。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿一紙 | キラ引唐紙 丸唐草(薄赤地雲母引) |
薄赤地雲母引に丸唐草の胡粉摺。裏面は具引唐紙丸獅子唐草(白雲母)。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿二紙 | 破り継料紙『紀将第四』 花唐草(薄黄茶具引) |
右端に白具引唐紙(菱唐草・白雲母)で上側幅広で斜めの切継、左端に二枚の継紙で縦向やや斜めに波状の破り継。中央は花唐草の具引唐紙。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿三紙 | 染紙『天地隈ぼかし』 黄茶地(小切箔砂子) |
黄茶地に上下隅天地隈ぼかし。全面金銀小切箔砂子振。裏面も同様。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿四紙 | 染紙(黄檗)飛雲 花鳥折枝金銀泥描 |
黄檗染に飛雲が二か所。一か所には並行して二つの飛雲が有り、右側がやや上にある。左項中央上端と右項中央やや下側。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿五紙 | 染紙(薄草色) 全面金銀小切箔砂子 |
薄草色染の全面にやや疎らに金銀小切箔砂子振り。裏面は更に疎らに振ってある。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿六紙 | 破り継料紙『路行人』 染紙(薄茜染) |
左上濃藍色の切継、右上白の破り継、その下に薄茜色の染紙が有り、左上切継の下部辺りから右下隅やや左まで左下側に黄、白、藍の羅紋の三枚の継紙で破り継。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿七紙 | 破り継料紙『蝶々』 花唐草(薄黄具引唐紙) |
中央縦に花唐草の薄黄具引唐紙で破り継。その両側には檀紙の染紙が有り、左に蝶一匹、右に蝶々二匹が金銀泥で描かれている。花鳥折枝金銀泥手描き(中央の破り継台紙部分のみ)。 |
第廿八紙 | ギラ引唐紙 丸唐草(薄紅雲母引) |
薄紅地雲母引に丸唐草の胡粉摺。裏面は丸獅子唐草。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第廿九紙 | 染紙『刷毛筋暈し』 全面金銀砂子振 |
薄茶染紙の左上・右下の上下斜めに刷毛筋暈し。左上は一本、右下は二本すれ違うように暈して、全面に金銀砂子振り。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第三十紙 | ギラ引唐紙 花唐草(薄茶雲母引) |
薄茶雲母引に花唐草の胡粉摺。裏面は丸獅子唐草。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第卅一紙 | 染紙(濃藍) 花鳥折枝金銀泥描 |
濃色縹色の染紙に芒とやや大きめの紅葉が散らばり、多数の千鳥が舞う。裏面も同様。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第卅二紙 | 染紙(朽葉) 全面金銀大小切箔ノゲ |
朽葉色の染紙に全体に金銀大小切箔ノゲが散らしてある。裏面は全体に小切箔振り。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第卅三紙 | 雲紙『内曇り・下側」 飛雲(朽葉地) |
朽葉色の染紙の下端に内曇り。左項の中央下側やや左寄りに飛雲が一つ。 花鳥折枝金銀泥手描き。裏面には内曇りも飛雲も無し。 |
第卅四紙 | 破り継料紙『竹』 雲紙(橡色染)染紙(紫) |
上部中央付近から左下にかけ紫で大きく切継、右上隅から下中央やや右寄りにかけて左に湾曲した細長い破り継。その右は紫色の染紙。中央は橡色の染紙上部に内曇り。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第卅五紙 | 染紙(茶紫) 全面金銀極小切箔振 |
茶紫色の染紙にやや密に全面金銀小切箔振り。桜草。 花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第卅六紙 | 染紙『叢雲ぼかし』 (朽葉)大ちぎり箔小切箔 |
朽葉色の染紙に3か所の叢雲ぼかし(左中央やや上、中央やや下、右下隅)。 菱形、長方形、台形などの不正形切箔が散らされる。花鳥折枝金銀泥手描き。 |
第卅七紙 | ギラ引唐紙 花襷紋(黄雲母引) |
薄黄地雲母引に黄具で花襷紋の刷り出し。裏面は具引唐紙獅子唐草(黄雲母)。 花鳥折枝金銀泥手描き。墨入れ無。 |
茶色の背景、重ね継は無し、縹色の背景は破り継部分。凡そ六分の一が破り継(切継部分含む)となっている。
ページ